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清華
2017-04-07 23:17:25
1498文字
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「あ、やっべえ
……
」
二人でおすわりで酒を酌み交わすのは最近よくあることで、烏養の自宅はここから徒歩圏内であるから終電や代行の手配などで困ることはないはずなのに、携帯電話の待ち受け画面を視界に収めると舌打ちしだしそうな声音を出した。
「どうしました? 何か急ぎの連絡でも?」
「明日、かあちゃんの誕生日なの忘れてた
……
」
忘れるとうるせえんだよ、と深く深く溜息を吐く様に申し訳ないがくすりと笑ってしまう。その武田の反応にむすり、とした顔を向けられたが、余計に武田の笑いを誘うだけである。
「仲が良いんですね」
「そういうイベントごとが好きなんだよ」
「で、何かそれで問題でも?」
「何もプレゼント買ってねえんだ
……
」
なるほど、と頷くのはもう烏野の大半の商店が店じまいをしている時間であり、市内に買いに行こうとも二人とも酒を入れてしまったが為に車を飛ばすことも敵わない。バスについてはお察しの通りだ。
「明日買いに行くというのは?」
「駄目だ、明日は一日店番してその後練習がある
……
」
「
……
なんか、すみません」
「いや、先生が謝る要素はねえだろ」
からり、と空元気で笑った人はぐいっ、とグラスに残っていた酒を飲み干すと女将へ会計を頼む。まだ早い時間であるけれど、せめてもの、ということなのだろう。
「折角誘ったのに、悪いな」
「いえいえ。また明日。おやすみなさい」
「おやすみ、先生」
そう言って去って行く背中を見つめてさてどうしたものかと思う。脳裏に浮かべるのは明日の授業の予定だ。
「大丈夫そうですね」
ふわり、と笑った武田は酒が入っているからではなく軽い足取りで己も自宅へと戻るのだった。
放課後、練習が終わりとっくに暗くなった坂道を武田は烏養と共に並び歩いていた。ちょっと買いたいものがある、と告げた為であり、なるべく坂ノ下商店で買い物するよう心がけていることを知っている烏養はちっとも不審に思わない。
「ただいま」
「こんばんは」
「あら、先生、いらっしゃい」
もうシャッターを閉めようという時間に滑り込むようにして顔を出したのは申し訳ないと思ったけれど、それでもなるべく早く、と考えたからこそのタイミングだ。いつものビジネスバッグの他に持っていた紙袋を差し出し。
「お誕生日、おめでとうございます」
「まあ、わざわざありがとうございます」
「烏養君と共同で申し訳ないですが」
えっ、と隣で驚いた表情を浮かべているのには渡されたプレゼントに夢中になっている人は気付いていないようだ。弾む声でよかったら夕飯も一緒にどうか、と誘われたけれど、流石に家族水入らずの祝いの席に顔を出せるほど武田は烏養家と交流がある訳ではない。
「先生!」
そうして店先から辞したのだけど、当然のことながら何も知らされていなかった烏養が後を追って店を飛び出してきた。予想の範疇であったので振り返って「何ですか?」と問えば。
「あれ、かあちゃんへのプレゼント
……
」
「ちょうど昼間に授業がない時間があったので買ってきました」
県道を車で少し飛ばして十分少々、そこで買い求めたのはふんわりとした肌心地の柔らかなタオルだ。いつもよりちょっといい日用品を贈られて嬉しくない人はいない、と講義の合間の雑談で話していたのは果たしてどの教科の教授だったか。
「悪い、半分払う」
「構いませんよ」
「でも
……
」
にこり、と贈ったタオルのような笑みを意図して作り、武田は一言。
「恋人や夫婦なら連名も普通でしょう?」
「なっ
……
!」
赤くなって固まる姿がおかしくておかしくて、ついに武田は声を上げて笑い出したのだった。
清華
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