いまち
2022-08-18 10:59:20
6616文字
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性悪娘とほのぴよ娘

名前思い付かないから##name3##でいいや(゜ω゜

+++性悪サイド

 やはり持つべきは金と権力。ゴリ押しにゴリ押しにゴリ押しを重ねて、NRCへの留学へのチケットを手に入れた私はついにその日を迎えた。
 式典用と言われ支給された服は、男性用という事もあり少しばかり胸が苦しい。
 うさん臭い学園長の話を適当に聞き流しながら、これからの生活に胸を躍らせる。
 数ある魔法学校の中でも名門中の名門校ナイトレイブンカレッジ。名士に王族著名人、通う生徒は将来有望な粒ぞろい。
 男子校という閉鎖された環境の中、女の私が入ったらどうなるか? そんなの、決まってる。

「では、##name3##さんの魂の選別を行います。さぁ、鏡の前へ」
「はい」

 不審者にしか見えない学園長に促され、わざとフードを目深に被る。あえて顔を見せないことで男たちの想像を掻き立てるのだ。
 希少な魔法道具と名高い闇の鏡の前に出る。小股で、小走りで、小動物を思わせるように。
 「魂の選別」は事前に調べていた。その人の資質を見て、寮分けをするという儀式。
 あぁ、私はどこの寮に入れられるのだろう。どこであろうと、うまくやっていける自信はある。でも、願わくば王族が通うというサバナクローかディアソムニアがいい。
 広間はすでにざわついている。そうでしょう、そうでしょう、なんせ男子校であるこの学園に女の子が来るんですもの、この場にいる全員が私にくぎ付け、あぁ、ゾクゾクする。
 鏡の中に炎が上がり、無機質な仮面が浮かぶ。

「汝の名を告げよ」
「##name3##、です」
「汝の魂のかたちは……ポムフィオーレ!」

 わっ、と沸き立つ歓声、それとたくさんの大きなため息。
 ……ポムフィオーレ、美しき女王の精神に基づく寮。美しき女王の元に着くのはやぶさかではないけれど、正直、がっかりしていた。
 壇上から見るポムフィオーレ生はメイクもばっちり、美しく着飾った男ばかり。なんなら、その辺の女よりよほど華奢で顔のいい男だっている。
 これではあまり目立てない。サバナクローやディアソムニアであればか弱い女の子の演出がしやすかっただろうに。
 けれど、あのヴィル・シェーンハイトの元、というのは悪くなかった。長く芸能界にいる彼を落とすのはそう易くないだろうけど、不可能ではないはず。
 そのために磨いてきた美貌と魔法。涼しい顔をする女王を跪かせる日が今から楽しみだ。

 歓声で温まった空気の中、もったいぶりながらフードを下ろした。
 今日のための「女のコ」を前面に出した、けれど主張しすぎないメイク。洗練されすぎないよう抜いて、初心さを強調させる。
 女に耐性のない男に一番キくメイクだ。

「その、##name3##と申します。えぇと……

 緊張を装いながら目を伏せる。

「す、すみません! 緊張してしまって……

 わざとらしく目を泳がせて、身を捩る。

「あのぅ、至らないかと存じますが、その、よろしくお願いいたします……

 こんな鈍くさい女、鬱陶しいだけだ。けれど、彼らは気付かない。「儚げな女のコ」にすっかり目を奪われている。
 一瞬の沈黙、それと割れるような大歓声。
 つかみは上々、私は内心ほくそ笑んだ。

+++ノエちサイド

 どういうわけかこの学園に留学生として女の子が入ってくるらしい。
 ……そういうことがあるなら、私も留学生扱いでよかったんじゃないかな! 異議しかないですよ、学園長!
 なんて、どうせ訴えたって適当に濁されるだけなんだろうなぁ……トホホ。

「そういうわけだから、その子のサポートをお願いしたいの」
「わかりました、任せてください!」

 その女の子の魂の選別が終わり、ポムフィオーレ寮に振られたのだそうだ。
 そうだ、というのも私は式典に参加していなかったのだ。鏡の間は広いとはいえ、収容人数が限られる。必要な時は魔法で空間を広げるけれど、今回はそんな大仰なものではないから希望者を募っての式典だった。……募った結果、あまりにも希望者が多すぎて抽選になったんだけどね。
 私も気になったから応募したけど、それはもうすごい倍率だったので、抽選に漏れてしまった。なので、式典の間はティナちゃんと中庭でお菓子を食べていたからその子、##name3##さんのことは今さっき寮長から聞いたってわけ。

 薔薇の王国から来たという##name3##さん、私と同い年の17歳。クラスは2-A、ポムフィオーレに振られるくらいだから、きっとカワイイ子なんだろうなぁ。お友達になれたらいいな、と期待してしまう。
 でも、私が女だと明かすわけにはいかないから難しいかな? 相手は私を男だと思ってるんだから、ティナちゃんを相手する時みたいな距離感にならないように気を付けないとね。

 ##name3##さんのサポートについて、寮長と打ち合わせをしているとノックの音が響いた。副寮長が##name3##さんを連れてきたのだ。

「初めまして、##name3##と申します。不束者ですがよろしくお願いします」

 にっこり笑った##name3##さんはポムフィオーレらしい、華やかな女の子だった。くっきりした目鼻立ちは華やか、きっちり、けれど淡く見えるよう丁寧に施されたフェミンなメイクがよく似合っている。かわいい女の子がかわいいメイクをするのは大正義だとひしひし思う。体つきも華奢で、いい意味で女の子らしい子だ。
 薔薇が混じったせっけんの香りのコロンはちょっと強い気がするけど、お気に入りの香水ってつい付けすぎちゃうから気持ちは分かる。
 でも、獣人族やあの双子なんかは強い匂いは嫌がるから、あとでこっそり教えた方がいいかな。あ、でも匂いの話ってセクハラになるんだよね、それなら寮長に言ってもらった方がいいかな? うん、あとで伝えとこう。まぁ、寮長なら気付いてるかもしれないけどね。
 ティナちゃんだけでもかわいいがいっぱいなのに、さらにこんなにかわいい子が来るなんて。あれだね、やっぱり神様は私の頑張りを良く見ていてくれてるんだなぁ……

「かわいい!」
「えっ」
「ノエル!」

 うーん、##name3##さんのかわいさについ口が出てしまった。あぁ、驚いた顔もかわいいなぁ。こんなにかわいいんじゃ、変なちょっかいとかかけられないか心配かもしれない。

「う……すみません、##name3##さん。驚かせてしまって」
「いえ、その……すみません、私、緊張してしまって」

 そう言いながら##name3##さんはもじもじしはじめた。うんうん、男の子ばかりの環境って緊張するし怖いよね、ものすごく分かるよ。
 同情しつつ、##name3##さんが怯えないよう、つとめて柔らかい笑顔を向ける。

「##name3##、この子はノエル。今後あなたのサポートを任せることになってるわ。何かあったらアタシかこの子に言ってちょうだい」
「ノエルさん、ですね」
「うん、ノエル・ブランシェール、##name3##さんと同じ二年生なんだ、よろしくね」

 と、ここでアズールくんリスペクトのキレのある笑顔! これ、ティナちゃんにも「カッコイイです!」って好評なんだよね。キリッ!
 それでも##name3##さんは緊張しているのか、おどおどしながらも、品のいい控え目なお辞儀をした。あー、こんなのかわいいの大洪水じゃん!

……はい、よろしくお願いいたします」

 ……素敵な笑顔も緊張してる子の前ではあまり効力はなかったようだ。う、寮長の目が痛い。

「このコ、見目いいものには節操なしだけど、さほど害はないから心配しないで。遠慮なくコキ使ってちょうだい」
「えぇと、はい、わかりましたわ」
「それじゃあ、アタシは寮長会議があるから行くわ。ノエル、##name3##のこと、頼んだわよ」
「はい! それじゃあ##name3##さん、部屋に案内するね」
「あの、はい、お願いいたします。ヴィルさま、お邪魔しました」

 寮長の部屋を後にして、さっそく##name3##さんをお部屋に案内した。サポートする都合もあり、私の隣の個室だ。

「鍵はマジカルペンをドアノブにかざすだけでいいよ」

「一応、バストイレと洗濯乾燥機、洗濯機の説明書はここ、洗剤や柔軟剤は購買で買ってね、あとで案内するから」

「この部屋は寮長が防音魔法をかけてるから、安心して過ごしてね」

「それと、ここの寮は――

 ##name3##さんに部屋や寮について説明する。ハーツラビュルほどややこしいことはないから大丈夫だと思うけど、緊張しているらしい##name3##さんにどれほど伝わったかは謎だ。

「こんなものかな? 分かりにくいこととかあったら何でも聞いて」

 聞くと##name3##さんは相変わらずもじもじしながら頷いた。よしよし。素直な女の子はいいものだ。

「一応、これ私の連絡先ね、もし何かあったら遠慮なく連絡してくれていいから」
「あの、私のもお伝えした方が……?」

 ##name3##さんが少し怯えたようす聞いてくる。もちろん、円滑なサポートする上では知っておきたいとは思う。けど、普通の女の子はよく知らない男の子に連絡先を教えたいと思わないものだ。
 だから、私の連絡先を渡すだけに留める。

「いいよ。知らない人に連絡先教えるのって抵抗あると思うんだ。後でフリーメールかなんかで連絡くれればいいよ」

 もちろん、##name3##さんって名乗ってくれないと分からないけどね、と付け足して。もう一度アズールくんリスペクトスマイルをお見舞いしてみる。##name3##さんはぽっと顔を赤らめた。あー、かわいい、フロイドじゃないけどぎゅーってしたくなっちゃう。
 ……まぁ、そんなことしたらセクハラになるから絶対やらないけど。ぎゅー欲は後でティナちゃんで満たしておこう、うんうん。

「ありがとうございます、ノエルさん。あの、そのぅ……
「ん?」
「同い年なんですから##name3##と呼び捨ててください、『さん』付けだと他人行儀すぎますわ」
「そうかもしれないけど……っていうか、##name3##さんだって『さん』付けだよ?」

 あ、と##name3##さんは頬を赤らめた。なんだなんだ、こんなかわいい上に天然なのか?

「それじゃあ##name3##ちゃん、でいいかな? 呼び捨てはなんか悪いし」
「はい、ではそれで……私もノエルくんとお呼びしますね」

 うふふ、と恥ずかしそうにはにかむ##name3##ちゃん。本当にかわいい。ティナちゃんの妹感とは違うかわいさ、そうそう、女の子ってこうなんだよね。
 アズールくんとティナちゃんで潤っている心に、さらに##name3##ちゃんという癒しを得て、私はもう幸せいっぱいだ。

「それじゃあ##name3##ちゃん、私は一旦外すから、ゆっくり休んでて。二時間くらいしたら学園内の案内をするよ」

 これは寮長からの指示だ。初日にいきなりあれこれ詰め込んでも##name3##ちゃんも疲れるだろうという心遣い。私も見習わないとね。

「はい、わかりましたわ。ノエルくんはどうされますの?」
「え? 友達のところに行こうかなって思ってる……あ、でも何かあったらすぐ連絡くれていいからね!」
「わかりました。その、寮内の方ですか?」
「ううん、ディアソムニアの子だよ」

 そうだ、と閃いた。##name3##ちゃんにティナちゃんを紹介しよう。私は男という扱いだけど、ティナちゃんは女の子として通う身、私にはできないような相談でも、ティナちゃんにならできるかもしれない。
 自分以外に女の子がいるってすごく心強いものね、##name3##ちゃんもきっと安心できるはずだ。

「そうだ、##name3##ちゃんにもその子を紹介するね」
「えっ」
「すっごい良い子だから##name3##ちゃんとも気が合うと思うよ」
「で、でも……

 緊張してしまいます、と、もじもじする##name3##ちゃん。
 うんうん、男の子に慣れてない感じだもんね、それならなおのことティナちゃんを紹介しないと。

「ふふ、それじゃあまたあとでね、##name3##ちゃん」
「ノエルくん! ……もう」

 顔を赤くする##name3##ちゃんに手を振って颯爽と去る、私。
 ……どうしよう、すごく楽しい。女の子相手の男の子のふり、新鮮すぎる。普段の男の子のふりとは違う楽しさを覚えてしまった。
 思えば、ティナちゃんと会った時は半日くらいしか男の子のフリをしてなかったものね。
 あぁ、そうだ、ティナちゃんといえば、##name3##ちゃんにティナちゃんを紹介するなら、その辺の話もしておかないとだよね。##name3##ちゃんは私のことは男だと思ってるから、話を合わせてね……みたいな。危ない危ない、早めに気付いて偉いぞ、私!

 なーんて。自画自賛しながら、ディアソムニアへの鏡を通った。


+++性悪サイド

 最っ悪。これが第一に思ったことだ。
 せっかくヴィル・シェーンハイトに近付けたと思ったら、ヴィルは私のサポート役に、となんだかパッとしない男を宛がった。
 私と同い年だというノエル。顔はいい、けど、中世的な顔立ちの男では側にいても私の存在が薄まってしまう。せめて、あの副寮長くらい男らしい男であればよかったのに。
 そんな私の思惑をよそにヴィルとノエルの話は進んで行く。まぁ、パッとしない男なりに私の魅力は十分理解しているようだから、まだいいでしょう。序盤の踏み台には十分だ。
 どうにかカッコつけようとしているようだけど、散々私にカワイイのなんの言ってデレデレした顔を見せていたものだから滑稽でしかない。
 とはいえ、太鼓持ちは多ければ多いほど箔もつくというものだ。
 この男は適当に使い潰そう、そう思った。

 ……思っていたのに。

「はあああああぁぁぁぁぁぁ」

 いやに浮足立って去って行くノエルがいなくなったのを確認して部屋に篭り、思い切りため息をついた。
 ついでに持ってきたタバコに火を点ける。私が調合した、薔薇の香りのものだ。あぁ、美味しい。
 なんだあの男は、私にデレデレしているクセに、下心を一切感じない。ポムフィオーレって性欲もコントロールしてんの? なんて思うくらい、あのノエルには情欲めいたものを感じなかった。
 それでも、ノエル以外の男からは下心の籠った下品な目線は十分感じたから、いいだろう。ここでも私の魅力は十分通じるようでなにより。

 控え目で、初心でちょっと天然なお嬢様。それが今の「私」だ。

 なんやかんや言っても男子校ではこういうキャラがウケるのだ。女ウケは最悪だけど、男子校では関係ない、約束された勝利がここにある。
 利用できるものは利用して、要らないものは踏みつけて、それもすべて、最高の男を手に入れるため。

 なのに、最高とは縁遠いノエルに不覚にも惹かれてしまったのが腹立たしくてならない。
 なんなんだ、あの男は。ぱっとしない顔だけの男だと思っていたのに、気遣いが異様に細かい。そのくせ下心を一切感じさせない、いっそ不気味にも思えた。
 本当に意味が分からない、私にデレデレしているのは間違いなかった。ならば恋人でもいるのか? いや、そんな気配は感じられなかった。洗練はされていても空気感は完全に童貞のそれだ。
 なんなんだ、アイツ。
 いや、なんであれ、ノエルは私のターゲットにはなり得ない。当初の予定通り、使えるだけ使おう。
 ここに馴染んで、ディアソムニアのオトモダチとやらとパイプを繋げたら、排除すればいい。目標はあくまで、トップレベルの男。下っ端のモブに用はない
 あぁ、でも、その辺の王族よりよっぽど財を成している富豪もいるんだっけ。そっちもチェックしておかなきゃ。
 吸い殻を火の魔法で焼き尽くし、お気に入りの香水を振りかける。効果は弱いけれど、持続力の高い媚薬入りの特別性。せっけんの香りは好みじゃないけど、清純派に見せるにはこれが一番なのだ。