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頻子
2022-01-04 23:32:23
3921文字
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その他こまごました二次
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4すくみ(呪術)
*じゅじゅつ
*現パロ
*九相図+引き取られたての悠仁(脹+虎)
*ハッピーぜんぶ馬鹿
「あ、やべ」
ぶるぶると震えるスマートフォンのバイブレーションで、虎杖悠仁は目を覚ます。電車のアナウンスが響いている。上着のポケットに手を入れると、ひんやりとした鍵が冷たい温度を伝えてくる。
ぼーっとしていたら、一駅乗り過ごしてしまったらしい。メッセージを確認すると、兄
――
兄と言ってしまって、ほんとうに良いものか
――
脹相からのものだった。
『今日は何時頃になる?』
(当然のように帰ってくる前提なのね
……
)
悠仁は少し返信に迷う。
悠仁に両親はいなかった。しばらくは祖父と暮らしていたのだが、祖父亡きあとは、天涯孤独の身になるはずだった。
……
というタイミングで、不意に兄を名乗る人物が現れ、悠仁を引き取ると言い出したのだった。
そのあたりのごちゃごちゃした事情は、悠仁はあまり詳しくはない。あまり語りたそうには思えなかったし、何を言っても、ぴしゃりと「兄である」ということで両断されてきたのだった。
(変わってるねぇ、兄ちゃん達もさ)
じぶんは少なくとももう高校生だ。自分を可哀想に思う道理もないだろうに、親切というよりも律儀だとか、物好きだなあと思っている。
手続きやらなにやらで忙殺された日々は、一ヶ月ほどでようやく落ち着きをみせていたものの、ふわふわとしていて、まだ現実感がない。悲しくないわけではなかったが、悲しいとして、だからといってとるべき態度がない。
窓から流れていく景色は、故郷とは違う高いビルがひしめいていた。新幹線にでも乗って、このまま家に帰れば、また元通りの日常が続く気がする。
ポケットに手を突っ込んで、指先で鍵のぎざぎざとしたフチをなぞる。またスマートフォンがふるえた。
(今日は伏黒の家にでも泊めて貰おうかな。でも姉ちゃんいるから迷惑か?)
さて、メッセージにはなんと返したモノだろうか。迷っているうちにもう一つメッセージが来た。
『今日は大事な話がある。できるだけ早く帰ってきなさい』
そっか。大事な話か。
悠仁はまだ慣れない帰路についた。そりゃあ、あるよなあ、大事な話。
手続きとか、ややこしいことはほとんど上の兄、脹相と壊相がやってくれた。当事者なんだから俺も動かなきゃダメだろ、と動こうとすると血塗が袖を引いてきて、「ゲームでもやろうぜ」なんて言ってくれたりしたので、言葉に甘えていた。
「今日からここがオマエの家だ」ということで、一緒に過ごしてはみたものの、やっぱり、どこからどこまで世話になるのか、きっちりしておいたほうがいいだろう。
学費とか、あと生活費とか
――
バイトでもしてカネを入れた方がいいのか?
今は貸して貰うにしても、卒業して働くようになったら少しずつ返していくだとか
……
。
小腹が空いたついで、コンビニで血塗の好きな菓子を買って、でもこれもなんか点数稼ぎみたいだな、と冷めたコトを思った。
(いやいや、何考えてんだ。俺らしくねぇぞっと)
世話になっている分、なにか返したい。それだけ。
棚の前で迷っていると、後ろからぬっと影が差した。
「どうした。悠仁。買わないのか?」
「あれ、脹相さん」
名前を呼ぶと、脹相と呼ばれた男の眉間がひくついた。
(この人がいちばんわかんねーんだよな
……
)
まず、感情が読みづらい。無表情に近い表情からは、喜怒哀楽が読み取りづらい。黙っているとかなり圧があるが、それが別に不機嫌を意味しないということに気がついたのはごく最近のことだった。が、今は不機嫌にみえる。ただ、それをぶつけることはないのだが。
「どったの?」
「見かけたからな。腹が減っているのか。飯は足りていないか?」
「いや、そういうんじゃねーけど。手土産」
「
……
オマエはいちいち家に帰るのに手土産を持っていくのか?」
げ。いらん地雷踏んだ。いっそう強まった圧に、悠仁は話題を逸らすことにした。
「あのさあ、
……
みんな、どれ好きかなあって。あ、血塗はわかるんよ。だいたいな? でも壊相さんとアンタのがまだイマイチ
……
」
この返答はまあまあイケてるんじゃないか?
……
と思ったが、またしても不正解だったようだ。
脹相はふーっと深いため息をついた。そしてカゴを奪うと、あっという間に会計をしてしまった。
「あ、出すって」
「いい。これもお兄ちゃんの務めだ」
自分の分はレジ横のホットの缶コーヒーだけだったから、気を遣っているに違いない。
「あー、
……
どもっす」
あいかわらず表情の読めない顔で、どちらかといえば不機嫌な顔で、脹相は振り返る。
「これも『お兄ちゃん』の務めだ」
「なんで二回ゆったの???」
***
「おかえり、悠仁!」
と、血塗が突進してくる。
帰って来るなりクラッカーを浴びた悠仁は固まった。
「え? 何? うわ、何。良い匂いするけど!?」
と、エプロン姿の壊相が出てきた。
「悠仁が来てから一月になりますからね。お祝いです」
「嬉しいけど、いやー、記念日の刻み方エグくないスか」
ちらりと脹相のほうを盗み見てみると、すっかり機嫌を直したようで、大きく頷いていた。分かりづらいが、この表情だけは分かる。「どうだ、うちの弟たちは」という表情、らしい。
「この菓子は悠仁からだ」
「やぁーったあ! ありがとな! 悠仁」
脹相がずい、とコンビニの袋を差し出せば、血塗が嬉しそうに跳ねる。
「ウッス! いや、脹相さんのおごりなんですけど」
「選んだのは悠仁だ」
「ほら、ここ悠仁の席だぞ。手ぇ洗ったらすーわれっ!」
椅子を引かれるままに座る。大皿に並んだ料理で、テーブルはいっぱいになっている。カゴに並んだバゲットと、それからサラダだ。パスタは帰りにゆであがるように調整してくれていたらしく、できたてのモノがフライパンから移された。
「悠仁。改めて俺たちの弟として歓迎しよう」
「あ、アザッス」
「ひゅー! 照れてるなぁ!」
「いいんですよ。悠仁のペースでね」
(あ、やべ、チョット泣きそう)
「それでは、食事しながらではあるが、改めて家族会議を執り行うぞ」
(あ、だいじな話って別にあったんだ)
悠仁はベーコンのパスタを頬張りながら、慌てて姿勢を正す。
「壊相」
壊相は頷き、冷蔵庫から大きめのホワイトボードを脹相に手渡した。
「俺たち三兄弟にも、親と呼べる親はいないと思っている。
たった三人の家族だ。
壊相は血塗のために、血塗は俺のために、俺は壊相のために生きる。
俺たちはそう決めて、身を寄せ合って生きてきた
……
」
「ああ」
「そうですね、兄さん」
「というわけで、今日の家族会議は、悠仁。オマエをこの図のどこに加えたものかだ」
「は?」
壊相→血塗→お兄ちゃん→
ぽかんとする悠仁を置いてきぼりにして、ホワイトボードになかなかの達筆が踊った。お兄ちゃんという部分には二重で下線が引かれている。
「ふむ。単純に加えるなら
……
」
壊相→血塗→お兄ちゃん→悠仁→
「となるのだが、これには問題点がある。悠仁、わかるな?」
「
……
会ったばっかりの人間がさも当然のように輪に入ってるトコすかね」
「0点だ悠仁。兄弟であれば兄弟の為に生きるのは当然のことだ」
「あのー?」
「ハイハイ!! ハイ!!」
「よし、血塗。言ってみろ」
「俺わかったもんねぇ。兄者、これだと俺が悠仁と矢印をつなげないんだぞぉ」
「さすがは俺の弟だな。そういうことだ」
「そういうことなの???」
「そうですよね。私も前から思っていました。3兄弟のうちはそれぞれが相互に関与していました。しかし4人となると
……
これは、ゆゆしき問題です」
「どうするべきか
……
」
「え、もしかしてだいじな話ってそれ?」
「ほかに議論すべきことがあるか?」
「え? 俺の生活費とか
……
」
「あ? お金のことはお兄ちゃんに任せなさい。はいおしまい。本題に戻るぞ」
「本題?」
「悠仁。今、兄さんは真面目な話をしているんですよ」
「
……
」
三秒考えて、気がついた。
「あれえ!? もしかしてみんなおかしい?」
一番まとも(そうにみえた)壊相からしてこれなのだ。
「兄弟を尊重し合うことは、決して恥ずかしいことではないぞ」
「いや、判定バグってない?」
「兄さん。こうはどうでしょう。私は血塗と兄さんのために生きて、血塗は兄さんと悠仁のために生きる。兄さんは悠仁と私のために生きる」
「なるほど。それならいっそ俺が血塗のために生きるかつ壊相のために生きるかつ悠仁のために
……
」
「
……
ややこしいわっ! びしっ!」
「兄さん! 見ましたか。悠仁が。あれほど遠慮がちだった悠仁がツッコミをしましたよ」
「ああ。ナイスツッコミだ。さすがは俺の弟だな」
「どーも。って、ええ? 泣いてんの?」
ポーカーフェイスに見えた長兄が、感動して涙すら浮かべていた。
「それでは私は血塗のために生きるかつ悠仁のために生きるかつ兄さんのために」
「ああ、だめだぁ。俺もう頭が限界だぁ! 兄者」
「血塗! しっかりなさい」
「血塗には難しすぎるようだな。
……
わかった」
コホンと咳払いをして、脹相がペンを手に取った。
お兄ちゃん→弟たち 弟たち→お兄ちゃん
「これならば、どうだろうか。どうだろうか? どうだろうか悠仁」
「なんかもう、ハイ。好きにしてクダサイ」
色々回していた気がゆるゆる抜けて、どうでもよくなってしまった。
ある日突然、3人の兄ができたとしよう。
そして彼らは
……
当たり前のように新しい兄弟が大好きなのだった。
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