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頻子
2018-03-19 22:41:38
3023文字
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カスピエルさん、アーバインさんに友達紹介しなよ
アーバインさん生きてるifでカスピッピ友達紹介しなよ!!!
アーバインさん良い男だよな。知らんけど。
引ける気がしないので3馬鹿を書くなら今しかないんだ……。たぶん違う気がするけどまだ実装されてないから許してくれ……。インキュバスさん分からん……。
「お前、ええ目をするようになったやないか」
アーバインがひねりのない誉め言葉を口にするのは珍しい。初めてと言ってもいいくらいだ。不意を突かれたカスピエルは、思わず「ありがとうございます
……
」と言ってしまってから、つまらない返事をしたと思った。
もっと「冗談でも嬉しいです~」とか「いやいや俺なんてまだまだです」とか言っておくべきだったかもしれない。
いや。
(アーバインさんが相手じゃ、通じないやろ)
右手にあったグラスをあおった。きついアルコールが脳みそを揺らす。思わず頬が緩んだのも、これでちょっとはごまかせただろうか。
アーバインはふうと葉巻の白煙を吐いた。カスピエルは、葉巻というものが好きではないが、アーバインの吸っているものだけは別だ。古びた本に挟まったフルーツのような不思議な香りがする。それになにより、葉巻をくゆらせる様子がほんとうに様になっているのだ。
……
憧れて真似してみたことはあったが、咳きこんで呆れられておしまいだったが。
「おい、カスピエル、こっち注げよ」
「はいはい~」
呼ばれたらすぐ動かねばならないのが下っ端のつらいところである。立ち上がると、アーバインの隣の席は瞬く間に埋まる。おい、図々しい、そこは俺の席やぞ、と心の中で悪態をつきつつも、口に出せるわけもない。
それでも名残惜しくアーバインの隣を振り返ると、ゆらゆらと煙が横切っていった。サッと出せる時に出せるとウケが良いので煙草を持ってはいるが、やはり、煙草とか葉巻とかいったものは好きではないのだ。この、灰色がかった煙以外は。
(あー、しんどいわー)
人を持ち上げおだててなだめすかし、酒が足りなくなるとみるや注ぎ、聞きたくもない武勇伝にうんうん頷き、ようやく人心地ついた。席に酔っぱらって突っ伏した上司を介抱するふりをしてどかし、ちらりとアーバインの顔色をうかがう。座ってもええですか、と聞く前に図々しく座れば、断られもしないと最近学んだ。
「失礼しますー」
昔に比べれば、ずいぶん図太くなったものだ。気苦労は増えたが、最近は上からの覚えもめでたく、暴力を受けることもない。
どれもこれもなにもかもアーバインのアドバイスのおかげだ。
アーバインは黙って酒瓶を傾け、カスピエルのグラスに注いだ。
「わ、悪いですわ~」
「お前と飲むのもこれが最後かもしれんからな」
「あはは
……
アーバインさん、冗談きついわ」
「冗談やない」
カスピエルは笑ってはみたものの、心の中では仰天していた。
「どうしたんです?」
「ちょっと厄介ごとに巻き込まれてな。しばらく戻ってこれへんのや。まあ、出発もすぐってわけではないで」
あまりにあっさり、普通のことみたいに話すせいで、かえって取り返しのつかない実感があった。
「いつなん?」
「再来週や」
「すぐですやん
……
」
俺も、と言いかけたところでアーバインが遮った。
「つまらんこと言ってがっかりさせんなや、カスピエル。褒めたやろ。あれが最初で最後やぞ」
あはは、と笑って思わずうつむいた。
別れはこうも唐突にやってくるのか。世間にはいなくなってもどうでもいいやつがごまんといるのに、いなくなってほしくない存在ばかりいなくなる。
急にさみしくなった。
話しかけようとしてなにも浮かばなかった。再来週。再来週。下手をしたら、もう二度と会えない。おべんちゃらがいくつも浮かんだが、最後になるかもしれない会話はそんなものじゃないほうが良かった。
また別の重役が来て、アーバインと話し込む姿勢を見せる。
なんとか口実はないか。何か。ぐるぐると頭を巡らせていると、ふと思いついたことがある。
「アーバインさん。時間があったら、会ってほしい奴らがおんねんけど
……
」
***
「なんや、お前も隅におけへんな
……
女と付き合うのに俺の許可なんていらんやろ」
「違いますて。間違ってもそんなかわいいもんやあらへん」
ちらちらと時計を見る。まだ待ち合わせ時間ではない。絶対来いと念押しはしておいたが、果たして約束通りに来るだろうか。
いや、片方に限っては、タダ酒が飲めると聞いたら絶対に来る。
(もう片方はどうやろな。きれいな姉ちゃんおらんからな
……
)
しばらくやきもきしていたが、無事に二人の姿が見えた。見るからにうきうきしたメフィストフェレスと、気だるげに壁に寄りかかるインキュバスだ。
「お、いたいた。おーい」
「来たな
……
。アーバインってこいつか?」
「気易く呼ぶなや。『アーバインさん』や」
「どのアーバインさんか俺たち知らねえし」
「なんや、仕事仲間言うてたんは
……
ダチか」
「まあ、そうだな」
「腐れ縁だがな
……
」
「あんなぁ
……
」
あまりにあっさり肯定されたので、カスピエルは多少拍子抜けした。
「オイ、おごりだっつーのはマジなんだろうな。俺、今日財布持ってきてねえぞ」
「オレもだ」
「インキュバスはいつものことやろ」
***
「どうだよ!? ストレート!」
メフィストが机上にカードを投げ出す。
「見事なもんやな
……
」
「へへっ、アーバイン『さん』もなかなかやるじゃねぇかよ」
「アーバインさん、相手にすることあらへんて。メフィストのは
……
」
言いかけてやめた。自分が気が付いたことだ。アーバインならとっくに気が付いているだろう。とやかく言うのは野暮ってものだ。
インキュバスは我関せずと酒を飲んでいるが、たまにメフィストのグラスに酒を注いでいる。
(それアルコール70とか書いてへん?)
と思いつつ、面白いのでそのままにしておく。
「お、悪ぃな。へへっ、よし、もう一勝負いくか」
メフィストはもうすっかり酔っぱらっていた。カードを表向きにめくって持っている。顔が真っ赤で呂律も回っていない。だんだんと動きがゆっくりになっていき、次第に突っ伏して寝てしまった。
「ぐう
……
」
「見事に寝たな」
インキュバスは満足そうに見下ろしていた。
「お前のダチ、いい度胸してるで
……
」
ポケットからトランプがぽろぽろ崩れ落ちる。クラブのエースが2枚。同じカードが2枚だ。
「ははは
……
」
「アーバインさん、最後やいうのにほんますみません」
「すみませんって顔やないな」
そう言われて初めて、カスピエルは自分でもそういう顔をしていることに気が付いた。
「楽しかったです?」
「ぼちぼちだ。で、お前は何がしたかったんや? とどのつまり自慢か?」
「自慢
……
。そうやな。自慢したかったんやな。俺、アーバインさんみたいになりたい思て
……
でもそれじゃぜんぜん足りないんやけど、なんていうたらいいのか
……
」
「お前、もう酔ってるやろ」
「
……
ああ、上手く言えへん
……
最後だっていうのに
……
アーバインさん、いままで、ありがとうございました
……
」
アーバインに向かって、カスピエルは深々と頭を下げた。じっとして、相手の姿が見えなくなるまで上げない。
「さすがにそこまでやるとオレも引く」
「余計なお世話や」
(足音がせえへんけど、さすがにもう行ってしもたよなあ)
ずいぶんしばらくして頭を持ち上げると、アーバインはまだそこにいた。頭を上げた拍子に、アーバインの手の平が頭にポンとぶつかる。
「達者でな」
ツンと鼻の奥が痛くなったので、やはり顔を上げることはできなかった。
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