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スサ
2024-01-20 00:16:52
1653文字
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【ゲ】運命の人(鬼→水)
生まれる前のきたろが魂の状態で水の運命を変えてしまう話です
まだ、まだよ、必ず生んで上げるから、まだ誰にも気づかれてはだめよ
……
***
愛情と共に、必ず自分が守るという決意、今はどこにいるかわからない父への信頼が絶えず伝わってきていた。
だから、案外鬼太郎─まだその頃は名前を持たない魂だったけれど─はそこまで不安に思うことは少なかった。それだけ母の愛が大きなものだったといえばそうだし、まだその頃は臍の緒で母とつながっていたのだから、彼女の信念や希望がそれだけ大きなもので、影響を受けていたのかもしれない。今となっては正しく思い出せるものではないが。
けれど、忘れていないことがある。
いつ生まれ出づることができるともわからぬ羊水の日々、歪にそれだけが育った魂魄の状態でどことも知れぬ異界をさまよった。あやかしの類にも嗅ぎ取れるか怪しいほどか細い霊魂を「視」て面白がったのは、多くの場合神と呼ばれるような年経た存在だった。
名無しの幽霊族の子よ、と時間の概念から大きく外れた上位の存在達とたまさか過ごす中で、鬼太郎はその人と出会ったのだ。
神々はまだこの世に生まれていない、どころか生まれ出てくることができるかもわからない子を助けようとはしなかったが、多くの場合好意的ではあった。賭けをしよう、と一柱の神は持ちかけた。自分に連なる人間の中から、誰でもひとり、魂を結びつけてやろう、運が良ければそのものは必ずいましの許にたどり着き、役に立つだろう、と。うんと頑丈にして送り出してやろう、だが、運を選び取れるかどうかはいまし次第よ
…
、まだ鬼太郎ではなかった頃の鬼太郎は、空気の中にとけこむようにして広く広く目を開き、探した。
神は確かに何かをしたのだろう。手を伸ばせば引っ張ってこられるくらいの近くに多くの命の気配があった。しかし数はあっても、これというものが感じられない。自分が幼いからか、それともまだこの世に生まれ出てもいないからなのか
…
。
探せ探せ、と囃し立てるような声、または思念、いや、どちらでも良いか。鬼太郎が何を選ぶか、選べないか、それを楽しんで見ている。そういう気配がある。
「
…
?」
何もつかめないかと思った。時間の感覚は曖昧で、それに鬼太郎にはいくらでも時間はあった。
けれど、その時は来た。
何か、とても気になる何かが光って見える。鈍い青、何度も明滅する光、
…
もっと近くに、そう手を伸ばした瞬間だった。
「俺を殺せ!」
鬼太郎の心まで突き抜けるような叫びだった。光は轟音を伴い、その中を青年が叫びながら走っていく。
思わず、その襟を鬼太郎の手が引いた。取り巻く空気が揺れたのは、賭けを持ちかけた神の気配か。
体の向きがほんの少しずれて、それが青年の命を奪うはずだった銃撃から彼を救った。定めが変わった瞬間だった。
よい、と笑うように空気が波打った。そのものはいましと縁付いた。必ずたどり着く、必ず
…
神と呼ばれる何者かの声を遠くに聞く鬼太郎の目が捉えることができたのは、青年の青みがかった目だけだった。それは夏の日陰のような、あるいは、水に濡れて青く艶めく石のような。
…
生まれたばかりの頃の鬼太郎は、むしろ生まれる前よりも幼くなっていた。体の成長に合わせてのことで、これは仕方がない。
けれども物心つく頃には、さすが幽霊族というべきか、生まれる前のあの不思議な約束のことを思い出していた。
「みじゅ」
まだうまく動かない、舌足らずな口が自分でももどかしい。だが、ん? と目を細め、間違えようのない深い愛情を携えて自分を見つめてくれる顔を、あの瞳を見れば、途端に安心してしまう。まだ短い腕を伸ばし、全力で甘えても、よしよし、と抱き上げてくれる。
…
その目と耳の傷は、あの日神が印をつけた証。
ぎゅっとその胸に抱かれながら、鬼太郎は目を閉じる。あなたは知らない。でも、あなたは僕の運命の人。何しろどこぞの神様のお墨付きなのだから、と思いながら、幼い体の限界に押されて目を閉じた。
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