頻子
2018-03-17 22:57:58
3363文字
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物々交換

メギド72 メインストーリーキャラほのぼの
即興小説で書いた奴を手直ししたよ!
隙あらばモラクス君に肉を詰め込みたいと思っている

「おっ、ラッキー」
 幻獣を倒し、さて一息……といったところで、ソロモンは木の陰に小さなキノコを見つけた。いいのか悪いのかわからないが、素材を見つけるや否や懐にしまい込むのも、もはや習慣となっていた。手を伸ばして丁寧に泥をはらい、ポケットにしまい込む。
 そしてそれから、幻獣の後始末やら、ケガをした一般人の手当てやら、やることに追われ、キノコのことなどすっかり忘れて、アジトに戻ってきたところだった。
 シャックスがうろうろとソロモンの周りをうろつく。
「モンモン、モンモン、なんかいいもの持ってない?」
「? ああ……そういえば持ってたな」
 シャックスはきらきらとしながら何かを待っている。”贈り物ちょうだいオーラ”だ。メギドたちとの付き合いが長くなるうちに、だいぶ読み取れるようになってきた。
 シャックスはまだ分かりやすいほうだが、最近はウェパルやガープといったやや気難しいメギド達が何かそわそわしているのもわかるようになってきた。
 最初はなかなか気が付けず、別の仲間にそれとなく促されることも多かったものである。今では何が欲しいか、仲間たちの好みも大体把握している。
(俺も成長したってことだな)
 ポケットからキノコを取り出すと、シャックスはぴょんぴょんと跳ね始めた。
「やった~やった~、ありがとありがと!」
「見つけたものだけど、そんなに喜んでもらえると嬉しいな」
「これ、すっごい高いキノコなんだな~」
「えっ、そんなにいいやつなのか?」
 シャックス曰く、このキノコはめったにお目にかかれない珍品なのだとか。慣れた狩人が一日中探し回って、ようやく1つ見つかればよい方、だという。
「へえ……
 こんな地味なキノコが、と思うと同時に、シャックスの知識に驚きもする。こう見えて、なかなかいろいろなことを知っている。
「返してほしい? ほしい?」
「ぐっ……いや、あげたものだし」
 正直惜しくないわけではないが、撤回するほどでもない。
「感心感心! んじゃ代わりにこれあげる~」
 シャックスが代わりに取り出したのは、なんだかちんまりとした葉っぱである。
「ん、葉っぱ? 気持ちは嬉しいけど……
「見かけで判断しちゃダメダメ! これもハーブだよ!」
「もしかしてすっごくいいやつなのか?」
「ううん! 割とどこにでも生えてるよ~! 腰痛肩こりによく効くんだな~これが」
「あ、そうなのか」
 いらなくなったものを押し付けてるだけじゃないのか?
 それはそれとして、ありがたくもらっておくことにする。

 受け取ったハーブをポケットにしまい込み、夕飯まで外をぶらつくことにしていると、宿から出ていくバルバトスを見かけた。
「バルバドス、どこかに行くのか?」
「ああ、ちょっと薬草を探していてね」
「薬草? どこかケガでもしたのか?」
「いや、俺じゃない。宿の主人が腰を抜かしちゃって、その手当に必要なのさ。別に珍しいものではないらしいんだけど、今、ちょうど切らしてしまっているらしい。腰痛肩こりに効くとかなんとか」
 つい最近聞いたフレーズだ。
「もしかして……これか?」
「! それだ。どうしたんだ?」
「いや、偶然シャックスからもらっちゃってさ」
「ありがたいな。すぐに渡してこよう」

 宿の主人は何度も頭を下げ、お礼にと、二人に大量の肉をよこした。
「なんだか、ただのはっぱで貰っちゃうのは悪いなあ……
「狩りで余っちゃったらしいから、遠慮なくもらっておいたらいいんじゃないか? まあ、もっと欲しがる人がいる気がするけど。ほら」
「たっだいまー」
 ちょうど泥まみれのモラクスが宿の扉をくぐった。ガープも一緒だ。二人はなぜか、大量の野菜を抱えている。
「どうしたんだ、それ?」
「村で畑を手伝ってたらもらってさ」
「俺はいらんといったが、ヴィータどもに押し付けられた」
(それでも受け取るあたり人が良いよなあ)
「俺は肉の方がいいんだけどよ……
 ちょうど食べ盛りの赤毛の少年、といった年頃だ。モラクスにとっては野菜より肉の方が嬉しいのだろう。
「交換するか?」
「え、なに……肉!?」

「うーん、面白いほど交換が進むな……
 いつの間にか大量の野菜が手元にある。
 肉から野菜になったことを考えると、順調にランクアップ……しているわけではないが。(幻獣の被害による)ここのところの野菜の高騰を考えると得しているのかもしれない。
 最初が拾い物だと考えると、十分な成果だろう。
「なんだか、ヴィータの間にそんな逸話があった気がするね」
 バルバドスが面白そうに野菜を眺めている。
「最初はワラ一本。それが、物々交換をしていくにつれて価値のあるものになっていって……最後には大金持ちになるんだ、たしか」
「大金持ちか」
 野菜からでは金持ちへの道は遠そうではあるが、皆を喜ばせるのは悪くない。
「せっかくだから、どこまでいけるかやってみるか」


 探してみれば幻獣のこと以外にも、困っている人は結構いるものである。
 道中、飼っているヤギ飼いに出くわし、持っていたニンジンを渡すと、お礼にと塩を貰った。どうやらヤギが舐めるためのものらしい。
(塩か……
「必要なものではあるけど、いざ、何に使うかというと難しいね」
「ん、なにやってんだ」
 首をひねっていると、ちょうどブネと出くわした。
「ところでお前さんら、何か持ってないか?」
「何かって言ってもなあ、今は塩くらいかな」
「おお、ちょうどいいな。つまみが欲しかったんだ」
「え、塩で飲むの?」
「十分だろ。なんなら少し持っていくか?」
「ええっ」
「冗談だ。これでももってけ」
 ブネが押し付けてきたのは、どうやら水の瓶である。

「ウェパル?」
……
「あの……
 井戸の側。ウェパルはぼーっと宿の側の木の椅子に腰かけ、桶に張られた水の水面の揺れを見ている。近づいても、こちらを一瞥しただけで、また桶に視線を戻す。
「何か用?」
「あの、なんか交換しないか?」
「交換? なんで? イヤよ、めんどくさい……
「だよなあ……
 それでもいいか、としばらく黙っていると、ウェパルが不意に口を開いた。
「水……
「ん?」
「ここの水、上等な水みたいね」
「水が?」
 ソロモンもじっと水面を見てみる。キラキラと輝く波間を見てようやくピンときた。
(ああ、そうか。ここはフォトンが豊富なのか)

「今日も良いことをしてしまいましたね。正義ですよ、正義」
 マルコシアスが晴れやかな声を出す。
 行き倒れていた旅人に水を押し付け、それでおしまいだ。ちょっと期待しなくはなかったが、別に「実はお金持ちで、お礼に大量のゴールドを!」なんてことはなく。普通にお礼を言われて、普通に終わってしまった。謎の香辛料を貰ったが、それだけだ。
「これは何に使えばいいか、分からないな」
「まあ、これだけ人助けをしたんだから、上出来ってものさ」
 バルバトスがのんびり言う。
「まあ、そうだな」
 最後には手元には何も残らなかった。けれど、どことなくさわやかな気分だ。
「良い気分ですね。……お腹が空きました」
 マルコシアスが、青空に向かってぐいと背を伸ばした。

***
「なんだ、みんな結局……
「こうなるんだよな」
 晩飯の支度をしようとアジトに集まると、仲間たちも集合していた。
「なんだよ、アニキたちもかよ」
 手にはそれぞれ、ソロモンと交換したものを持ち寄っている。
「良い酒は隠し味にいいんだなあ、これが」
「やっぱりみんなで食べたほうがおいしいからね~!」
「あ、そのキノコ」
 シャックスは惜しみなくひとかけらいくらのキノコをバターでいためている。
「それで、これから何を作るかでもめてるんだよね~。でもでも、あたしは全部入れちゃえばいいと思う!」
「あ、じゃあ、こういうのはどうかな。スパイスで煮込んで……
……カレーかよ!」
「結局、交換したものは、みんなの腹に入るってわけだね」
 バルバドスが微笑んだ。
「大金持ちにはなれなかったみたいだけど、仲間と食事を囲みましたとさ。……これも、めでたしめでたしだ」