もう相手が誰だったのかよく覚えていないけれど、四つ葉のクローバーを押し花にして作った栞を自慢された。普通は葉っぱが三枚で葉が四つあるものが珍しいとか、幸運の印だということはそのときに初めて聞いた。
子供の頃というのは、友達の間にしか通じない局地的な流行にどっぷりとハマりこむ。すぎてみれば、どうしてあんなものに熱中していたのか、不思議になったりする。
そのときに流行っていたのは、押し花だった。
だだっ広い河川敷を遊び場にして、戦利品が如く手に入れたものを重たい本や辞書に挟んで潰し、押し花にするのが流行っていた。そのあとはラミネートしてもらってしおりにしたり、糊で貼り付けて絵にしたり、様々だ。
私が最も大切にしていたのは、ベランダで母が育てていたパンジーの花で作っていた栞だった。
押し花にしたあとも咲いていたときと変わらずとても色鮮やかで、花を咲かせたときから私の一番のお気に入りだった。
しかし四つ葉のクローバーを見せられた瞬間に、それが欲しくなってしまったのだ。
だから河川敷の草むらに座り込んで、白詰草の茂みを掻き分け、山のようにある三つ葉の中から四つの葉を探していた。
「お嬢さん。幸運の印を探しているの?」
突然、後ろから声をかけられた。そこにいたのは見たこともない男の人で、手に飴を持っていた。四つの丸がついた、まるで四つ葉のクローバーみたいな棒付きキャンディだ。
そういう人から食べ物を受け取ってはいけないと、わかっていた。私は子供だったけれど、単なる飴玉に釣られるほど愚かではなかった。警戒されているのが、わかったのか、男は首を傾げた。
「人は、スーツをきた大人を信用するのではなかったか? まぁいいや。じゃあ、こんなのはどう?」
目の前で姿を変える。飴玉をもった男の人は、同い年くらいの男の子になっていた。私は四つ葉のクローバーを探しにきた。
今日学校でそれを自慢されたから。だけど、その瞬間にクローバーのことなんて、頭からすっかりと消えていたのだ。
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