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いまち
2022-08-21 01:05:41
4110文字
Public
ぴよねじ
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ex6 ティナと缶詰レシピ
缶詰食べてるだけ✨ ( ˘ω˘ )✨
キッチンではユーレイさんたちがお夕食の支度を始めたところのようだった。ここで食べていいのかな? 気になって近くにいたユーレイさんに聞いてみると「夕飯のつまみ食いをしなきゃ好きに使っておくれ」と冗談まじりに答えてくれた。
それならと邪魔にならないよう、キッチンの隅で食べることにした。お皿とスプーンとフォークを借りて、さっそくツナ缶を開けてみた。入れ物のつまみを引っ張って開けるんだよね。ギリギリと金属が鳴って蓋が開く。
……
これだと蓋をし直すってできないなぁ、ってなんとなく思った。
中には魚のミンチかな? オイルに浸りながらぎゅうぎゅうに詰められていた。サムさんは保存食って言っていたし、身は白っぽくなってるから火は通ってるように見える。
オイルにも調味料を混ざているのか、すごく美味しそうな匂いがしていて、たまらず一口食べてしまった。
「んん!?」
「おや、ツナ缶かい。美味しいよねぇ」
通りすがりのユーレイさんに声をかけられて頷いた。
ユーレイさんの言う通り、ツナ缶はとても美味しかった。チキンのような食感で、どうやったらこんな味にできるのか、さっぱりした味にオイルのこってり感がクセになりそうな味わいだった。それに、サムさんが言っていたように、パンに合うという確信が持てる。
この美味しさを余すとことなく楽しみたい、そう思ってパンを持ちだすとさっきのユーレイさんに声をかけられた。
「パンに挟むなら少し油を落とすといいよ」
「油ですか?」
「あぁ、そのままだと油っぽくてベタベタして食べにくいからね。あぁ、蓋は捨ててないね」
ユーレイさんは食べかけの缶と蓋を流しに持って行った。それからボウルを流し台の上に置いて、「こうするんだ」と蓋を中身の入った缶にねじ込んだ。
「ボウルの上でその蓋で中身を搾るように押し込んでごらん?」
「えぇと、こうですか?」
ユーレイさんに言われた通り蓋で缶の中身を押し込むと、絞られてか中のオイルがぽたぽたとボウルの中に落ちてきた。オイル自体も美味しいのにもったいないなぁ、なんてちょっと思う。
搾りきると、ユーレイさんはオイルを小さな器に入れて「オイルはドレッシングの材料や
……
お行儀は悪いけどライスに和えるととても美味しいんだ」と言って渡してくれた。
それと「パンに挟むならこれで和えるといいよ」とふにゃふにゃした黄色がかった白い
……
瓶、なのかな? をくれた。もちろん、見たことはない。見た目といい、触り心地といいなんだかすごく不気味な感じがする。
「あの、なんですか、これ?」
「おや、マヨネーズを知らないのかい!?」
「まよ
……
? えと、初めて聞きました」
驚いた顔をしながらも、ユーレイさんはこの「マヨネーズ」について教えてくれた。なんでも、卵と酢と油を混ぜて作った調味料で、色々な物に合わせられる万能な調味料なのだそうだ。そういえば、サムさんはツナ缶は調味料と混ぜて食べてもおいしい、みたいなことを言ってたっけ。もしかして、サムさんが言ってた調味料ってこのマヨネーズのことなのかな?
「えぇと、パンに挟むなら
……
」
またユーレイさんに教わりながらツナ缶にマヨネーズを混ぜて、サンドイッチを作った。わざわざ油を搾ったのに油を使った調味料を混ぜるなんて、て不思議に思いながら、糊のようなマヨネーズを混ぜる。酢が混ざっているからか、ちょっとだけすっぱい匂いがする。見た目もちょっと濁ってあまり美味しそうな感じがしない。
これを美味しいと言うユーレイさんの言葉をちょっと疑いながら、恐る恐るサンドイッチを一口齧った。
「
……
うぇ?」
「どうだい?」
「美味しい、です」
サンドイッチは予想に反して美味しくて理解が追い付かなかった。こってり美味しかったツナ缶、そこから油を抜いて、卵と酢と油を足したらどうなるか、なんて想像がつかなかった。けど、いざ食べてみると
……
意味が分からないけど美味しかった。ツナ缶の時とは違うこってり感にお酢のさっぱり感がケンカしないで合わさって、とにかく美味しくなっていた。
驚いている私をよそにユーレイさんは「よかったねぇ」とのほほんと笑っていた。
「キュウリを挟むと、食べ応えも出るから今度試してみるといいよ」
「えと、ありがとうございます!」
ユーレイさんはにっこり笑うとお夕食の準備に戻った。
ユーレイさんを見送って、改めてサンドイッチを食べる。こってりしながらのさっぱりした味はクセになりそう。卵と酢と油を混ぜるなんてどうしたら思い付くんだろう、それでこんなに美味しくなるなんてどういう理屈だろう。そんなことをぼんやり思いながらひとつ、決めた。次にユウくんのところに行く時はこのサンドイッチを作って持って行こう。こんなに美味しいのに、一人で食べるんじゃもったいないもんね。グリムくんもツナ缶は好きみたいだし、きっと喜んでくれるよね。
ツナ缶がこんなに美味しいのなら、と次はヤキトリの缶詰を開けた。途端に美味しそうな匂いがふんわり匂う。やっぱり、私の知ってるヤキトリと同じもののようだった。さっそく一切れ食べてみると甘辛いタレがクセになりそうな味で、チキンもきっちり火が通っており、どうやっているのか炭火のような味がした。
……
これは、ぜひ温かくして食べたい。
サムさんは缶を開けて湯煎するか、お皿に移して「れんじ」で温めるといいって言っていたけど、難しそうだった。かまどみたいなところはユーレイさんがせっせとお料理してるし、「れんじ」なんてものは何なのかもわからない。
でも、どうしても温めて食べたいし、この世界のものももっと知りたいから(という建前で)、お仕事の邪魔をして悪いと思いつつ、ユーレイさんにこのヤキトリを温かくしたいからやり方を教えて欲しいと頼んだ。すると「じゃあレンジを使おうか」と快く教えてくれた。
ユーレイさんが教えてくれた通りにヤキトリをお皿に移して、透明な布のようなもの(ラップというらしい)をかけて、レンジに入れた。
「これくらいなら30秒でいいねぇ。まずはこのボタンを押して
……
」
ユーレイさんの言う通りに操作すると「れんじ」は低い音を鳴らして中が光り出した。何がどうなってるんだろ? これで温まるのかな? 恐る恐る近付いてみるも、レンジが温かくなってる感じはしない。これでほんとに温かくなるのかな? そう思っていると笛のような聴き慣れない音がして光と音が止んだ。
「はい、これで温まったよ。取り出してごらん」
「えと、はい
――
あつっ!?」
蓋を開けてお皿を取り出そうとすると、お皿はものすごい熱を帯びていた。
「あぁ、熱くなりすぎてたかい。はい、鍋つかみ」
「あ、ありがとうございます」
ユーレイさんからミトンを借りてお皿を取り出した。少し濁っていたタレは澄んで、とろみが増している。理屈もなにも分からないけど、ちゃんと温かくなってるみたいだ。
「ありがとうございます」
ユーレイさんにお礼を言ってミトンを返した。
「どういたしまして。ところで、キースリンクさんはお料理に興味はあるかい?」
「え? えと、まぁ、それなりに?」
どっちかというと食べる方が好きだけど、作る方もそれなりに興味はある。おじいちゃんのお店でお料理するのは楽しかったし、喜んでもらえるのはとってもやりがいはあったもんね。けど、なんでこんなこと聞くんだろう。
「ふんふん、それなら『マスターシェフ』を受講するといいかもねぇ」
「マスターシェフ、ですか?」
「そう。調理実習でね、包丁の持ち方からフルコースの作り方まで、受講生に合わせたプログラムなんだ」
「はぁ
……
」
そうは言うけど、お料理自体はそれなりにできている自覚はある。わざわざ習うこともないような気がするんだけど、なんでわざわざ勧めてくれるんだろう。もしかして、レンジの使い殻も知らないから呆れられちゃったのかも。
「キースリンクさんは異世界から来たんだよね? 元の世界にはない調理道具の使い方を教わるのもいいと思うな。それに
……
」
「それに?」
「『食堂のお手伝い』という名目で、少額だけどお給料も支払われるんだ」
「お給料!?」
「そう、そして授業の一環だから、学園内のアルバイトと違って、成績関係なく受けられるんだ」
魅力的だろう? とユーレイさんはウインクしてみせた。
お勉強しながらお金をもらえる
……
もうわけが分からなかった。いっそ騙されてるじゃないかという気さえする。けど、ユーレイさんが嘘をつく理由なんてないし、本当のことなんだろう。ユーレイさんは定期的に受講者の募集があるから、こまめに掲示板を確認するといい、と教えてくれてお料理に戻った。
マスターシェフ
……
覚えておこう。
あまりに魅力的なお話に思わずぼうっとしちゃったけど、今はヤキトリを食べようとしていたのを思い出して、改めてお皿のヤキトリに向かった。
フォークで刺してみると、温かくなったせいか身は柔らかくなっている。温めたせいかふんわり立ち上るタレの匂いに誘われるように一口食べる。
当然のように美味しかった。
元々、冷えていても美味しかったのだから、温かくしてマズいわけがない。本当に、この世界の食べ物はどうなっているんだ。これもまたあっという間に食べきってしまった。しょうがないよね、美味しかったんだもん。
ここまで食べてしまえばあとはフルーツの缶詰を食べてもバチが当たらない気がする。そう思って缶詰をじぃっと見ていると、またユーレイさんが近付いてきて「もうすぐ夕飯だからそれは食後のデザートにするといいよ」と教えてくれた。
ツナ缶も、ヤキトリも美味しかったからすぐに食べたい気持ちはあった。けど、甘い物ってご飯の後に食べるともっと美味しいもんね。納得して、ユーレイさんに勧められるままフルーツの缶詰に名前を書いて、氷室みたいな箱(冷蔵庫というらしい)にしまった。
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