ayu
2024-01-20 19:36:47
1576文字
Public
 

Together on sleepless nights.

眠れないタップと女トレーナーのはなし

やけに目が冴えて、眠れずにいた。
日本を出て、フランスという異国の地にわたしはタップ含めて仲間たちの子と降り立った。
厳密に言えば、タップのファンクラブメンバーや関係者もいるからめちゃくちゃ大人数。
だけど、去年は飛行機トラブルで急遽フランスに渡航し思うように行かなかった。
去年のトラブルがあったからこそ燃えているタップがいるなか、わたしは浮かない表情になっていた。
「ぼ、ぼんじゅ〜る、だっけ?」
「Excellent!トレーナー、正解だ!
というかトレーナー!アンタ、勉強得意じゃなかったか?」
「いや、勉強は得意だけど本場は違うイントネーションだから間違ってたら怖いから念のためね!」
「まぁたしかに日本の英語とアメリカの英語のイントネーションは違うからな...」
そんな話をしながらも、レース場を見学したり色んなところを見て回った。
今日は去年と違って色んな経験をした気がする。
そんなことを思いながら、外を見るときらびやかな風景がすぐ目の前に入ってくる。
時計を見るともうすぐ日が変わろうとしている時間だ。
深夜の時間帯でタップの元を訪ねるのは良くないのはわかってはいるが、タップの傍に私がいたい。
自分の部屋を後にし、タップの部屋の扉をノックした。
「タップ、まだ起きてる...?」
「あ、航海士殿か...いま寝ようとしたところだぞ。」
「ごめんね...無理に来て。」
「いや、アタシもなんか眠れそうになかったからいいよ。」
「ありがとう。それじゃタップのお隣失礼してもいい?」
タップの隣に座ったとき、私の腰に手を添えた。
話をして何時間経っただろう。
明日は大事なレースで、早く寝ないとタップの体に支障をきたすのはトレーナーである私がいちばん知っているのにまだまだ話足りない。
「...緊張してるんだろ?航海士殿。」
「うん。だから寝れないし、一人でいることが寂しくなってタップの部屋に来たんだよ。」

「眠れないなら、キスしてやるよ。
アタシも眠れないからさ、アタシもトレーナーにキスされたいからおあいこさ。」
「へっ!?」
いきなりのキス宣言にドキッとしてしまった。
「Sorry for surprising you. 冗談だよ、冗談!」
「あ〜びっくりした。本当にキスされるのかと...」
真剣な顔からいつものタップの顔になり、ホッとする。
「もう寝ないと明日に響くから寝よ?」
「Yes. トレーナーの言う通りにするか。」
お互い反対の向きで就寝に付いたのだが、背中に何か違和感がある。
誰かに抱きしめられてるような...
「タップ...どうしたの?」
「やっぱり眠れないから、トレーナーを抱きしめて寝たい。それなら不安も無くなって寝れる気がするんだ。」
タップの表情は分からない。
でもタップのことは人一倍わかっている自分なら、どんな表情をしているかどうかはわかる。
「うん。わかった。ちょっと待っててね。」
私が向きを変え、タップと向かいあわせの形になる。
向きを変えたと同時にタップは私に抱き着いてきた。
「航海士殿を抱きしめてると不安が消えていくんだ。」
「タップの不安が無くなるならお易い御用だよ。」
スタイル良、表情もかっこよく、ライブではめちゃくちゃかっこいいし、走る姿もかっこいい。
あの歳で観客を魅了するなんてスゴすぎる。
タップの歳のときのわたしなんて、家族から社長になるための虐待を受けていて未来なんて無かった。
文句なしの100点満点だ。
でも、この表情を見ると歳相当の子だと感じた。
タップの体をさすっていると、タップの寝息が聞こえてきた。
眠ったようだしタップの身体から離れようとしたが、起きたとき「航海士殿がいない...」と言ってきそうな予感がし、離れることは辞めて一緒に寝ることにした。