旅の途中で足を痛め動けなくなった。父は旅程が遅れたことに苛々していたし、母は疲れて機嫌が悪かった。私は足が痛いのに、誰にも甘えることができなくて、泣きそうになっていた。
そんなときに通りがかった旅の馬車が私たちを助けてくれた。彼は馬車を止め、口々に助けをこう私の両親を止めて、馬車の中にいるおそらくは彼の主人に何事か話しかけた。
近くの宿がある場所まで、乗せて行ってくれると言う。
ただし、馬車の中に入れることはできない。馬車に乗っているのは、私たちのようなもの——何か難しい言葉を使っていた——が、近づいていい人ではないのだという。その言葉に父は憤り、助けなどいらないと言った。
しかし私は歩くことができなかったし、両親は私を背負っていくつもりなど毛頭なかった。だから私と母だけが馬車にしがみ付いて先にむかい、父は後から徒歩で追いつくことになった。
母は馬車の乗り口に足をかけ、手すりに捕まって街まで行く。私は体が小さいから、御者の席に一緒に座らせてもらうことができた。母は知らない人間に私を近づけることを嫌がったが、私は椅子に座ってもう歩かなくて済むことにホッとしていた。
母もなくていいと思った。一人で宿に行き、暖かい場所で休みたかった。
馬車から見る景色は、普段よりも視界が高くて楽しかった。
陽が暮れて震えていると、彼は雨具を掛けてくれた。そして懐に手を入れて、豆菓子を取り出すと、こっそりと私に食べさせてくれた。バターと砂糖がたっぷりと入っている味がした。今まで食べたこともないほど上等なお菓子だとわかった。
私が贅沢を覚えると困ると思っている母は、甘いものを滅多にくれない。家にないことなんてわかっているから、むやみに欲しがったりなんてしないのに。
だからこれは久しぶりのおやつだった。
ずっと馬車に乗っていたいと思った。馬車の中にいる人はよくわからないけれど、少なくとも御者の人は優しい。
「馬車を動かしていると、こんなお菓子をたくさんもらえるの?」
「雇い主によるなぁ」
御者はのんびりとした調子で言った。
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