頻子
2022-03-14 02:57:54
2479文字
Public KODR二次
 

知らない人についていっちゃだめだぞ(KODR)

魔界に連れてかれるまえにうっかり事故って幼なじみ3人が病室に詰めかけるif。
ベーケス2世、ゾービナス、ウルハムとデビイ。コメディです。

 目が覚めたら、ニュートは白い天井を見つめていた。
 大丈夫ですか、と、お医者さんらしき人がニュートに呼び掛けている。
 ううん、とニュートはちょっと呻いた。
 どうやら、ここは病院で、事故に遭ったらしい……というか、たんに自転車でコケただけなんだけれども……
 すると、ベッドのわきにいた二人が、同時にギュッとニュートの手を握った。
「ニュート! 心配したぞ! 俺の婚約者が……! 事故に遭ったと聞いてな! 駆けつけてきたのだ!」
「そうですわよ! ニュートちゃま! とお~~~っても、心配しましたのよ!」
 ……
 片方はとてもかっちりした服を着て、マントを羽織った男の人だ。髪の毛をしっかり撫でつけている。
 もう片方は可愛い女の子だ。ふわっとしたウェーブのかかった金髪で、ふわりと良い匂いがした。
 けれども……
 誰?
 ニュートの言葉に、二人は目を丸くする。
「そんな! ニュートちゃま。もしかして」
「記憶喪失……なのか!? 事故のせいで?」
 ……
 そうなのかな……
 婚約者だなんて、ニュートには全く覚えがなかった。

 いや、記憶ははっきりしている……ような気がするのだけれども。うーん、いや、でも、どうなんだろうか……。最近、妙な夢を見ていた気がする。
 でもなんか、ええ? そうなんだろうか?
「どちらが婚約者の方なんですか?」という医師の言葉に、二人は、「どっーちも」、と声をそろえてにっこり笑った。ええ……? と困惑するお医者さんと一緒に、ニュートも首を傾げる。
「で、……どっちと結婚する?」
 どちらと言われても……
 誰なのか、分からない。
「なんだと!? くそっ、記憶喪失のせいで……
 記憶喪失のせいなのだろうか?
 残念ながら、記憶が失われているかどうかは記憶が失われている本人にはわからない。
「そうだ、ニュートちゃま。これをご覧になってくださいまし!」
 女の子がぱっとノートを広げる。
「これでね、このお人形遊びで、ニュートちゃまと一緒に、おそろのドレスを着て……
「あっ、抜け駆けはずるいぞ! ゾービナス。思い出せ、ニュート。お前がまだよちよち歩いてた頃、結婚の約束をしただろう!? ほら、棺桶もある……!」
 ええ……
 助けて欲しいな、と思って医者の様子を見ると、なんだか不自然にすやすや寝ている。
 棺桶の中ってなんでだろう。ゆりかごから墓場までってことなんだろうか。
「どうだ。思い出したか?」
 押し込められて怖かったが、やたら寝心地は良かった。
「思い出したか?」
 何を???

「ニュートっ! ニュートったら! ……え、何してるの?」
 病室に飛び込んできたのは、ちゃんと覚えがある幼なじみだった。ニュートは泣きたくなるほど安心した。そして、いや、何をしているんだろう、と、ニュートは自分でも思った。初対面の人に棺桶に押し込められている。
「ニュート。心配したんだよ。とってもとっても、心配したんだよ。ああ、よかった、ケガが大したことなくて」
 ……
 自分が自転車でこけて、デビイが助けようとしたところで……。飛び込んできた幼なじみがバスに轢かれそうになっていた気がしたのだが、気のせいだったのだろう。
 良かった、とニュートは思った。
……? ニュート? この人たちは?」
 知らない、とニュートは答える。
「あ、そうなんだ?」

***

「ちょっと、2世! ゾービナス! って、何してるんですか? 病院では静かにしないと……っ!」
 続いてまた現れたのは、やっぱり知らない人だった。
 自分よりもずっと大きい、がっしりとしたお兄さんだ。
 忘れてしまったんだろうか……
「いやいや、始めまして。ですよ。こんにちは」
 腰をかがめて、ニュートに目線を合わせてくれる。それから気弱そうにへらっと笑った。良かった、話が通じそうな人だ、とニュートはちょっと思った。
「ふんだ。人間のルールなんて知りませんわ」
「そうだ。ウルハム……。俺も従う気はない」
……。あのう、どこまで聞いてます……?」
 婚約者だって聞いたけど、知らない……
 そう言うと、ウルハムと呼ばれた人狼はホンキで気の毒そうな顔をした。
「ええとですね。ニュート様を連れて行かなきゃいけないっていうか……ニュート様のお父様がー、呼んでいるんです」
 父が?
「ニュート、お父さん、いたの?」
 デビイが目を丸くした。
 ニュートの暮らしているのは、ほんとうの家族ではない。ずーっと、ほんとうの両親のことは聞いていなかった。
「うーん。肉親が事故に遭ったって言って、誘拐する例はあるけどさ。事故に遭った方を連れていくのは聞いたことないなあ……
「すっごく詐欺っぽい……ですよね。ええと。その気持ちはすごくわかるんですけど、とりあえず来てもらえないかな、なーんて」
 ニュートはちょっと考えたが、頷くことにした。
「え、いいんですか!?」
「え。行くの、ニュート?」
 うん、とニュートは頷いた。
「だよな!」
「ですわよね!」
 と、両側からがっしり掴まれた。
「ホンキ?」
 怖かったが、両親にはちょっと会いたかったし。
 それに、そう悪い人には見えないし……
……ううん、人には見えないっていうか。なんていうか……あはは」
 デビイはひきつった顔をしている。
「よ、よかったあー! さすがに誘拐とか、ねえ……。僕もいやですし……
 ?
 今なんか、危機アンテナに何かが引っかかった気がする。
 もし断ってたら強引に連れてかれてたんだろうか……
 小脇に抱えられながら、ニュートはちょっと考える。
……ニュート、誘拐されやすすぎない? なんかもう。うん、ぼく、ニュートがしんぱーい」
「あの、ニュート様だけでいいんですけど」
「いいからいいから、気にしないで」
 と、デビイは、当然、ついてくる姿勢を見せたのだった。

 それから、次期魔界王だとか判明するのはまた別の話である。