頻子
2018-12-07 20:55:18
2175文字
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メギド一周年おめでとう

可愛さ検定合宿を受けるアスタロト(※未所持)。
1週年記念の怪文書です。
インキュバス小学生ネタを含みます。

「ふむ、キューティーヴァイオレンスか。悪くはないが、残念ながら5人までと決まっていてな。増員の予定はしばらくないんだ」
「な、なんで!?」
 キューティーヴァイオレンスを志願したアタシに、グレモリーはそっけなく言った。自信満々に履歴書を持ってきたアタシは、予想外の展開に面食らった。
 アジトの安い椅子と机なのに、グレモリーが優雅にカップから紅茶を飲む仕草はずいぶんと様になっている。呆然自失になりながら、まじまじとグレモリーの足を見ていたアタシは、慌てて本来の目的を思い出した。
「アタシ! 暴力できるヨ~? 得意だヨー?」
「勿論分かっている。実力は申し分ない。単に今はメンバーを募集していないだけだ」
「でもさ!」
 アタシがなおも言葉を重ねようとしたところで、突如として激しく本棚が倒れた。続けて、殴打の音が響いた。
 結構な音だったが、グレモリーは眉をひそめただけだった。
「あっちゃー……
 どうやら、ヌリが本棚をひっくり返したらしい。フリアエが容赦なく蹴りを入れる。
「ああっ、すみません! 大切な書類を汚してしまうなんてこの私めとしたことが! すみませんフリアエ様! すみません!」
「ふむ。座り心地の座り心地の悪い椅子だな」
「すみません、ありがとうございます!」
「と、いうわけだ」
 グレモリーはアタシに向き直る。
 どういうわけなのかはさっぱり分からなかったが、アタシは感情だけで理解してぐっと唇を噛んだ。
 アタシには、暴力が足りていない。言葉の代わりにポンと出る、流れるような暴力が。
(キューティーヴァイオレンスに入って、ソロモンに喜んでもらおうと思ったのにナ~)
「まあ、そう気落ちするな。……方向性を変えて、こういうのはどうだ?」
「おお? 何々?」
 グレモリーが差し出してきたのは、一枚のチラシだ。アタシは眼鏡を持ち上げてみる。
「ヴァ、ヴァイガルド王都公認……? 可愛さ検定? 修士号?」
 これだ!
 目を疑うような文字列だったが、アタシはアタシの直感を疑わなかった。
「これだよ……! これ!」

***

「可愛さ、可愛さ……
 可愛さ検定の会場は、ずいぶんとヴィータの里から離れた場所にあった。馬車ひとつ通らない山の上ってなんなの?
 どちらかといえばインドアな研究者であるアタシは、会場にたどり着いただけでへとへとだ。
「よう、アスタロトも来てたのか」
 試験会場はこちら、と書かれた看板の前で、アタシは意外なメギドと出くわした。サレオスだ。
「アレー? サレオス? なんで?」
「いや、実のところ、さっぱり分からないが」
「っていうか、キミ星1の衣装じゃない? やるきなさすぎじゃない?」
「あはは、やっぱり一番これが動きやすくてさ」
「星6で浮いてなかったっけ?」
「浮くのも結構疲れるんだぜー」
 たまに本気なのか冗談なのか判断がつかない。
 アタシはといえば、気合を入れて最終形態でやってきていた。貴重なエンブリオをソロモンからもらうのが嬉しくて嬉しくて仕方なくて、この姿はアタシの自慢だったから、衣装チェンジはいまのところする気はないのだ。
「噂によると、合格するのは結構きびしいらしいぜ」
「え、そうなの?」
「ああ。まあ、よくわからんけど」
 そう言うと、サレオスは一足早く会場へと入っていった。会場からはぐったりとうなだれたメフィストとインキュバス、そしてカスピエルが出てきていた。
(あれ、意外と知った顔がいるヨ)
「くそっ、あそこで6が出れば……なんでテメーが合格なんだ」
「審査員が女だったからだ」
「アホやな-」
 どうやら、彼らも可愛さ検定を受けに来たらしい。
「こんなんインチキもいいところだぜ。帰るぞ」
 すれ違いざま、インキュバスはシャックスみたいなヒヨコの絵のついた合格証をちらりとアタシに見せて不敵にフ、と笑った。片手をあげて去っていく。
「そもそも、可愛さ検定小卒ってなんや?」
「知るかよ」
「おい、もっと上の受けなくていいのか?」
「審査員が男だった。興味ないな」
(ま、負けてられない……!)
 アタシは一人闘志を燃やしていた。

 控室の鏡の前で、にこっと笑ってみる。口角をあげてにんまり。ポーズを決めたり、上目遣いをしてみたりする。
 くるりと一回転。イケてないわけじゃないと思うけど、どれもしっくりとこない。部屋の隅にミミちゃんのオーブがあったので、持ち上げてみた。でも、違う。
「あーもう! 可愛さって何!?」
 ミミちゃんも、ピヨピヨも、たしかに”可愛い”。でもそれは、アタシの可愛さじゃないのだ。
「なんか苦労してるな」
「キミはいいよねえ。なんていうか、自然体でそういうキャラだもんね」
「あれとか。戦闘終了の後のポーズとかさ……狙ってるんデショ?」
「はは」
「あー、もう!!!」
 アタシは、手持無沙汰に改造していた手回し発電機をじゃんじゃん回す。この動きは、二の腕に大変良い。
「まあ、無理することないさ。そのままの自分でいいんじゃないか?」
 サレオスの頭がピカリとまばゆく輝いた。
……! これだ……!」
「え?」
 ミラーボール。これしかない。アタシは思い付きを形にするために、猛烈な勢いで頭の中に設計図を描き始めた。