八上
2024-01-21 20:49:02
892文字
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【TW7】霞と妖刀の話

背景(妖刀)を踏まえたバックボーン

とある田舎に屋敷を構える一族には、代々受け継がれてきた刀があった。
その刀は妖刀であり、一族の先祖が封印するも、その代償として継承者が妖刀の"愛"を一身に受けなければならなかった。
人ならざるものの"愛"が、人と同じ尺度であるわけもなく、歴代の妖刀の継承者たちは時に精神を病み、時に自ら命を絶つ者もいた。
妖刀の"愛"から逃れる方法はひとつ。継承者の直系の子孫にその役目を押し付けること。
そうやって妖刀は封じられた状態であっても自分の"愛"を後世へ残し続けていた。

とある継承者は、「このような呪いは自分の代で終わらせる」と、自分の息子には役目を押し付けなかった。
しかし年月が経ち、継承者も歳を取った。自分の人生を思い返せば、妖刀に囚われて妻も子供も十分に愛してやれず、とても真っ当とは言い難いものだった。
そこに妖刀が囁きかけた。
『まだ間に合う。幸せになってもいい』と。
その言葉に、老爺となっていた継承者は――己の役目を生まれたばかりの孫娘に押し付けた。
甘言に誘われ、決意を曲げる。こんなことはよくあることだった。これまで何度も起こってきた。
長い時を経た妖刀にとって、人の意思などいつでも簡単にへし折れる柔いものであった。

新たな継承者となった孫娘は思った。子供がいるから選択肢が出来てしまうのだ。

――両親は私を不気味がり、弟ばかりを可愛がる。先代の祖父は負い目を感じているのか自分と目も合わせようとしない。
ならお前たちが望んだ通りになってやろう。誰の愛も必要としない、一人で頑張れる人間に。
そうして一人で生き、一人で死ぬ。刀は私が墓まで持って行く。
どうせ誰も私のことなんて顧みないだろうから。

――妖刀の高笑いが聞こえる。花嫁の闇を見て上げる悦びの声が。

愛されなかった子は、愛されることを望まずに生きられるのか。
いつか深淵に飛び込もうとした時に、手を掴んで引き戻されることを拒絶出来るのか。
妖刀から『幸せになってもいい』と囁かれた時、本当に否定できるのか。