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望月 鏡翠
2024-01-20 23:19:14
893文字
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日課
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#1243 「空」「泣く」「ボール」
#毎日最低800文字のSSを書く
太陽まで届くような大声で子供が泣く。子供の声というのは、本能的に人の注意を引くようにできている。だから大声で泣き叫んでいる子供がいたら、反射でそちらを見てしまう。
空を指さしている。
保護者はもちろんのこと、周りにいた大人たちは関係ある人もないものも関係なく、その指の先を追いかけて顔を上に上げた。そこにあるものを見て、全員が状況を理解し、同時に諦めていた。
熟れたトマトのような真っ赤なゴムボールが、宙に浮かんでいた。うっかりと空に跳ね上げてしまったのだろう。よくあることだ。
まるで惑星の運行のように、ぽっかりとそこに浮かび、微妙に動いている。
一度空に跳ね上げてしまったものは、落ちてこない。
よほどの事情がなければ。よほどというのは、人の手が届かない空に影響力を与えることができる何かが偶然にも発生して、そして
重力と中にいる人間が認識しているものは遠心力だ。だから、一定以上の高度に行ってしまうと、回転の中心に近づいたせいで外側に押し付ける動きが弱まり、宙に浮いてしまう。
こうなるともう降りてはこない。空に跳ね上げたときの慣性で、動いてはいるがそれもその内に止まる。なぜならそこには重力がなくても、空気があるからだ。
隠して空に止まったままのゴムボールができたというわけだ。
環境美化のために定期的に回収される。持ち主がわかれば返却される。だが戻ってくる前に、太陽に焼き尽くされてしまうのがオチだろう。
もちろん本物の太陽ではなくて、人口太陽だ。
地上に降り注ぐまでの間に熱を失わないように、明るいだけでなく熱を発している。空高くに上がれば、それだけ太陽に近くなる。きっと空気抵抗で動きを止めるまでの間に、あのボールは空高くに近づきすぎる。
そして、溶けて消えてしまうだろう。
ボール遊びは空にネットが張ってあるところでしかしてはならないというのが、常識でありルールだ。ルールを破ったのだから、仕方がない。だが子供にそんな道理がわかるはずがなく、道理がわかるようになるころには、私たちはボール遊びをしなくなる。
悲しい世の中の真理だ。
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