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頻子
2023-02-15 20:29:59
2222文字
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KODR二次
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むかし棚に上げたやつ(KODR)
*ベーケス2世結婚エンド後
*原作未登場のキャラクター視点
私は吸血鬼だ。
それも、高貴な吸血鬼というわけではない。魔界に数多くいるほうの、一介の吸血鬼である。
だというに、いま、私は畏れ多くも魔界王の御前にあり、みじめに床にはいつくばっている。その気になれば靴を舐めることもできただろうが、しかし、そんなもので何とかなる公算は小さい。
私が恐れているのは魔界王ではなく、となりの伴侶のベーケス2世だった。
「ニュート、ほら、お前をつらい目に合わせたやつがごめんなさいをしにきたぞ。こいつにどういう死に方をしたら許してやれる? 逆さにしてつっておこうか? 首をはねてやってもいいぞ
……
」
明るい声は、同時にぞっとするほど冷たい響きを伴っている。
床を見つめていてもどういう目をしているかわかる。
魔界王ニュートは今の魔界の最高権力者だ。しかし、伴侶となったベーケスの一族が政治のほとんどすべてを取り仕切っている。情勢を考えれば明らかに政略結婚で間違いないが、それにしてはそれなりに魔界王を持ち上げ、取り計らってやっているようである。まあ、いいとこ、お気に入りのペットみたいなものだろう。しかし、お気に入りの猫ちゃんとて、魔界王には違いない
……
。
ことの発端は、ニュート様が数時間行方をくらましたことにあった。
ニュート様の姿が見えないのに世話係が気が付き、たいへんな騒ぎになったのだ。心当たりをあたっても見つからない。家出だとか、誘拐されたんじゃないかとか、湖に落っこちたんじゃないかとか、不穏な憶測で城は恐ろしいほど騒がしかった。
魔界王がいなければ石炭は増えない。石炭がなければ、土地はなく、暗闇に飲み込まれて消滅する運命にある。新魔界が堕ちた今、魔界の運命はニュート様とともにあるのだ。
再びの魔界荒廃まったなし。
さんざん大騒ぎした挙句、ニュート様は宝物庫で発見された。宝物庫に忍び込んで遊んでいたら、何者かに扉を閉められてしまったのだということだった。
そう。
うっかりニュート様が忍び込んでいたのに気が付かず、宝物庫を施錠してしまったのがこの私だった。
閉じ込めインシデントは3時間に及び、お抱えの騎士様に発見されるまで、魔界の最高権力者は飲まず食わず、トイレにも行けずとなっていた。真っ暗な中、ろうそくもつけられず、扉も開けることができずで、固い宝物を枕にふて寝していたらしい
……
。
念力で何とかできなかったのか?
……
。
魔界王に吸血鬼の資質を問う事は許されない。
とにかく、大変な失態だった。これはもはや、極刑はまぬかれない。
事情聴取という名目だったが、私はもう覚悟を決めていた。呼び出す前に、紙とペンとわずかな時間が与えられた。遺書を書けということだ。ちなみに、個人的な後悔をつづれという慈悲ではなく、「あとが困らないように割り振れ」という意味である。
連座で罰せられるとしたら一族のどこまで及ぶだろうか
……
。
「
……
なに? 入っちゃいけないところに入ったじぶんも悪かったから、こいつを許してやってほしいって? でもニュート、同じことが起きたら困るだろう? 幸いすぐ見つかったからよかったが、さむーい地下室とかだったら、ニュートもカチコチになっちゃったかもしれないし、魔界はめちゃくちゃだし、そうしたら俺はもちろん悲しいし
……
」
魔界王は私をかばっているらしい。しかし、決定がくつがえることはないだろう。
「ニュートはちっともわかってない。これは魔界の住民全部を危険にさらした重罪なんだからな。可哀想に、狭くって暗い場所に閉じ込められて。自由もきかなくって、怖かったよな? かわいそうに、扉をドンドン叩いて
……
手も痛かっただろう? あっいや。
……
。いやうん
……
まあな
……
うん。誰でも過ちをおかすことはあるよな!」
……
。
なぜか急にベーケス2世がひるんだ。
冥途の土産に珍しいものが見れるような気がした。顔を上げてちょっと覗き見てみる。
魔界王は、何か言いたそうな顔で伴侶をじーっと見ていた。懇願するというよりはじとっとした目だ。
「ムリヤリ押し込まれたわけじゃないって? で、でも、今回のは単なる怠慢だぞ。切実な理由があったわけでもないし、単に
……
。何? じぶんが暇してたのは俺が約束をすっぽかしたから? どうしてもどうしても重要な会議があってだな
……
。悪かった。悪かったと思う、思うが
……
俺だってニュートとご飯食べたかったけど、こら! ニンニクは効かないって! 十字架はやめろ! お前も吸血鬼だろうが
……
!」
ぎゃーぎゃーと言い争いが始まる。魔界で一番偉い人物と二番目に偉い人物がもつれあって目の前にどさっと落っこちてきた。
そこで、ベーケス2世はようやく私の存在を思い出したようだ。
「処遇は後で言い渡す。下がれ。よいか、このことは誰にも
……
きゃーっ!」
なぜか許された。
一か月間、見張り塔での見張りを言いつけられるだけで済んだのだった。とはいえ、一族は許してはくれはしない。完全に縁を切られる。いっそ、魔物のいないような僻地に行って農業にでも精を出そうか
……
。
……
。
ニュート様、結構強いな。
さて、九死に一生を得てしまった私は思うのである。こんな魔界で大丈夫だろうか。
一抹の不安がよぎったが、まあ、ここを去るじぶんには関係のないことである。せいぜい地面が落っこちないように、祈るしかない。
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