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みみみ
2024-01-26 21:41:21
1121文字
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It’s a Beautiful World(サンプル)
不穏本に掲載予定の永星音流過去捏造話の冒頭です。
4か月目の検診で、お腹の子供は男の子だと言われた。
可愛い可愛い私の子。絶対に幸せにしてあげる。
父親が居ない分、私が幸せにしてあげる。
これから生まれてくる小さな命、愛おしくてしょうがない。
「早く会いたいよ、音流」
そう呟いて、私はまだあまりふくらみのないお腹にそっと手を当てた。
ママが言っていることがボクにはよく分からなかった。
「音流、あのね今度少年野球クラブができるんだって!男の子ならきっと楽しいと思うから見学だけでも行ってみない?」
「
……
興味、ない」
「音流は女の子みたいな服が好きなのかな?こういうのはどうかな?」
「
……
あんまり好きじゃ、ないかも」
ママが言う男の子とか女の子とか、ボクにはよく分からなかった。
ボクはボクで、ボクが好きなことをして好きな服を着たい。
ただそれだけ。だけど、ボクはそれを上手く伝えられなくて、
「そっか、ごめんね
……
ママ、音流のことを分かってあげられなくて」
ママはそう言っていつも泣きそうな顔で笑っていた。
音流のことが、私にはよく分からなかった。
「音流君ですか、そうですね学校の休み時間はいつも一人で窓の外を眺めていますよ。
なにか悩みでもあるのではないでしょうか、お母さんご自宅でなにか変わったことはありませんか」
「いいえ、家では特になにも
……
」
保護者面談で担任の先生にそう言われても、私には音流が何を考えているのか分からない。
何が普通で、何が普通じゃないのか、全然わからない。
「ちょっと永星さん!また音流ちゃん、クラスの子と喧嘩したみたいよ!スポーツでもさせてみれば協調性がつくんじゃないの?」
「そうですね
……
ちょっと本人に聞いてみます
……
」
近所の世話好きのおばさんが、親切なアドバイスをくれる度に胃の奥からすっぱいものがせり上がって来る。
あの子は私が勧めるものに何一つ首を縦に振らない。
普通の男の子が好きそうなものを勧めても、女の子になりたいのかと聞いても
さめざめとした目で私を見上げて、そっけない声で
「べつに
……
」
そう言って、口をつぐむだけだった。
”先生”に出会ったのは、同い年の子たちが中学2年になる年の頃だった。
ぼんやりと近所を散歩していた時に、一枚の看板が目に止まった。
「何これ
……
綺麗」
よくあるデジタルサイネージじゃない、アクリル板の上に描かれた色とりどりの花の絵。
新規オープンした絵画教室の生徒募集の看板。
「ママ、ボクここに通いたい!」
ママにこんなに大きな声で自分の気持ちを伝えたのは初めてだったかもしれない。
久しぶりに振り返ったママの顔は、何だか少しやせているように見えた。
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