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頻子
2022-11-21 23:16:49
2406文字
Public
KODR二次
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陽気とは(KODR)
うさんくさいベーケス2世の部屋の家捜しをするニュート(悪事に余念がない)
ベケニュ? 再建中
ニュートはぴたっと扉に耳を当て、入念に部屋の静寂さを確かめた。部屋の主がいないのを確認すると、しずしずと客室の扉を開いた。
じぶんの部屋ではない。ベーケス2世のお部屋である。
ベーケス2世は「ニュートならいつでも俺の部屋に来ていいぞ!」と言っていた。そんな気がするし、たとえ言っていなくてもベーケス2世ならいいよと言ってくれるはずだ。もし万が一にも「いいよ」と言ってくれなかったとしたら? ニュートは次期魔界王だからこのお城はニュートのものだ。じき。だから許してくれるはずである。
魔界再建のスタートから早数ヶ月。自分の重要性を理解し始めていたニュートは権力の味をしめはじめていた。
ニュートには、大切なミッションがある。
なんだかんだ一緒に過ごしてきたニュートは、ベーケス2世に対してひとつの疑念を抱くようになっていた。
もしかして
……
ベーケス2世、ちっとも陽気じゃないんじゃないか?
もしもベーケス2世が陽気じゃないとすると
……
これは魔界の一大事である。大切な家臣の一人が、ニュートに嘘をついているということになるのだから
……
。
ニュートはこの重大ミッションをこなすべく、ベーケス2世のお部屋を探検しようとジャンタンを誘っていたが、「死んでもイヤだよ」とやんわり断られていたのだった。
見張りをお願いしたかった
……
。
このことがベーケス2世に知られたら、
……
まあ、陽気な吸血鬼だから大丈夫だろうが
……
万が一ちっとも陽気でもなんでもない吸血鬼に知られたら、たいへんなことだ。ベーケス2世しんじつを知ったニュートはあっさりうっかり、消されてしまうかもしれない。
失敗は許されない、と言い聞かせながら、ニュートはベーケス2世の部屋をあらためている。まずは枕をぽんぽんする。異常なし。
次期吸血鬼の長のお部屋だというのに、この部屋は他の客室とさほど変わらない。強いて言うならば布地の厚いカーテンと、日当たりの悪い窓の位置が吸血鬼向けだ。あとは違わない。コウモリも血の入ったワイングラスもないし、蜘蛛の巣のひとつもない。
だいぶ綺麗な部屋だった。もっとも、ベーケス2世は実体ではないから、当然なのかもしれないが
……
。
ニュートは感心しながら、大きな蛇の抜け殻をそっとねどこにおいておいた。
ベーケス2世が「きゃー!」とか「ぎゃー!」とか言っているところを想像すると笑みももれようというものである
……
。
……
。
いつでもニコニコ。ニュートが話すとなんでも大げさにリアクションしてくれて、相づちをまめに打ってお目々をキラキラさせていたべーケス2世。最近は、どこか上の空だったり、眠そうにしていたりするのだった。最近なんて、アレだ。椅子を並べて寝っ転がっているところに近づいて脅かしてみようかな、と思ったら、「殺すぞ
……
むにゃ」とブッソウな寝言を言われてニュートは固まった。そんなことは、もちろん、言われたことは一度もない。
引き出しの一番上を開けてみる。今までにニュートがあげた細々したものが丁寧にしまってあった。おふだとか、口紅とか、ワケの分からないものでもニコニコ受け取ってくれるのだ。大切そうに押し花のしおりが本に挟まっていた。
うなずいていて真ん中を開けてみると、
……
なんと拳銃が入っていた。びっくりして引き出しを閉めて、ニュートはまたそろそろと開けてみた。たぶん拳銃だ。
手に取ってみるとずいぶん軽い。どうやらおもちゃらしかった。
……
ちょっとほっとした。
それから、三段目。何かあるぞ、と思ってごそごそしていると、たくさんのピックが並んでいた。お子様ランチに立てるような旗だ。たぶん描かれているのはベーケスのおうちのマークだ。それからお誕生日パーティーの招待状
……
。膨らんでいないバルーン
……
。クラッカー
……
。
……
。陽気だ。
陽気だが、
……
どうにもうさんくさい。まるでニュートがこの引き出しを開けるのを知っていたかのような
……
。
「何しているんだ、ニュート?」
身を乗り出して人の引き出しを開けていたニュートはその場で固まった。ベーケス2世は、音もなく後ろに立っていたのだ。
「ああー、一族のサプライズパーティーの計画が。知られてしまったからには、いくらニュートだってただじゃあすまされないぞ。ニュート、悪い子だなあ
……
それ! 悪いニュートはこうだっ」
ニュートはポーンと放り投げられた。
ベーケス2世はニュートをくすぐるふりをする。虚像なのでむなしいだけだ。きっと実ベーケス2世がいたら楽しかったことだろう
……
。
「はあ。俺が実体だったらよかったんだが
……
」
それなら、実体で来てほしい。そうしたら念力で無理をする必要はないのだ
……
。
「そうだなあ。
……
ニュートが俺と結婚してくれたら俺もちゃんと魔界に来れるぞ!」
この吸血鬼といったら、なんでもかんでも最終的にはコレである。前髪を下ろすのも、一緒に遊ぶのも、もっと楽しいことも、「続きは結婚DLCで!」とのたまうのである。
ニュートは知らなくてはならないのだ。ちゃんと、結婚したらニコニコして、まいにちきゃーっと言ってくれないと困る。なんか違うなあ
……
という感じになったら困る。うっかり吸血鬼になんてなったら、もう後戻りはできないのだ。北向きの暗い部屋で、パフェも食べられないまいにち
……
。考えるだけで涙が出そうだ。いくらベーケス2世が好きといっても、ちょっと耐えられないかもしれない。
「なんだ、ニュート、吸血鬼になること考えてるのか?
……
真剣に?」
ニコニコというよりはニヤニヤしながら、ベッドに腰掛けようとしたベーケス2世が「うわっ」と地味なリアクションをした。ニュートは抜け殻のイタズラのことを思い出して、それから、脱兎のごとく逃げた。
やっぱり陽気じゃないかもしれない
……
。
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