頻子
2022-06-10 06:37:00
2241文字
Public KODR二次
 

ベーケス2世と結婚してるけどスケルナイトが推しのニュート(KODR)

*ベーケス2世×ニュート←スケルナイト
ベーケス2世さんのイベマのときとスケルナイトさんのイベマの時の反応の差がとっても好き。

 次期魔界王の伴侶に選ばれたベーケス2世は、いまや魔界でもっとも成功した吸血鬼となった。
 約束された次期吸血鬼の長の座。魔界の全ての上に立つ権力。
 ならば、ほかに何を望むことがあろうか。
 なにもかも順調のはずだった。順調のはずだったのだ……

「ニュート……! おかしい!」
 ニュートはぱっと髪の毛を触った。
「そうじゃない。ニュートの格好は変じゃない! けど、お前の態度はおかしい! なんでそんなに浮かれてるんだ?」
 ニュートに問いかけながらも、理由ははっきりしていた。
 今日は、スケルナイトが遠征から戻ってくる日だったからだ。
 スケルナイトの帰還は、予定よりも数日はやかった。それを聞いたニュートは大はしゃぎで、一生懸命にめかし込んでいるというわけである。
 あらたな地域で起こった暴動を首尾良く鎮圧したらしい。
 ベーケス2世にとっては非常に腹立たしいことに、スケルナイトはニュートのお気に入りの家臣である。
 当初よりも任せる兵の数をこっそり減らしてやったのだが、なんの意味もなかったらしい。むしろ足手まといがなくてラクだった節すらある。次はとびきり無能な連中でもつけてやろうかな、と思ったが、スケルナイト以外全滅するはめになるかもしれない。それはそれで使えるな……、と悪い考えが浮かび、倫理的な部分ではないところに嫌気がさした。
 そう。悲しいことに、使えるのだ。奴は。
 駒として申し分なく使える。有能すぎる。それに……こちらを裏切る心配もない。少なくともニュートがいるうちは……

「ニュート!」
 ベーケス2世が『ウインクして!!』と派手に装飾されたうちわをかかげると、ニュートはウインクしてくれた。ちょっと不完全なウインクだ。
「ああもう!」
 それから、恥ずかしそうにニュートはうちわで口元を隠す。
 ベーケス2世がいちばんだ。スケルナイトのことはいちファンとして見ているだけで、別に結婚したいというわけではない。
「ニュート……
 それはベーケス2世もわかっている。別にニュートが浮気しているとは思っていない。そんな覚悟で吸血鬼になどなるものか。
 自分は間違いなく選ばれたのだ。
 ニュートはまっすぐにベーケス2世を見つめて言う。
 そもそもスケルナイトと話していると顔が良すぎて何を言っているか頭に入ってこないから、まともに話せたことはない。
「ニュートーーーーっ!」
 心、奪われてる……
 ベーケス2世が『コッチを見て』のうちわを掲げると、ニュートはちゃんとこっちを見てくれた。

***

 あんなやつのどこがよいのか?
 顔が良い。よどみなく答えられてベーケス2世は顔を引きつらせた。まあ、それはそうだろう。内面のことはロクに知るまい……
 とくに横顔が好き。こっちを見ていないときの顔がいちばん……そう続けられてどう答えたものか分からなくなった。
 じゃあ何、あっちから好かれてたらどうする? とか、そういうことは聞けなかった。怖い。ベーケス2世にとって幸いなのは、あの亡霊は、あれだけこじらせておきながら、あちらからは言い寄ってこないことである。
「お前、昔の……
 あいつのこと覚えてるか? と言いかけて、やめた。なんのことか、と首をかしげるニュートはやっぱり何も覚えていないようだった。それでいい。自分はもう思い出して貰えたし、 亡国の姫様とかいう妄言をホンキで信じているわけではないが、呼び覚ましてなるまいと思った。
「ニュート様、ただいま戻りました」
 登城したスケルナイトは、完璧にかしこまった姿勢で一礼をした。
 正面から向き合っているのはベーケス2世だが、嫌みったらしくニュートに向かって言うのだった。ニュートは、至近距離からのファンサを浴びて思考停止している。
「ご苦労」
 とっとと死ね。さもなくば成仏しろ。胸中で吐き捨てながらベーケス2世は思う。
 完全な姿となったスケルナイトに比肩するものはなく、どう考えても魔界の最高の武力である。どうなってるんだ、魔界。コイツはもとはタダの人間じゃないのか。死ね。
 実際、権限を最大限に駆使して不安定な場所に送り出してはいるが、憎たらしいことにことごとく戦果を挙げて帰ってきやがるのだった……
「休暇をやろう。身体を休めておけばいい」
「いえ、問題ありません。ニュート様のお顔を拝見できましたから、疲れなど吹き飛びますよ」
 後ろでニュートが小さく悲鳴を上げたので、心からイラッとした。
(こいつはもう吸血鬼だ。俺とおんなじ、魔物だよ。もうお前と結ばれることはない……
 なのになんでまだ魔界にあり続けるのか。
 とりあえず、ベーケス2世は痛烈な一打を加えてやることにした。
「残念だったな。用意したドレスが役に立たなくて」
 スケルナイトは一瞬、あきらかに動きを止めた。ニュートにはなんのことか分かっていないだろう。
 微かな満足を得て見下ろすと、絞り出すようなうめき声が聞こえた。
……黒いドレス……
……は?」
……ふ、ふふ。湖面に映る月の光があの方のかんばせを照らし出す。宵闇をまとって輝く……ふふふ……ええ、分かりましたとも。世界は姫様のためにある! いつだって姫様は俺を新しい場所に連れて行ってくれる……
 理解がじぶんの想定の範疇を超えてどっかにいった。
 やはり、コイツのことは理解できないな、とベーケス2世は心底思う。