狛乃
2018-09-09 20:57:26
1089文字
Public
 

Answer of the Journey

『ホームタウン』の、ちょっとした後日談


8月23日。
祖母宛に、アッシュバレーに帰宅したと手紙を綴る。その封筒にもうひとつ、一回り小さな封筒を入れる。宛名は「シルヴォ・キュラコスキ」墓前に置いてくれと祖母に追伸する。どこを旅しているのかは分からない、そこに置いたとて居ないだろうことは分かっている。(でも、ふらりと立ち寄るんじゃないか)とも思う。旅人は実に気まぐれなのだ。

昨晩、今一度本を読み返したアトロは、或る仮説を修正した。
「旅人」がそうでも、「鳥」がそうでもない。両方が、「彼」なのだと。それは、彼の側面のうちなのだ、と。

どちらかだけでは、きっと、彼の旅は成り立たなかった。





アッシュバレーでの日常に戻ってしばらく。暦は9月に変わり、実りの季節へと色付いてきている。昼間よりも長くなってきた夜の時間は、本を読むにはうってつけだ。夜を描いた短編集に、月面での友情の物語身近の作家たちの新作は、またしても珠玉だ。

友人との語らい、図書館や書店で捲る頁、店番にラタトスクの依頼。違いはあれど、でもいつもと変わらない日々。
それは、生地屋からの帰りだった。

ポストに、一通の手紙。

消印はつい一週間ほど前、都会から。祖母からだろうか。しかし、宛名を綴るその文字は、彼女の筆跡ではない。
ドキリとする。裏を返すと、羽ペン模様の封蝋印。

(まさか、いや、でもどうして

ふらふらと部屋に入りテーブルになんとかたどり着く。脈打つ鼓動と、緊張と。少し震える指先で封を開ける。
中には、1枚の便箋。半分に折られたそれには、細いけれど、しっかりとした文字が並んでいた。(まるで、ペンをとるその手の弱さを窺わせないかのように。)


『親愛なる、小さな旅人へ
お前のために秘密の箱を開けたとき、わたしは自由になったのだ。
さて、これでお前は仮説を証明できたことだろうさ。
おめでとう、黄色い眼の少年よ!』
『Dear, little journeyer
I became Free, when I opened the box of Secret for you.
Now, you're able to prove your hypothesis.
Congratulations, Yellow-eyes' boy!』



は、はは敵わないなあ」
滲む視界をそのままに、少年はその答案を図書の巻末にとじた。





旅は繋がる黄色い眼はそれを知っている。
Journey is linked... the Yellow-eyes knows it.