望月 鏡翠
2024-01-22 22:46:13
890文字
Public 日課
 

#1246 「狸」「呪い」「手摺り」

#毎日最低800文字のSSを書く

 こんなところを彷徨いていると、狸に化かされるよ。
 裏山の上の祠の周りで遊んでいると良く管理人のお姉さんが注意をしてきた。でも大人のいうことなんて関係がない。僕たちは好きな場所で好きなことをして遊んでいた。
 どうしてわざわざそんなところで遊んでいたのかと言えば、僕たちが行く時間にいつもそこでお姉さんがお供物を片付けたり掃除をしたりしていて、構ってくれたからだ。兄姉がいないと、それくらいの年齢の女の人と話す機会なんてないからドキドキしたのだ。
 罰当たりなことをすると、呪われるなんて噂もあった。
 大人たちが口を揃えてそんなことを言ってくるから、あえてそこで遊んでいたのだ。手軽に反抗心と冒険心を満たすことができる。ちょっとした度胸試しで、自慢にもなった。
 そんなある日のことだった。友達が一人消えた。鬼ごっこの最中に突然のことだった。どんなに探しても見つからず、山中捜索をしたけれど足跡一つ見つ蹴られなかった。
 子供は以降、絶対に入っては駄目だと言い聞かせられたけれど、そんなことを守るわけがない。だから大人は駄目なのだ。任せていては友達は一生見つからない。こっそりと潜り込んだ山は、いつもよりも暗く見えた。
 いつもの祠まで駆け上がる。友達の名前を大声で呼ぶ。
 返事はない。鬼ごっこをしていたときに、どのあたりにいただろう。足跡や落とし物が残っていないのか探す。
 友達は出てこなかった。知らないものの気配が、ざわざわとする。
 何かがおかしい。大人が友達を探しにきているはずだ。あんなにたくさん山に入って行ったのに、何もいない。それなのに、何かがいる。
 帰りたい。引き返す。それなのに帰り道がわからない。
 気がつけば元の祠に戻ってきている。
「馬鹿だね、だから早く帰りなって行ったのに」
 聞き覚えのある声がした。手摺りにもたれかかってため息をついたのは、いつも祠にいるお姉さんだった。
「こんなところで何してるの」
「人を騙しているんだよ。私は狸だからね」
 ニヤニヤとしながらお姉さんは言った。その足の間からふかふかとした丸いしっぽが垂れていた。