うずめび
2024-01-23 21:56:05
4924文字
Public 刃穹
 

今はまだ、なにも。

刃穹で熱さで寝れない子供を寝かしつける話。ぬるいですがR18があるので、ワンクッションとしてこちらに。

 手を引いた子供の熱すぎる体を抱きとめた事がきっかけだった事を刃は覚えている。
 星穹列車と星核ハンターは羅浮の一件があってからというもの協定を結び、互いの利害や倫理に反しない範囲で協力関係を結んでいる。星核ハンター側の任務に星穹列車の面々が絡むことはなく、たいていは星穹列車のナナシビトが引き受ける任務に同行を願われるのがせいぜいだ。手間ではあるが、危険度の比較的少ない任務のわりに珍しいアイテムや信用ポイントを稼ぐことができるため、星核ハンター側としても悪い条件ではなかった。
 あれはそんな無数にある任務のうちのどれだったか。細かいことは既に覚えていないが、確かなことはあの子供が尊護の槍を使って長時間の戦闘を行った日の事だったはずだ。苦戦しながらも戦闘を終え後は依頼人に報告に行くだけだからと共にいた同行者を先に返し、最後に刃にも同じような声をかけてきたところでその手を引けば、いとも容易く体がよろめいて腕の中に収まった。

「わ、びっくりした。何かあったのか?」

……何かあったのはお前だろう」

 体温が高すぎる。刃の声を聞いた瞬間に視線が泳ぐあたり、この子供は本当に嘘をつく才能がない。尊護の槍は炎が出るから、なんてそれらしいことを言うもののそれだけではないのだろう。
 星核の器が風邪をひくかは知らないが、ナタと呼んで懐いている医者の女にでも引き渡すべきかと考えたところで、何かを察したのか腕の中にいる子供が首をふる。

「待ってくれ、これは風邪じゃないんだ。だから医者には行かなくても大丈夫」

 解熱剤も効かないからと医者に行っても意味がないと訴える子供を促すように見つめれば、ためらいながらもゆっくりと話始めた内容は確かに医者になんとかできる領分を越えていた。曰く。

―――刃は俺が星核の器だって知ってるだろ?ベロブルグで新しい星核を受け入れてからずっとそうで。

―――いつもは問題ないけど、長い時間あの槍を使ってると内側から焼かれるような感じがするんだ。あと、夜もたまに夢見が悪くて。熱いからかな。

―――そうなったらどうしてるのかって?ええとなにも?そもそも医療でどうにかできるかもわからないし、熱が冷めるまで待つだけだよ。

 けろりとして語る内容に深々と刃はため息をつく。元より自身を顧みることのない子供だと思っていたが、想像以上に重症らしい。おおかた列車組にも心配をかけたくないとなんだと考えて言っていないに違いない。そうでなければよく一緒にいる小娘と飲月が放っておくはずがないからだ。

「刃?体調でも悪いのか?」

 それはお前だろうと言うのも馬鹿らしくて抱き止めていた手を離し、かわりに手を引いた。いずれにしろ知ってしまったからには何かした方がよいだろう。ちらりと見た目の下の隈はそれなりに濃い。

「刃の手、ひんやりしてていいな……じゃなくて、どこに行くんだ?」

 曲がりなりにも人を傷つけている手に引かれていると言うのに、あまりにも能天気な声に目眩がしそうだった。危害を加えられると思わないのかと聞いたところで、なんで?刃はそんなことしないと笑われそうで聞くことはできなかったけれど。





 それから星核ハンターが使っている適当なセーフハウスに子供を連れていき、ベッドに横にならせるも一人だと怖い夢をみるからと言われ。いささかの面倒くささとともにベッドに共に入ると目を瞬かせた子供がいる。

「えと、刃?なんで一緒に」

「一人では寝れないのだろう。寝不足などつまらない理由で戦闘に支障をきたされてはな」

 もっともらしいことを言えばようやく黙りこんだから、刃はそのまま子供を腕の中に抱き込む。冷たいと言いながらも熱すぎる体温にはかえってそれが良かったのか、すり寄って目を閉じる様はどこか猫に似ている。

―――久々によく寝れそう。ありがとう刃」

 くふりと笑う子供に返事がわりに背を撫でてやれば、よほど疲れていたのかすぐに寝息をたて始めた。手間がかかるとため息をついて、刃も隣で目をつむり。

(―――ああ、確かに最初はそうだったな)

 ただ寝かしつけるためだったはずだ。高すぎる体温をもて余しながらも、どうすればいいかわからない子供を。
 けれどもある日、眠りながらも熱いと魘される姿が痛ましくて、熱の意味を書き換えてやれば眠れるかとそんな愚かな事を考えてしまったから。伸ばした手は拒絶されるかと思いきや、刃と切実に名前を呼ばれて受け入れられてしまった。それは親しい仲間には聞かせない子供なりの助けての声だったのだろう。

「刃?」

 体の下で素肌をさらしてぼんやりとしている子供が名前を呼んで刃の頬にふれる。熱に浮かされているのは確かだが、それは槍がもたらすものではなく。快楽の色合いが強く出ている瞳を刃は見つめた。美しく溶ける琥珀の瞳。刃をなにより惹き付けるやっかいなくせ、手を伸ばさずにはいられないもの。

「具合が悪いなら止めようか。いつも迷惑かけてごめんな」

 返事がないことを拒絶と受け取ったのか、頬から手を落とし体の下から抜け出そうとする子供の腕を掴んで引き寄せた。いいの?と聞く声に頷いてやればへにゃりとあまやかに微笑む顔がいとけない。
 褥で男に組しかれているとは思えないそれは無垢ゆえか、あるいは無知であるからか。いずれにしろ刃を煽るには充分で覆い被さるように口づける。呼吸を食む合間に胸元で主張するものに触れてやれば、小さなあえぎ声が口内に落ちていく。

「っ、じん」

 胸元に爪を立ててやると口づけの合間に耐えられないと言うように名前を呼ばれた。擦り寄せる足の合間に手を伸ばすと期待するように頷かれた。

「もっとさわって」

 背に回された腕に引き寄せられる形で刃は足の間に手を伸ばす。すっかりきざした熱は先端からとろりと雫を溢している。溢れる雫を掬うように指を這わせ、手のひらで擦ると濡れた音が寝室に落ちてはじりじりと互いの理性を削る。
 熱いと訴える子供を嗜めるように合間に胸元のそれを口に食んでは歯を立てれば、耐え難いと言うように頭を振るのが艶かしい。

「じん、もう」

 限界を訴える子供の声を聞いて、先端を抉るように熱に触れてやる。ぐちゅりとはしたない音がすると共に白い熱が吐き出された。
 最初に触れた時、星核の器たるベクターに生殖機能はないと思っていたのだが、エリオかカフカの気まぐれかは知らないが備わっていることに驚いたのはここだけの話だ。―――なにも知らない子供にそれを教えたのが自身であると考えると複雑な気持ちになるが、備わっていたからこそ今こうしているのだから存外悪い事ではないのかもしれなかった。
 達した余韻で刃にすり寄る子供を宥めるように一つ頬に触れてやると冷たくて落ち着くと笑う。熱を吐き出したならそのまま寝かせてしまっても良かったが、その考えを察したのか視線を合わせられる。

「まだ熱いから。刃の体温がもっと欲しい」

 どこでそんな台詞を覚えてくるのか、呆れながらも誘いにのってやるあたりどうしようもない。ゆすられるままに口づけを落とし、熱を受け入れるそこに手を伸ばす。
 潤滑剤をベッドの引き出しから出し、指に纏わせてからゆっくりと押し込むように触れると受け入れることを覚えた体は素直に指を飲み込んだ。あえかな声が寝室に落ちては、合間に濡れた音が響く。熱い中を確かめるように擦り、さらにと指を足して奥に向かえば感じているのかぽたぽたと目尻から雫が落ちる。
 快楽のせいとは理解しているものの、泣いている姿を見るとどうにもすわりが悪くて先に進める手をためらう。そうするといつもこの子供は安心させるように笑って告げるのだ。

「痛くて泣いてるわけじゃないから、大丈夫。刃が酷いことをしないのは知ってるよ」

 無条件に与えられる信頼はどこからくるのかと思いながらもため息をついて手を進めた。奥にある場所に触れると体が震えて腰が逃げるのを押さえつけては中を解す。充分に解したと思ったところで指を抜き、かわりに熱を添えた。視線で許可を求めれば、返事がわりに背中に回される腕は相変わらず随分と熱い。

「ん、んっ」

 熱を受け入れた子供が微かな声をあげるとともに刃の名前を呼ぶ。それを合図として体を揺すれば繋がった場所から漏れる水音が聴覚を焼く。浅い場所から深い場所を触れる度に熱が生まれて、腹の間で芯をもった子供の熱が擦れるのがたまらない。
 既に死した身には過ぎた熱だが、だからこそ手を伸ばさずにはいられないのか。―――さながら炎に惹かれては焼かれる羽虫のように。焼かれているのははたして誰だったか。
 体の下で乱れる子供が口づけを望むものだからやわやわと口を食んでやる。どうしてだかこの子供は長い髪に視界を包まれて口づけられるのが好きなようだった。刃が一番近くに見えるからと髪に触れられたのはこの行為を何度繰り返した頃だっただろう。
 今も揺すられながら髪留めをはずそうとしているが、快感で手に力が入らずうまく行かないらしい。仕方なく自ら外してやれば、熱に浮かされた顔があまやかに微笑む。

「じんちゃん」

 その名前で呼ぶなというのに舌足らずに呼んでは、好意を隠そうともしない顔で笑う。胸の内を荒らすむず痒さに耐えかねて、刃は体を揺する動きを早めた。深く中を擦り、指で触れてやった場所に幾度となく熱を与える。その度に中が欲しがるように締め付けては、腰が跳ねた。
 そろそろ限界が近いのだろう、口づけの合間にもうと呟く声に頷いて熱を深くに埋めてやる。ついでと言うように胸元に歯を立て、腹の合間で熱を溢して続けていたそれに触れると甲高い嬌声が響いて子供が熱を吐き出した。ああ、と震えながら締め付ける中に刃も熱を溢す。抱き締めてくる腕に身を任せれば、子供の高い体温に包まれるのが心地よい。
 二人の荒い呼吸ばかりがしばらくの間、部屋に響いては落ちていく。



 シャワーを浴び、着替えて整えたベッドの上。背後から抱き込む形になった子供が己の手を好きに触れているのを刃は見る。触れるときに外している包帯を巻き直すのだと、一番最初に体に触れた時から行われているそれは今ではすっかり事後の習慣になってしまった。鬱陶しいと払いのけたとき、悲しそうな顔をした子供に勝てなかったのだから仕方ない。
 はじめの頃のおぼつかない手付きと違い、慣れた手付きでくるくると包帯を巻くあたり二人で過ごした時間の長さを感じる。結果的に手を出した時はこれきりだと思ったはずなのに、求められれば断れない理由など一つしかないのだろう。

「できた!」

 褒めてとでも言うように腕の中で振り向く子供を
撫でてやっては横になるように促す。元々が寝かしつけの一環なのだから、興奮して眠れなかったなんてことになれば意味がない。素直に横になった子供が何か言いたげにこちらを見つめるものだから、いつものように抱き込んでやれば満足げに腕の中に納まった。
 元よりあまり寝れていないことや、その状態で体を重ねたから疲れているのだろう。すぐにうとうとし始めた子供を何をするでもなく眺めていると、ぼんやりとした眼差しと視線が絡む。そのまま見つめていれば刃の手を握って子供が呟いた。

「まえにきいたけど、こころがあたたかいひとはてがつめたいんだって」
 
 ―――だからじんのてはつめたいのかな。

 微睡みに溶けるような口調で好き勝手に言い残しては眠ってしまった子供に刃はため息をつく。優しいと言うなら冷たいとわかっている手を躊躇なくとるお前の方がよほど。
 小さく頭を振って刃は目をつぶる。どうあれこの子供が―――穹が穏やかでいてくれるのであればそれでいい。それがエリオの予見に必要なパーツに対する義務的なものなのか、あるいはそれ以外の庇護欲であるのか。その答えはとうにわかっていながらも刃は今日もまたわからないふりをする。今はまだなにも、と。