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頻子
2022-10-02 23:47:55
2598文字
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KODR二次
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ニュートは 虚像 をおぼえた(KODR)
ベケニュ消失勘違いコント
結婚後だけどなんか気が散る気がしてベーケス2世呼び
今日はそんな気分です
ついに
……
。
ニュートはふわふわと浮きながら、床の上で動かない自分のすがたを見下ろしていた。
ついに、ようやく、ようやくである。
ニュートは念力で「虚像」を出すことに成功した。
元無種族のニュートはポンコツ魔界王は、吸血鬼としてもポンコツで、念力を使おうにもそよ風のような強さしかなかった。
ニュートの念力を見た後、ベーケス2世はしばらく押し黙った後、「まあ、
……
ニュートは魔界の石炭を出せるから
……
」とフォローしてくれたけれど、吸血鬼一族でも外聞が悪いに違いない。彼はやすやすと使いこなしているから、たいへんだといっても、食器をのっけたままテーブルクロスを引っこ抜くのと同じくらい簡単だろうと思っていた。全くそんなことはなかった。
簡単だろうな~と思っていたからこそ、こっそり練習して喜んでもらおうと思っていたのだが、なんと、1年もかかってしまった。
まあ、それは、いいとしよう。
それにしても、である。自分を見下ろすというのはとても奇妙な感覚だ。しげしげと眺めてみると、魔界王の割には実に「ふつう」だ。えいや、と飛び出してしまったものだから、ポーズもまた「行き倒れ」みたいになっている。せめてと思って仰向けにして両手をおなかの前で組み合わせさせてみる。
アーメン。吸血鬼的にはちょっと不謹慎だ。
ともかく、これで好きな時に愛しい伴侶のもとに飛んでいけるのだ。きっとベーケス2世も喜んでくれるはずだ。
この残念な念力の強度でも、ニュートは怒られたりしたことはなかった。ベーケス2世はニュートを責めなかった。出来ないことは仕方がない、と、優しく言ってくれた。一族からもおおっぴらに侮られたことはなかったが、それは、きっと、伴侶が心を砕いてくれているからに違いない。
肉体の重さがない分、空を飛ぶのは楽なものだが、それでもやっぱりふらふらする。
見ている方が酔いそうな動きを重ねて、ニュートは虚像で空を飛んでいた。
ベーケス2世はどこかな、と空を飛んで、執務室の中にすがたを見かける。ベーケス2世は難しそうな顔で書類をにらんでいたが、相手がニュートだとわかると、喜んで窓を開けてくれた。
「おおー! ニュート! どうしたんだ。ずいぶんスムーズに飛べるようになったな。なんだ、俺の顔を見に来てくれたのか? 俺もな、ニュートのことを考えていたぞ
……
」
ベーケス2世は手を伸ばし、ニュートの手のひらを引っ張ろうとし、しかし、それは空を切る。
どうだ、とニュートは得意になる。
ベーケス2世はその場で固まる。感動で動けないらしかった。
――
とてもとても頑張ったけれど、ちょっと疲れてしまった。
……
。
「ニュ
……
」
ベーケス2世は見たこともないような、真剣な顔をして言葉を失っていた。
反応が、思ってたのと少し違う。
「俺が
……
お前に魔界王になれって言ったからか? 俺が
……
お前に。石炭を
……
。だってそんな
……
やっと
……
やっとお前と会えたのに、15年、ずっと
……
。結ばれて
……
」
そこでようやく、ニュートはなんだかベーケス2世の様子がおかしいことに気が付いた。
どうやら、ベーケス2世は、前魔界王のように、石炭の生成のしすぎでニュートが透けはじめたのではないかと勘違いしているようなのだった。違うよ、とニュートが否定すると、ベーケス2世は唇の端をゆがませて嗤った。
「違う? 何も違わない。俺がそうしろって言ったんだ。俺が魔界王になれって言ったんだ。俺がお前に頑張れって
……
」
そんなことは言われてないし、ニュートが魔界王になったのはベーケス2世とは関係がない。ニュートは慌てて何とか誤解を解こうとしたが、ベーケス2世は苦しそうな顔をするだけだった。
「ニュート、いったん石炭を作るのはやめよう。俺が、ぜんぶ、何とかする。大丈夫、大丈夫、触れられなくても
……
俺はお前のことをちゃんと覚えてるから。触れなくても
……
触れなくても
……
」
ベーケス2世に、たぶん、手首をつかまれているらしいのだが、空気を読んだ方がいいんだろうか。虚像はどうやって動かせばいいのだろうか。そもそも誤解を解くのが先なのではないだろうか?
どうしたらいいのか分からないままにとりあえず空気を読んで動きを合わせておくと、驚いたことに、そのまま口づけられた。
ベーケス2世が泣いている。
ぽたりとしずくが落っこちて、ニュートを通り抜けていった。
後頭部を抱き寄せるしぐさで、噛みつくようにキスをされる。
というところで、ニュートは起きた。
アーメン。
出来ればこのまま二度寝して、夢落ちということにしてしまいたい。
虚像って長く出しておくのはたいへんなんだな
……
とニュートは思い知る。
ベーケス2世からしてみたら、目の前にいたニュートがぱっと消えてしまったわけで、それはもう、ものすごくびっくりしているころではないだろうか。
早く戻ってあげないと、取り返しのつかないことになる気がする。
それでもちょっと、心のどこかでは心配してもらうのがうれしかったりはしたのだった。
◆
「ニュート。念力、禁止」
それからニュートはしばらくのあいだ、ベーケス2世に首から十字架を下げさせられ、いっさいの吸血鬼の能力を封じられてしまったのであった。
吸血鬼にしたら厳罰なのかもしれないが、元無種族のニュートにはなんてことのない罰である。
虚像は紛らわしいのでよほどの必要がなければ使ってはいけないことになった。せっかく覚えたのに、くたびれただけになるとは思わなかった。
まあ、しかし、真っ赤な目を真っ赤に泣きはらしたベーケス2世はちょっと珍しくて、たくさん心配されたぶん、得をしたような気分ではある。
「ニュート」
機嫌を損ねた伴侶は、しばらく単語でしかしゃべってくれなくなったのだった。
「ニュー! ト!」
呼ばれたら即ベーケス2世のところにいかないと、ベーケス2世はたいへんに機嫌を損ねるが、十字架を身に着けているせいで引っ張ることもできないのだ。
ニュートはわざわざ立ち上がって、ベーケス2世のところに行かなくてはならない。
「うん」
ベーケス2世はしばらくニュートの頬をぐにぐにとやるとよし、と満足そうに言ったが、手は決して放してくれなかった。
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