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頻子
2023-01-28 20:40:19
3051文字
Public
KODR二次
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ニュート一族の繁栄と没落(KODR)
ベケニュ風味
・結婚後/ベーケス2世呼び
・ブラックコメディ寄りのギャグ
・魔界はちょっと雑
ベーケス2世は不機嫌だった。
それというのも
――
伴侶であるニュートが、ベーケス2世の仕事中、しょっちゅう人間を寝所に招き入れているとかいう、不名誉なうわさがまことしやかにささやかれているのであった。
そのようなうわさはうわさにすぎない
……
そう思っていたところに、幼なじみからのタレコミがあった。
「だ、だからー
……
、ニュート様の部屋に遊びに行ったとき、ソファーから知らない人の匂いがしたんですよ。それも、一人や二人じゃなくて
……
。
……
え? なんでニュートの部屋にって
……
いや、ふつうに遊びに行ったんですけど、ニュート様は留守で
……
わ~、降ろしてください~!」
望み通りに離してやると、ウルハムはべちっと床に落っこちた。見た目以上に頑丈なので、「おう、イテテ
……
」などと言っている。
まさか、ニュートに限って自分を裏切るようなことをするはずがない。
……
それも結婚して一月も経たず
……
とは思ったものの、念のため、ベーケス2世は仕事を切り上げ、早々とニュートのもとに向かうことにした。
新婚早々、ニュートをほったらかしていた自覚はあったりする。
正面から入る気にもなれなかったので、とりあえずマントをなびかせて空を飛び、塔から自室の窓を覗いてみることにした。言いつけの通り、カーテンはきちんと閉められている。カーテンの向こうでは、ひとつだけではない人影が揺れている。血の凍るような思いがした。力任せに窓を開けると、伴侶が見知らぬ男をソファーに押し倒していた。
「ニュ
……
」
ニュートは、ぱっと顔を上げると、ベーケス2世のもとに駆け寄ってきた。そのせいで、振り上げた念力のやりばがなくなった。
今日は遅くなると思っていたので、うれしい。
そういって、ぎゅっとニュートが抱き着いてきた。
手の甲で唇の端にくっついた血をふいたニュートは、ベーケス2世も一緒にするか、と尋ねる。
……
どう答えたらいいかわからなくなる。
「なにしてたんだ?
……
食事でもしてたのか?」
あれは死体だったのか?
しかし、ソファーで寝そべっていた男は、申し訳なさそうに起き上がってきた。
「仲間を増やしていた、だって!?」
なんと、ニュートは人間に噛みつき、吸血鬼の仲間を増やそうとしていたらしいのだった。
ベーケス2世は頭を抱えた。
婚約式の日にベーケス2世がニュートを噛んで吸血鬼にしたように、ニュートもまた吸血鬼を増やそうと
……
。
ニュートと一緒にいた男は、どうやら吸血鬼になりたいと申し出た人間らしいのだった。男の顔立ちは、よく見るとニュートのタイプでもなさそうだ。
……
たぶん。
「怒ってるのかって? そりゃあ、怒ってるぞ。貴重な魔界王の血を、ベーケスの血を
……
勝手にばらまいて
……
」
ニュートをほったらかすべきではなかった。外は大きくなったように見えても、中身はあほなのだ
……
。
みんなに喜んでもらえるのが嬉しくてどんどん噛んでしまった
……
。
と、ニュートはしゅんとして言った。
……
それでも、内心ほっとしていた。ニュートはじぶんを裏切ろうとしていたわけじゃない。
もともと、無種族のニュートである。魔界の石炭を出す魔界王の力以外は平均か並、お話にもならないくらいだった。
「
……
わかった。ニュートをほったらかした俺も悪かった。失敗は水に流してやろう。でも、ほかのやつに口付けたんだから、キスはしばらくなし!
……
しばらくってどのくらいって? それはニュートの反省によるぞ」
元人間の吸血鬼くらい、こっそり消してしまえば問題はない。せっかくニュートが生み出したのに気の毒ではあるが、仕方がないことだ。
「一回だけだからな。え? 一回は一回に入るか、って? ニュート、そりゃどういう意味だ?」
まさか、一人ではないのか
――
。何人かいるのか?
(聞き出して、とにかくすべて始末しないと
……
)
ニュートはそっとベーケス2世に耳打ちした。
「三十七人!?」
思っていたよりもはるかに上回る数字に、ベーケス2世は愕然とした。
「三十七
……
三十七っ
……
!?」
結婚してから一か月。
単純計算で、一日にひとり噛んでも追いつかないレベルである。
「ニュート様、次の方がいらっしゃいましたわ。あら?」
「送り返せ。
……
フランコール、きみまでグルか?」
「そういうわけではございませんが
……
」
その数、合計で三十七人。
ベーケス2世が忙しそうだから、味方を増やしてあげたかったのだ、と言われると強く怒ることもできない。
ニュートの血液は、薄い代わりにすさまじく予後が良いらしい。念力もちゃっちいが、さして痛くないし、ちょっとお熱を出すくらいで済むというのだ。
ニュートの血は吸血鬼にしてもらえなかった人間たちの群れで評判になり、血が血を呼んでこの騒ぎになっているというのである
何よりも価値のあるベーケスの血を大盤振る舞いされたのは頭が痛くなる問題だ。
「とにかく、もうここまでで打ち止めだ」
ニュートは慌てて言った。中途半端に変えてしまったらかわいそうだから、せめて最後まで噛ませてほしい。どういう意味かと尋ねると、ニュートは血が薄いので、三度噛む必要があるらしい。
「予防接種か!?」
こうなると、一日で一回ではとうてい足りない。朝昼晩、ついでにごはんにしていたようである。どうりで、食事をとらないと思っていたが
……
。
ニュートが築き上げたコミュニティーは、すでにひそかにはどうこうできない規模になっていたのだった。
部屋を出てみると『吸血鬼希望者 控室はこちら→』という看板まであって、吸血鬼になろうとする者たちであふれていた。
(魔界王だぞ!)
もはや、事態の収拾は不可能だ。
一人増やせばそいつがまた一人、一日に一人増やしたとして倍、次の日になればさらに倍。すでに収集がつかなくなっているのは想像に及ばない。
結局、彼らは適当な人間界へ追放することにした。間違ってもこっちに戻ってくることのないように、厳重に扉を封じたのだった。生を終えたら、そのまま天界なり冥界なりに行ってもらうことにする。
集合に答えてわらわらとやってきた奴らは吸血鬼とは思えないくらい念力が弱く、耳もまた短く、先が丸いのだった。
仲間とは言われないと気がつかないほどだ。
このままではいずれ、吸血鬼と人が見わけがつかなくなるのではないだろうか
……
。
帰り道、魔界の石炭を撫でると、しずしずと帰っていく。そこには悲壮感というものはなく、なんだかバカンスにでもいくようなあっけからんとした空気がある。
「え? なんで石炭を触ってもらってるのって? 記念だぞ、記念。連中はもう二度と
……
いや、たまにしか戻ってこれないからな。石炭を見ることもないだろう? だから、いまのうちに存分に触ってもらっているわけだ」
万が一にも、魔界王の力を発揮する者などがいれば処分するつもりだったのは言うまでもない。
***
こうして騒動は収まり、遠い日のことになっていた。
ニュートの顔を見ていると、ときどきベーケス2世は思い出す。
ニュートの血を受け継ぐ一族は、今もどこかの人間界で、独自の文明を築いているのだろうか。
どうせ全滅しているだろう
……
、と思いつつも、どこかでしぶとくはびこっている気がしてならない。親指でぐいぐい頬を押すと、抗議してベーケス2世の手を払いのけた。
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