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頻子
2022-03-16 20:14:17
2287文字
Public
KODR二次
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2世死ぬほど婚約者のこと好きかよ(KODR)
※現パロ
お題の概念だけもらったやつ
ベーケス2世×ニュート 社長を見ている
「おい、なんだ。この数字は。いったいいつになったら成果を上げられるんだ? 貴様は」
〝2世〟の一喝がオフィスに響きわたった。
「何のつもりだ? 寝ぼけてるのか?」
ピリピリした空気はあるが、これが日常でもあるので、誰も気にしてはいない。ウチが数字に厳しいのは誰もが知っていることである。詰められている社員は、ひたすらに震えあがっているばかりだ。
と、そこで、唐突に、副社長のスマートフォンに着信があった。副社長はちらりと画面を見ると、「もう行け」という風に手を振った。「次はクビだ」と言い添えて。
説教を食らっていた男は、すごすごと席に戻っていった。
「
……
あいつ、命拾いしたなあ」
と、同僚が言った。
ベーケス社は名だたる大企業のひとつだが、徹底した成果主義でもある。勤めているだけでもある程度の地位が保証されるが、ささやかなミス一つ許されず、また、ノルマはかなり厳しい。
「あの目はなあ、おっかないよなあ」
「だよなあ」
2世こと副社長は、社長とはあまり似ていないけれども、特にあの目は、もう、本人と言っても過言ではない
……
。
とはいえ、熾烈な生存競争が強いられているのは、副社長にしたってそうだという話である。なんでも兄弟姉妹がごろごろいて、最も優秀なものが跡を継ぐのだとか
……
。というウワサはさておき、実際に副社長はおそろしいほど仕事がデキた。そりゃあもう、交渉事を任せたら右に出るものもいない。
「なあ、知ってるか、副社長がさ」
「うん?」
「結婚するんだって、近々」
「マジで?」
「ほら、あの電話の相手って婚約者だよ。光り方が違うもん」
こういう目ざとさが、ここで生き抜いている者の強さだろうか。
……
そういえば、と思い返してみると、追求がちょっと緩かった気がする。あの仕事しかしないような副社長が席を外して電話に出ていたくらいだ。
「
……
じゃ、相手は玉の輿かあ」
「いやいやいや、副社長の方が玉の輿だよ」
「え?」
「相手が、もっと上、もっと上。なんか、もうすんごい、政治系のあれ
……
」
「ははあ」
世の中には、自分のようなエリートですら想像のつかない世界があるものだ。
「完全な政略結婚ってワケだ」
「抜け目ないよなあ、副社長」
「婚約者っていくつ?」
「15とか、6? だって」
「うわあ」
「家の方針で、普通の学校に通ってるらしい」
同僚はどこから情報を仕入れてくるのか、やたら婚約者に詳しいのだった。
「上手くいくのかね。副社長と
……
」
「あれさ。あの電話、ついてったらさ、取り繕ったような甘い声で、『ああ、俺も愛してるぞ!』って喋ってるのが聞こえるぞ」
「
……
」
「おもしれぇだろ?」
全く想像がつかない。
「いや、それが。前に副社長にさ、どんな人か聞いたらさ。やたら情報が薄いんだよ。で、なんかさあ。聞いてみたらさあ、最後に会ったのが、ぜんぜん、もう、立ったか立たないかの幼児の頃だって! ははは」
***
ヘトヘトになりながら仕事を終わらせ、さて帰ろうかと思ったところで、オフィスに明かりがついているのが見えた。
「ニュート
―
! 愛してるぞ!」
あまりに快活な声が聞こえてきて部屋を間違ったかと思った。
「はは。遅くにすまん。声が聞きたくてなー。
……
飯、食べたか? そうかー。食べたか。何を食べたんだ? 写真でもいいから送ってくれないか? ほら。お前がちゃんと食べてるって分かったら、俺も、嬉しい。うん、俺は食べてるぞ? ああ、ほんとだ、ほんと」
と言いながら、副社長はチョコレートバーをやる気なく囓っていたようである。
「なんなら画像でも送ってやろうか
……
。いらない? ははは。そう。うん、またな
……
愛してるよ」
あまりに普段と違う様子に、これぞ政略結婚か
……
と、若干引いている自分がいた。地位の為なら、なりふり構わず、子供相手にも下手に出るんだなあ。
いや、ベーケスの跡取りともなると、そんな貪欲さがないとやっていられないのかもしれない。
副社長はスマートフォンを置くと、ふーっと息をつき、盛大に机に突っ伏した。
それから、何か操作している。しばらくすると、ぱっとノートパソコンいっぱいに写真が映し出された。植木鉢を抱えた、可愛らしい感じの子供だった。
元気いっぱい、という感じで、にっこり笑っている。
あれが婚約者か。
なんだか、思っていたのとは違った。
「ニュート
……
」
2世が無心で、マウスカーソルを動かしている。
「
……
会いたい
……
」
……
撫でてる。
頭を撫でている。
マウスカーソルで頭を撫でている。
副社長、婚約者のこと死ぬほど好きじゃねぇか。
ぐすん、とやたら涙ぐんだ声まで聞こえてきて、もう、なんか。なんだか見てはいけないものを見てしまっているような気がした。
書類は明日にすることにして、俺は逃げ帰るように会社をあとにした。
***
「おいなんだ、どうした、この数字は。ええ?」
今日も副社長がどなっているが
……
なんだか、あれ以来、副社長がぜんぜん恐ろしく見えなくなってしまった。
それはそれとして別に、俺たちへの手心があるわけじゃないので、フツウに困るしかないわけである。
スマートフォンが鳴ったとき、ぱっと点滅パターンを見て。
……
目当てじゃなければ、がっかりしたように見えるのは、やっぱり気のせいだろうか。
そしていついかなる時も心の中で思うのだった。
でもそんな偉ぶったって、副社長、婚約者のこと死ぬほど好きじゃねぇか、と。
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