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頻子
2022-03-11 22:41:09
1996文字
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KODR二次
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花占い(KODR)
スケルナイト→ニュート
お題:「花占いで茎までもぎ取るスケルナイト」
おお、その輝かしい光景を、私は今でも鮮明に思い出すことができますとも!
このお花は貴方に。
勇気ある貴方に。
誰よりも強く、愛おしい貴方に。
そう言って、貴女は、一輪の花を差し出し、そっと私の胸元に挿した。
私は恭しく膝をつき、こう答える。
お気遣いなく、姫様。その花は、貴女にこそふさわしい
――
。
姫様。
その横顔を、今でも私は覚えていますとも。
***
見張り塔には、強い風がふいていた。
そうしている間にも、何度か交替の鐘が鳴り、兵士が何度となく男の横を通り過ぎていく。けれども、影のように立つ男を気に留めるものは誰もいなかった。
見張り塔の一角が、彼の定位置だ。
まるで亡霊のように微動だにしない
――
というのは彼の場合は比喩ではなく、そのままを意味する。スケルナイトは正真正銘のアンデッドだ。
生前は鬼神のごとき強さを誇る武人であり、今もなお、知恵のあるものなら、たとえゴブリンだってその名前を聞くだけで震え上がる。
そんな彼は、いまや魔界王の臣下の一人である。
昼も夜もなく、朝も晩もなく、本質的に食事も睡眠も必要としない亡霊にとって、時間の流れなどはさして意味がないものなのだろう。職務中は、異変さえなければ微動だにしないのが常だ。
けれども、彫像のようにただその場にあった男の眼球が、はじめて動きをみせた。
……
もっとも、ちらりと視線を投げかけて、どこかを見る程度の変化だったが
……
。
風に乗って、かすかな笑い声が聞こえた。
***
ここからは、裏庭がよく見える。
城の裏庭を駆ける影があった。
……
ゾービナスか。ゾービナスがぴょんぴょんとはねていて、誰かに笑いかけている。
ちょうど、生け垣で死角になっているところには
……
私の『姫様』がいる。
……
。
その後ろを悠々とついて行っているのは、たしかデビイという。人間のくせに魔界にいる変わり者だったか。花を千切って、なにか遊んでいるようだ。
しばらく、ゾービナスは姫様をしゃがませて、何かをしていたようだった。それから、はい、と促すと、影から花を挿した姫様が現れた。
姫様。
行ってしまう。
そう思ったところで、デビイが姫様の背中をつついた。姫様がこちらに気がついたようで、姫様はこちらに手を振った。私は、それに、かすかに笑いを浮かべはしたけれど、やはり、ただ前を向いていた。
……
そうすればあの人はここにくると、私は知っている。
……
あのときのように。
しばらくすると、階段を昇る軽やかな足音が聞こえてくる。少し息を弾ませて、あの人が姿を現した。
スケルナイトは、花が好き?
私は答える。
「いいえ、ニュート様。形のあるモノが一番ですよ。すぐになくなるものではなくて、ね」
貴女が後ろ手に持った花に気がつかないフリをして、私は言う。ほら、宝石ですとかね、ドレスとか
……
貴女の表情は、すこし曇った。
ああほら、無神経な男なんです。奴は。
そう、好きじゃあないんですよ。花なんて、金にもならない
……
でも貰うのは気分が良い、なあんて、あの男は、貴女から花を貰って、笑っていたのですよ。
奴が貴女に差し出した花束も、もともとはほかの女から貰ったモノで、それを、それを
――
無邪気な姫様は頬を赤らめて受け取った。どころか、そのなかから、いっとう素晴らしいものを、一輪抜き出して、奴の胸元に飾ってやった
……
。
このお花は貴方に。
勇気ある貴方に。
誰よりも強く、愛おしい貴方に。
その光景を、私は、輪の外から眺めていて、貴女の横顔だけが私の記憶にこびりついている。
そっか、と言って、姫様は踵を返す。お仕事を邪魔してごめんね、と言って、たかたかと駆けていってしまった。
あとを追いかけると、階段にはぽつんと一輪、百合の花が落ちていた。
「
……
お気遣いなく、姫様」
たった。こんなものが。
本当はずっと欲しかった。奴がゴミだと言って捨てたモノは、私が死ぬほど欲しいものだった。
あの人に
……
笑いかけて欲しかった。
こんなものは捨ててしまおうかと思っている。むしり取ってしまいたくなる。
たわむれに花びらを引きちぎる。
(姫様は、私が
……
)
好き、嫌い、好き、嫌い
――
。
こんな子供じみた真似をしなくても、結論はさいしょから決まっているから、慎重に頭の中で数えている
――
だが、ここにあるのは、異形の魔界の花だった。手の平の下、意に添わない結果になることが見えたのを察すると、スケルナイトは、咄嗟にナイフで花を切り落としてしまっていた。
好き、嫌い、好き、嫌い
――
。
(姫様は、私が
……
)
どっちの結果が欲しかったのか、今となっては分からなかった。茎だけをぐしゃりと握りつぶし、スケルナイトはまた目線を遠くにやった。
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