朝日が照らすグリダニア。寝ぼけ眼のままカーラインカフェで朝食を取る。ハーブティーと一緒に、砂糖がほどよくかかったラノシアトーストを小さな口で頬張っていた。――そういえば数日前に冒険者ギルドの方で短期間の契約者を募っていたから興味本位で自分も申請したけど、今日は依頼が来るはずの日だ。食べ終わって、食器を返却口に片付けてからナズナは自分が請け負うべき依頼を確認した。
普段ナズナが道端で頼まれる依頼とは違い、今回はギルド側が一緒に依頼を行う冒険者を名指しで決めておいてくれるそうだ。内容が記された紙を受け取る。自分の娘がいなくなった為、捜してくれという内容だった。
「まあ大変、迷子だなんて……きっと、とても心細いでしょうに」
自分も書き置きを残したとは言え家出をして、家族を心配させているであろう身分だが、迷子と家出は勝手が違う。母親の心情を察したナズナは、二つ返事でこの仕事を受けた。
とはいえ、ナズナは本の虫で実家では普段から書斎に篭もりっきり、たまにの外出も親とはぐれることがめったになく、迷子という状況に縁遠かった。近所で幼子と触れあうことは無きにしも非ずといった感じだったが、子供について知らないことの方が多かった。子供について知識をつけるべく、ナズナはグリダニアの図書館で本を漁ることにした。図書館というならばリムサ・ロミンサのミズンマスト図書館、ウルダハのフロンデール薬学院付属図書館でも良かっただろう。しかし、子供の育ち方や性格もそのお国柄が出るものだろうし、その国にある本を読むべきだろうと思ったのだ。
教育に関する本や子供が好きそうな絵本に軽く目を通し、必要そうであったりもっと詳しく読みたいと思った本を借りていく。グリダニアの図書館は利用者一人につき二十冊借りることができたが、ナズナはその上限まで本を借りた。
少し多く借りすぎてしまっただろうか。両手いっぱいに本を積み上げ、抱えるようにしながら歩くナズナ。依頼書と共に配布されたリンクパールで協力者と話して決めた待ち合わせ場所、カーラインカフェのテーブル席で本を丁寧に置いて着席する。相手は皆、男性の声だったが一体どんな人が来るのだろうか。借りてきた本を読みながら、全員が集まるのを待っていた。
ふと、肩を叩かれる。気がつけば一時間くらいは過ぎていた。誰だろう、と思いながら肩を叩かれた右手側を見ると、緑髪のミッドランダーが微笑みかけた。
「全員揃ったのに、本を読んでて気づかないなんて可愛いなあ」
申し訳なくて頭を下げると、左手から
「此処で集まろうって話にしたのはあんただろ」
と、木賊色の瞳のムーンキーパーが、睨むような目線を投げかけながら低い声で言う。
「まーまー、そう言わんでええやん。嬢ちゃんも別に悪気があった訳やないやろうし、な?」
と、ナズナの対面にいる目元を隠した格好のアウラ・ゼラが収めようとする。ようやくナズナはやっとパーティメンバーと合流することができ、その顔を拝むことになった。しかし早速の合流だというのに、ナズナは言葉を失っていた。――みんな、私より明らかに背が高い。たったそれだけかもしれないが、その状況はナズナにとって沈黙を選ぶほどの緊張感だった。
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