頻子
2021-05-10 02:59:56
3069文字
Public TOH二次
 

密室事件

俺夢探偵用HANOIのSANチェックです
一応T1後で、
施設長とナナシさんがデキている匂わせがあります!
ジョルジュさんがローランドさんと仲良しかもしれない。

……探偵用HANOI。
コーラル・ブラウン……HANOI保護施設の施設長。ボンヤリした顔をしている。
ナナシ(雑務用HANOI)……コーラルのHANOI。おっかない。
ジョルジュ(調理用HANOI)……ロッジの調理用HANOI。亡きオーナーのロッジを継いでいる。
ローランド(軍事用HANOI)……休暇中の軍事用HANOI。
被害者A……HANOI差別主義者の記者。二階から落下(事故)。一応死んでいない。

「oh mon dieu……誰か……! 誰か……来てくれ……
「敵襲かーーーーーーっ!?」
 ジョルジュのか細い悲鳴が部屋に響き渡って数秒後。
 駆けつけたローランドの声が、ロッジ全体を揺らした。
 降り積もった窓の外。
 そこには、真っ白な雪に一人分だけの足跡をつけ、雪の中に埋もれている被害者の姿があった。

 密室である。

「大丈夫か、ジョルジュ」
……merci……ローランド。大丈夫だ。……私は……私を保てる」
 今にも気を失わんばかりのジョルジュを、ローランドが支えた。
 無理もない。殺人事件が起こったのだから――
「えっ、亡くなったの!?」
「いえ、残念ながら、生きております! サー! ……残念ながら!」
 ローランドは忌々しげに男を蹴っ飛ばした。
……同じHANOIとして、ローランドの気持ちは分かる。
 倒れてる男は、HANOIたちにとってあまり良い男ではなかった。
――典型的なHANOI差別主義者。
 首から下げたカメラは、商売道具だろう。おそらくは、ネタをゆすりにきたのだ。

「ふむ……
 男は、なにか恐ろしいものでも見たかのような顔をしていた。意識は戻っていたが、うわごとのようにぶつぶつと何かを繰り返している。一見して覗きでもやらかそうとして壁をよじ登り、足を滑らせて気絶したように見える。
 しかし……、ほんとうにそれでいいのだろうか?
 吹雪に閉ざされた雪山。ロッジ。探偵用HANOI。
 これだけ揃えば、つまり犯人はこの中にいるというわけである。
 探偵用HANOIである俺は、ぷかぷかとパイプをふかしながら、ロッジの客を見渡した。
 俺は犯人の目星をつけていた。少なくとも有力な容疑者を。
――コーラル・ブラウンは何か知っている。
「ひょえ!? ぼ、僕!?」
 予測の通り、コーラル・ブラウンはわたわたと慌て出す。これが演技なら、かなり手強い相手だろう。
 人の良さそうな顔をしているが、俺は騙されない。
「人が死んでいる……」という話になったとき、「また……!?」と言ったのだ。
 またって。人生で殺人事件に遭遇する機会があるとは思えない。それに、いい年をして「ひょえ!?」はさすがにわざとらしすぎる。
「なっ……コーラルが犯人だと!?!?!?」
 軍事用が叫んだせいで、ロッジの外で雪崩が起きた音がした。
 それはさておき。
 施設長の隣の雑務用HANOIは一切顔色を変えていない。どころか、早く終わらねぇかな、という様子でチラリと柱時計を見た。
 被害者の腕時計が、20時で止まっていた。
 昨晩20時頃、一体何をしていたのか。俺はコーラル・ブラウンに詰め寄った。
「え、ええーと……部屋にいました……
「確かです」雑務用HANOIが請け負った。「この人が部屋にいたというのは正しいですよ。俺もいましたからね」
 いや、二人は別々の部屋をとっていたはずではないだろうか?
「仕事の打ち合わせをしてるうちにずいぶん遅くなりまして。朝まで一緒にいました」
 この証言はおかしい、と俺はピンときた。
 二人の部屋はシングル。つまりベッドは一つしかない。
 やはりコーラル・ブラウンにつきまとう黒い噂――HANOIに給料を与えずにこき使っているという噂はほんとうだったのだ。
「いや? 寝ましたけど」
 探偵の明晰な頭脳は致命的なエラーを吐き、俺の意識はシャットダウンされた。

***

……ていさん、探偵さん!」
 俺は目を覚ました。
 ソファーに横たわり、施設長に手当てされていた。はずみでうちつけたおでこにガーゼを貼られている。
 よく覚えていないが、情報の洪水を浴びた俺は知恵熱を出してしまったらしい。
「よかった! 二人目になっちゃうかと思ったよ」
 何か核心めいたものをつかみかけた気がしたが、気のせいだろう。

 被害者は人間なのだ。HANOIは人間に危害を加えることはできない。
 つまり、軍事用か、施設長かの二択だった。
「俺なら仕留めてます!」
 軍事用が胸を張って答える。
 それもそうか、と納得した空気が流れる。となると……
 もう一度状況を整理しよう。施設長と雑務用がずっと一緒にいたと言っても、流石に離れた時間はあるはずだ。
「確かにあった気がするけど、いちいち覚えては……
「そうですね。タイミングは3回ほどありました」
「な、ナナシ君。覚えてるの……?」
「昨日の18時頃から風呂で30分。これは犯行時刻関係ないからいいですね?
それから22時30分。施設長がお手洗いに。そっから、俺がお茶を淹れるために、23時20分頃に、10分程度俺が席を外しましたね。ジョルジュが証言してくれると思います」
 雑務用は手帳をぱらぱらとめくってそれらしいことを述べた。
 いちいち書いてるの? なんで?
 それとなく覗き込んでみると、ページは白紙である。暗記してるの?
 俺はまた考えるのをやめた。
「ああ。まばゆい真実だ。それで間違いはない……
 ジョルジュも、アリバイに異存はないようだ。
 改めて何か知らないか、と尋ねると、ローランドが目をそらす。探偵用HANOIの洞察力はそれを見逃さなかった。
……い、いや、大したことでは……
 ためらいつつも、促されて口を開いた。
「俺は、昨晩……コーラルと被害者が口論していたのを……
 新しい証言だった。
「ええ!? そんな、僕は……そ、それは……その。うちのナナシ君のことを悪く言われたから……
「十分な動機ですよね? どうします施設長」
 あれ、雑務用HANOIが援護射撃に加わっている……
「ど、どうしようって言っても」
「そうですね。こういうのはどうですか? 施設長のことは俺が見張ります。一部屋借りて引きこもってたらいいでしょ?」
 あれ?
 先に言われた感はあったが、皆の安全のために、これ以上の犠牲者を出さないように務めるのが探偵用HANOIの役割だった。……容疑者候補から言われているのが、なんとも不気味なのだが。
「身内と一緒に閉じ込めておいても意味がないのでは?」
「じゃあ鍵でもかけておけば? マスターキーを持ってますよね。幸い、生活に必要な設備は客室に備わってますからね。っと……電話だ。はい。救助は明日になりそうですね。どうします?」
「ナナシ君がいうなら、まあ……
「すまない。……気を付けろ……
「わかった!! 俺はジョルジュを警護する。死ぬなよ!」

 目の前でばたんと扉が閉まった。
 鍵は探偵さんが、と、鍵を手渡された。

 何か致命的な見逃しをしている。
 そんな予感がしてならなかった。

 倒れた男の体を探る。
 カメラのフィルムがないことに気が付いた。
 パチパチと、フィルムが暖炉で燃えている。

 いいのか?
 俺は今、探偵用HANOIとしてかなり致命的なミスをしたのではないか?
 解決不能な密室を作ってしまったのではないか?