清華
2016-05-14 22:19:01
660文字
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捨てられない長谷部の話


生真面目な性格の長谷部であるから主から与えられた自室は整頓されていると誰もが思っていた。しかし確かしに片付けられてはいるのだろうが、初めて彼の部屋を見たものはその雑多さに唖然とするだろう。夕食の席に姿を表さなかった――何でも審神者の提出書類が期日直前なのに終わっていないらしく、その手伝いをしているとのことだった――長谷部へ軽食を持っていった際に襖を開けた途端視界に飛び込んできた光景に、あわやお盆に乗せたものを落としそうになったのは、今でも格好悪い様を晒したと思っている。
等しく六畳一間であるはずのその部屋は物で溢れかえっていた。三つ折りにされた寝具とその隣に置かれた折り畳み式の文机以外はまさに足の踏み場もない状態である。現代の筆記具や書籍だけならまだしも書き損じの料紙、菓子の包み紙などの明らかにごみだろう物まで分類されて置かれているのにはくらりとしてしまう。
「長谷部君、流石にちょっとどうにかした方がいいよ」
おそらく夜には寝具が広げられているだろう隙間に腰を下ろし、ぶつぶつと机上に置かれた書類とにらめっこしていた長谷部へと苦言を呈す。その合間を縫って置いた皿へちらりと視線をやった長谷部は、苦い笑みを浮かべて。
「どうにも捨てられない質のようでな」
己らの性格を形作っているのは元の主の経歴と、刀そのものの来歴だ。長谷部は織田信長から黒田へと下賜されたことになっているが、捨てられた、と彼が思っているのは周知のことで、それゆえ『捨てる』という行為に躊躇してしまうのだろう。なんと難儀なことだろうか。


清華
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