頻子
2022-04-05 08:32:27
4274文字
Public KODR二次
 

プロポーズ演習(KODR/KOD)

無印をプレイしたのでベーケス2世の比較習作


●無印
 テーブルクロスの上にわざわざセッティングされたフォークを無視して、次期魔界王はポテトサラダに手を突っ込んでいる。齢にして1歳に満たないながら、なかなかの暴虐ぶりである。
 ベーケス2世はなすすべもなく、暴君が食卓を蹂躙するさまをただ眺めている。
 ぴしゃりと手の甲を叩いて、「飯抜き!」とでも言ってやりたいところだが、ここに秩序はない。
 ……それに機嫌よく食べているだけ『マシ』なのだ。手間をかけて準備した食事を、もう何度ムダにされたことか……
 それはそれとして、今は、機嫌を取っておくべきタイミングだ。
 ニュートは終始にこにこしていたが、不意に動きが止まった。ポテトサラダに入っていた何かを摘まみ上げた。
 きらりと光る、金属製の何か。
「おっ、ニュート、……気が付いたか?」
 ベーケス2世は、マントを翻し、ニュートの前に跪いた。そっと手を取る。
「それはな。俺が用意した指輪だ。いいかニュート、俺と結婚……
 かぷ、とニュートが指輪を口に含み、ベーケス2世の笑顔がぴしっと固まる。それが食べられないことを知ると、ぽーいと放り投げ、べそべそ泣き出した。
「イヤだというのか……!? ここまでしたのに! 大変だったんだぞ、芋をつぶすのは! 栄養バランスとやらも考えてやったのに……お前は知らんだろうが、そのサラダには……ニンジンが入ってるんだぞ!」
 これだけ苦労しても、うんと言わない。
「ニュートの阿呆! わからずや! ええい、まったくもってやってられん! どうすりゃいいってんだ……!」

 次期魔界王との婚約を成立させるため、ベーケス2世はあらゆる努力を惜しまなかった。
 贈り物は欠かさない。甘い言葉をかけてみたり、ときには目の前でほかのやつと仲の良いそぶりをしてみたり……連れ出して空を飛んで、夜景を見せてやったこともある。
「なあ、ニュート。俺たち結婚しようか」
 問題は、歯の生えそろっていないような子供に対しては全く意味がないということだった。
 考えられる限りの手段を尽くし、何度も何度も求婚したが、いままで一向に応じてもらっていない。
「や!」のひとことで袖にされながらも尽くす不毛な日々である。
「ニュート。世の中そう甘くはない。泣いて何とかなると思いやがって……ああうそうそ、ウソだ。気にするな。泣くな! 泣きやめ」
 ベーケス2世が根負けし、せっせと残った食事をフォークで口元まで運んでやると、ニュートは泣きながらも器用に食べていた。食べているときはおとなしい。
「くそっ、これだけ俺が下手に出ているのに……。これだけ、誠意を尽くしているというに。お前は俺の求婚に頷きやしない……。覚えておけよ! 覚えておけよ……ニュート。この借りは必ず、支払わせるからな……!」