頻子
2022-05-26 12:58:55
1960文字
Public KODR二次
 

バームクーヘン適性が高い(KOD)

失恋ベケニュ(別の知らん人と結婚するけど未練たらたらな事故)
無印のほう2世も好き。
そういえば性別は特にないけど無印のほうはニュート(の輪郭)が野郎だと嬉しい。

「断固反対だ、反対! ……俺は賛成できないな。フン!」
 新たな魔界王ニュートと、吸血鬼の長・ベーケス一族の仲の悪さは、魔界ではかなり有名な話である。
 ベーケス2世はちらっと要綱を眺めただけで、紙を机に叩きつける。どこがどう悪いのか、と、魔界王が尋ねた。
 おおむねいつもの流れだった。
 基本的には、ベーケスの一族は魔界王には反対しかしない。魔界王が白といえば黒だし、黒といえば白と言う。だから、この展開はもう決まっていたようなものなのだが、侮ってはいけない。きちんと読み込んできているのである。
「たとえば12ページの自然保護区の整備に対する予算案だが、いったいいつのものを使っている? ここの小項目はどう考えているのか」と、……これがまた言いがかりとは言い切れないくらいの微妙なラインをついてきており、ほかの家臣たちもおおっぴらに反対もできないのだった。
 家臣たちは、吸血鬼の同胞のあいだで繰り広げられる内輪もめに、どうしたらよいかわからずただ虚無を見つめているほかない。
 魔界王は、小さくうなずきながら怒涛の演説に耳を傾けていた。とウルハムはすみっこで巻き込まれないように小さくなりながら、よくあれだけしゃべることがあるな、と、妙な関心すら覚えている。
「だいいち……こんな自然ばっかり増やしてどうするっていうんだ? 人間界暮らしの魔界王サマは、すっかり頭も花畑かな、ははは」
 あからさまなののしりに空気が凍り付くが、それよりも、続く魔界王の一言が怖かった。
 みんな花が好きだから。
 そんなわけあるか。
 何も味方する理はないはずであったのだが、それを聞いたベーケス2世は、面白いように凍り付いた。
「では……25ページの……
 それでまた、長々としたあげつらいが続くのだった。

***

 どうしてベーケスの一族と魔界王の仲が悪いのかというと、痴情のもつれとしかいいようがない。いや、もつれるほどの糸もなかったような気がするが、とにかく、話は大いにこじれた。
「ホントあの時の空気さ……いたたまれなかった……
 ウルハムは正直に言って関わりたくないが、押し付けないといけない書類があるので仕方がなかった。とっととサインをよこせ、と思ったがなかなかサインしてくれない。次の口論に備えて準備しているのだろうか。机の上にはいろいろな資料が散らばっていた。几帳面にふせんも貼られていた。
 かつて魔界王に求婚していた(らしい)ベーケス2世は、ニュートの婚約者を名乗っていたのだが、フったのはベーケス2世のほうだった。前魔界王と家臣たちがずらりと集められた中、公衆の面前で、思いっきり結婚を拒否した吸血鬼の話は今なお語り草である。
「あいつが思い出さなかったのがぜんぶ悪い! そのうえ、そのうえ……俺にフラれたらあっさり別の吸血鬼に乗り換えて!」
 それから、傷心の魔界王は、あっさり人間界からやってきたばかりの吸血鬼と結婚してしまったのだった。
 人間界に来るにあたり、魔界に来てほしいと頼み、婚約者にフラれた吸血鬼らしかった。お互いに似たような傷を抱えた魔界王とすぐに意気投合し、噛んだ嚙まれたの関係に発展したらしかった。ちょっとだけ嚙んどけばよかったなー、と思わないでもない。
「あの吸血鬼は、念力も大したことないではないか! 背だって……俺のほうが高い。それに、それに、式のあいだ、……二度も。二度も名前を呼び間違っていたぞ。ははは!」
「まあ、ニュート様も間違ってましたからね……名前……
……どうせ、一年ももたないくせに……
 この前の口癖は「一か月は持たないくせに」だったのだが、ところがわりとうまくいっているらしく、一か月経ってしまったので期限が伸びている。
 ウルハムにとっては、わりと、どうでもよい。
「俺の十五年のうちの少しでも苦しめばいいのに……ああ、殺してやりたい……殺す!」
 ぶつぶつとひとりで文句を言っている。
 吸血鬼同士でいがみあっているスキにどうこう、といきたいところだが、ところが、別種族と対立したときなんかには、全力で文句をつけてくるのだ。ほかの種族からしたら魔界の政治が滞るわ、自分たちのことは顧みてもらえないわで、不満もたまりようものである。
「もう、魔界王の座はあきらめて、2世も結婚したらどうですか?」
……うん、そうだな。それで、俺の結婚式では、魔界王を一番前に招いてやろう! きっと悔しがるだろうし。そういえば、俺は先にくだらん会議から帰ったわけだが。あいつは何か言ってたか? 俺を殺すとか。憎いとか……なんか」
「ああ。じぶんに子守唄を歌ってくれた人だから、優しくしてあげてねって」
 ばきっとペンが砕け散った。
「愛がなんだ……