赤狼
2019-05-03 00:37:30
1220文字
Public 【BlacK】千葉惠
 

【BlacK】優しい夜

千葉惠5/1初日の夜。
蜜子ちゃんとエンカウントするお話。

5/1 22:30

ホテルBlacK、そのロビー。
先程まで数名の宿泊客がそこにいたが全員自室やバーに移動したのか、今は惠ただ一人が広いロビーにいた。
繁華街だったはずの外の景色は街灯だけがともり、人も車も通らないなんとも静閑な景色だ。
そう、静かだった。
‪静かだと余計なことを考えてしまうのが人間というもので、惠はついこぼしてしまった。‬

「出られなかったらどうしよう」と。

そこからは思考が勝手に走り回る。
(両親はきっと心配している、私を探しているかもしれない、怒っているかもしれない、勝手に家を出て椿原に行こうだなんて、呆れているかもしれない、悲しんでいるかもしれない、裏切ってしまった、大切にしてくれていたのに、もし椿原が私が逃げたと思っていたら、父と母に疑いの目が向けられていたら両親はどうなる父の会社はどうなる会社に勤めている人たちは私がここにいるせいで私のせいで私が私さえ私はわたしは)

頭痛がする。自己嫌悪に陥るといつもだった。
悪い癖だと惠自身も自覚はしていたが自分で止めることは出来なかった。体を小さくし目を閉じる。走り回るイメージを消すために良い思い出を思い出そうとする。
けど今日はそれもうまくいかず、いつもより時間がとても長く感じた。

「自分、寝ないんか?」

その思考を止めたのは知らない女性の声。
はたと顔を上げるとそこには惠と同じ年頃だろう女性が惠の顔色を伺っていた。地下の大浴場に行ってたのだろうか、客室に用意されていた浴衣を身にまといほんのり顔は赤らんでいる。
「あ、えっと……目が冴えてしまって……
そう言いながらニコリと笑いかけようとするが明らかに引きつってる頬に惠は手を当てた。目からは涙が今にも溢れ出しそうで自然と上げていた顔も伏せてしまう。
「そっか……確かにまだよぉわからんもんなここ」
そう言いながら彼女は惠に更に近づいていく。初めて会った人に泣いてるところを見られる気まずさに惠はこの場を立ち去りたいという気持ちでいっぱいだった。
……あ、あの」
大分休んだので、お部屋に戻ろうと思います。
そう言いかけた惠は肩にふわりと掛かる温もりに驚き言葉を途切れさせた。
「お姉さん寒いんとちゃう?これ羽織ればあったかくなると思うよ」
手に持っていたブランケットを惠に掛けふわりと笑う彼女は惠の隣に座る。
「な、ウチもまだ眠ないんよ。ちょっとお話せぇへん?」
……っあ、わた、し」
「例えばお姉さんの好きなものとかハマってる事とか、お姉さんが抱えてる不安でもええんよ」

背中を優しく撫でられる。
初めて会った人。名前も知らない人。
それなのに彼女は惠に優しく笑いかける。
無条件に向けられるその優しさがとても心地よくて。
惠は目から涙が溢れ落ちるのを止められなかった。


___蜂飼蜜子さん、エンカウント。(‪@deepblue_ebi)

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