倉木
2024-01-21 18:59:17
1061文字
Public 新亀
 

LD

新亀



「うひゃぁっ!」

突然、背中をすりぬけた感触に飛び上がった。
慌ててとびすさり、背中を撫ぜると、変装のために着ていた衣服に濡れた感触。
どうやら頭上から落ちてきた水滴がちょうどよく背の僅かな隙間に入り込んだらしかった。
甲羅上だから身体には何の影響もないが、ただただ驚いた。

……そんなに笑わないでくれる?」

そんなことよりも、と背後を振り返る。
できることなら早々にその場を離れたかったのに立ち止まっている同行者がいた。

「すまない、あんな声聞いたの初めてで……フフッ」

失礼だと思ってはいるようで顔を背けてはいるが、謝りながらも出てくる声は震えていた。
目に涙を溜めながら震えている様子は失礼極まりないが、ずっと笑い続けている彼に悪気はないのはわかるから、
これがミケランジェロでもあろうものなら一度殴ってもよさそうなのだけど。

「もう、いいから早く行こう」

そう言い捨ててさっさと歩を進めることにした。
熱くなっている頬は見られるような醜態はこれ以上晒したくない。
好きな人に笑われるのは恥ずかしい。
そして。

「ひゃっ!?……っレオ!」

首元を滑った感触に勢いよく振り向く。

「ああ、ダメだったか」

その仕草で振り払われた手を仕舞うことなく、上機嫌な声を上げていた。
パーカーのフードをかぶり直して警戒するも、今度はレオナルドが先に行ってしまう。
それを見送り、隠れて溜息を吐いた。
普段真面目が歩いているようような性格だが、一度リミッターが外れると非常に面倒臭い性質を持っていた。
いつもふざけてるやつとは違い、何をしでかすかわからない。
いつだったか血相を変えてラファエロがレオナルドを抱えて帰って来た時もひたすら彼の肩口で笑っていたのだ。
ふと気配を感じ立ち止まると目の前を掴もうとした手が閉じた。

「な、にしようとしたのかな?」

驚いたように目を見開いた顔をしているレオナルドにそう言った。
そうやられてばかりでもいられないし、予想さえしていればあとはパターンでどうにかできる。
しかしそんな一瞬の油断は突如引かれ頬を掠め取られたことですべて消えてしまった。

「勝ったな」

いや、なにに?
そう言いたい言葉は溜息と一緒に消えてしまった。
なまじ身体能力も高いが故にそれを利用されると勝てるわけもない。
鼻歌交じりの後姿に、もう今日は何を言っても無駄なのだと悟った。
自分の失態からの豹変だからもう、いたたまれないやらなにやらで。
今日は疲れる日になりそうだ。