頻子
2022-10-02 14:59:06
2555文字
Public KODR二次
 

エアニュート(KODR)

スケルナイト→ニュートみ(検討中です!!!)
ほかウルハム→ニュート、ベーケス2世→ニュートみがある

「魔界の石炭作りすぎちゃってよかったらどうぞ、ですか???」
 にっこり笑って魔界の石炭を差し出してきたニュートに、スケルナイトはたいそう困惑したものであった。
 それでも表情を崩さず、動揺を隠して両手で受け取り、「ありがとうございます、ニュート様。ありがたく頂戴いたします」ということはできた。日ごろの、たゆまぬ訓練のたまものである。
 石炭といっても、魔界の石炭は通常の石炭のように真っ黒なものではない。水晶のようにきらきらと輝いていて、宝石のような見た目をしている。
 魔界の大地を広げる『オーの炎』を燃す魔界の石炭は、ここでは深刻に政争の道具なのだが、それは、まあ、おいておくとして……
(いったいどうして、急にこんなものを)
 スケルナイトは、かつてニュートに「宝石が好きだ」と言った覚えがあった。だから、ニュート様はこれをくれたのだろうか。じぶんが他愛なく言った言葉を覚えていてくれたのだろうか。そう思うと心があたたかくなる。
 ただ、どうにもちょっとずれているような気がしないでもない。
 父王から王座を譲ってもらった魔界王、ニュート。
 伴侶はいまだ「検討中!!」の身であった。

 ニュートがあまり深くかかわってこない以上、こちらも踏み込む機を失い、ただ単に「ちょっと仲の良いくらいの主従関係」となっている。どうせならニュートの方から「大好き! 結婚してくださいまし!」くらいの勢いで胸に飛び込んできてくれてもよかったのだけれども、逆をするわけにはいかなかった。はっきりとした主従関係がある以上、姫様が手を差し出してくるのを待つほかない身である。……それはそれとして、憎たらしい幼なじみの姿に取り繕った見目で姫様に言い寄られても深刻に憎悪が募るという難儀な身の上だった。ニュートに見向きもされないと思うと、自分こそが正しいのだと思えて非常に胸がすくのである。

 きれいな結晶は宝飾品にでも仕立てたらさぞ美しいとは思ったのだが、なんだか削るに忍びなく、ただ布を敷いて部屋に置いてある。窓辺の席。直接日光は当たらないが、涼しい風が時折通り抜けていく、良い場所だ。
 お守り代わりに、戦場に連れ出そうかとも思ったが、この結晶が傷つくのはなんとなくいやだった。姫様を戦場にもっていくなどと、とんでもないことである。
 彼女に何かあったらと思うと、自分も生きてはいられない。
 ただ、ニュート様は行くが。
 今生の姫様は、領土奪還のためならば戦場に赴くような勇ましさを持ち合わせている。しかしながら戦いを好むでもなく、平気なのかといえばそうでもない。
 あの細い肩にかかる重圧を思うと、ただただ、見返りもなく敵の首をいくらでも差し上げたいと思うのだった。
 改めて眺めていると、宝石は複雑な色を映しこんでいて美しかった。目を閉じても、頭の中には鮮明な姫様がいて、いつまでも像を追ってしまう。瞼の裏に紫の光が残っている。
……夢にまで出てきそうだ。



 スケルナイトは魔界の石炭との生活を楽しんでいた。
 ニュートからもらった石炭に「小さな私の姫様、行って参ります」と挨拶をし、日々の心の糧にするステージにまで達していたが、それは、自分以外には誰にも知られぬことである。
 表に出ない秘密はないのとおなじだ。墓までもっていく秘密であった。
 石炭とはいまだプラトニックな関係を保っており、まだ唇も許していない。それは、本物の姫様と叶ってからにしようとひそかに心に決めていた。
 しかし、悲しいことに、ニュートから石炭をもらったのはじぶんだけではない。ほかの家臣も、同じようなものを下賜されている。
 寵愛は等しく誰にでも与えられるものなのか。
 そのことを考えると激しい怒りを覚えた。……ほかの家臣はどうしているものだろうか。
 ゾービナスはだいじにすると言い、ヘアピンにして髪をくくっていた。しょっちゅうなくしたと騒ぎ立てては見つかったと大騒ぎしている。ウィンチはすりつぶして調合の材料にしていると言っていた。それはまあいい。ベーケス2世らへんは、どうせ光の届かないところに収納し、ニヤニヤしながら眺めているだけに違いない。
「あ、ペットにしてます」
「ペット???」
 ウルハムの答えに、スケルナイトは脳天を重い大槍で貫いた時のような衝撃を受けた。
「いや、まあ、僕にはガリアンがいるんで、あれなんですけど……。まあ、なんというか、ペットロックってあるじゃないですか」
「ペットロック」
「あ、いや、石をペットみたいに扱うっていうか、そういうお遊びみたいなものなんですけれど」
 ウルハムはごそごそとポケットを探すと、紫の結晶を見せびらかしてくれた。こいつ、堂々と持ち歩いてるのか……と、スケルナイトはまた驚いた。
 ウルハムのものは自分のよりも小さくて内心得意だったが、「ここのところが耳みたいに見えるからウルハムにあげるってニュート様が~……」と言ったもので、一気に気分を害したのだった。
「ペットねえ。何をするんだ、その石で?」
「え? いや……たいしたことはしませんよ。石だもの。ただ一緒に連れ歩いたりー、写真を撮ったりー。あ、そうすると汚れるので一緒にお風呂に入るんですけれど」
「風呂……
 スケルナイトは絶句した。なんて破廉恥な! いや、そうだ、コイツは獣なのだから、そういった機微がわからなくてもしかたがない……
「そういえば、スケルナイトって、ニュート様からの石炭をどうしてるんですか?」
「いや。べつに。なにも。さて、君と話してると頭がくらくらしてくる。失礼するよ」
「ああ……はい。さようなら」



 食堂にやってくると、ベーケス2世が眉間にしわをよせ、おぞましい血液を飲んでいた。こちらを見るとあきらかに眉を顰め、杯をあおるペースをあげる。そして空いている掌で、すっと何か隠した。……コイツと相席する気はなかったが引き返すほうがしゃくだった。小さなハンカチを広げ、スケルナイトが石炭を置くと、ベーケス2世は信じられないものを見る顔をして、思いっきり舌打ちすると、隠した何かをポケットに忍ばせる。それはどこか見覚えのある、きれいにカットされた宝石だった。