彼女が欲しがるものといえば、コーヒーショップで買うココアであるとか、季節限定のチョコレートであるとか、料理の材料であるとか、猫の餌であるとか、まあ大したものではない。
もので釣ろうとしている訳では無いが、若い女にしては無欲なものだと思う。向こうは料理や菓子を作っては俺に食べさせるというのに。素直な感想を述べると嬉しそうにする。
食事と後片付けを終えてのんびりとしていた彼女が俺の手をしきりに触っている。手というか、指を。
「ねえ」
俺の指と着けた指輪を撫でながら、彼女が口を開いた。
「指輪、着けてみてもいい?」
「? ああ」
指輪をひとつ外して、彼女に差し出すと、彼女は指輪の表面を何度か撫でた後、自分の中指に嵌めてみていた。
当然と言えば当然だが、彼女の細い指にはサイズが合わずにぶかぶかである。
「でっかい!」
「そりゃあな」
まじまじと指輪のついた自分の手を眺めていた彼女が零した。
「この指輪って女性物のサイズはないのかな?」
ふむ、と喉を鳴らした。さて、そもそもこの指輪はどこで買ったんだったか。
「その指輪が欲しいのか?」
「……うーん、なんていうか」
君が持ってるものと同じものが欲しい、と指輪を見つめながら真剣そうな声音で言う。その意味が分からないほど無神経ではない。
「じゃあ買うか、同じデザインのやつを揃いで」
そう言うと、霞は分かりやすく嬉しそうに笑った。
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