Isa
2022-11-03 21:13:45
2670文字
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オムライスが食べたい!

デミ帝が攻略されてしまう!攻略されましたか!?!?どうですか!?と限界を迎えながら書いたじゅはろです。焦っているのでちょっと雑。よろしくありませんね。でもわたしはこのあとすぐレイズを開く予定があるんです。許してください!!題名ままの、EDみたいな話です。

オムライスが食べたい。虹色が消えた青空を見上げて、そう思った。
レプリカに人工心核を入れた、意思のない人形兵士の群れたちを退け、帝国兵に降伏を迫り、受け入れられたとあらば負傷兵の治療をし、戦禍に巻き込まれた住民たちの保護をして──羅列してみると、地上軍にいた時よりもずっと仕事が多いな、と思う。でも、多分、天地戦争の決戦を勝利で飾った時は、皆これくらい忙しかったのだろう。ハロルド自身はその時のことは詳しく知らなかったが。
 とはいえこれだけ幅の広いことが、同じ人間にできるはずもない。物資の運搬はそれを生業とする者に任せ、民への説明や協力の要請依頼を請け負ったのはなんと元の世界では皇帝陛下をしているとかいう女性だ。確かに何となく、人を惹きつけその言葉を聴かせる風格のようなものがある。彼女に縁もゆかりもない民たちが、それでも不思議と彼女の言葉を受け入れているのは、ある程度のところまでは技術であり、それ以上のことは彼女の人間性に理由があるのだろう。
 ハロルドはといえば、技術的なところで役に立てる場面が過ぎ去ってしまった以上、カイルが選んだ地上行き・反乱軍制圧メニューを注文するしかなかったわけだが、そうなれば自然、戦闘と負傷した人々の回復を引き受けることになる。
 ソーディアンマスター、そしてそのオリジナルまでもが付いているとはいえ、相手は死をも恐れぬ特攻隊のようなもの。戦闘にあたった人数は十分だったが、数に押し切られる場面もあり無傷とはいかず、その上に負傷兵の回復まで担当したせいで、もう一歩も歩けそうになかった。まったくとんでもないものを生み出してくれたものだ、あの陰険眼鏡も──自分も。いや、ジェイドの方は帝国に直接力を貸したのではなかったが。
「終わったようだな」
気付くと、涼しそうな顔をしたジューダスが隣に立っていた。さっきまで、敵の剣が掠ったせいで片手で戦っていたとは思えない。疲労を隠すのが得意なのか、この細い身体のどこかに、あの長丁場に耐え切れるだけのスタミナが眠っているということか。
隣に人がいるなら、道端に座ったって構わないだろう、とハロルドは座り込んだ。未だ精力的に回復に当たっている誰かを呼ばれでもして邪魔になったらいけないし(サボっているのがバレてしまう)、と思ってぼんやり突っ立っていたのだが、いい加減疲れ切っていた。
「そうみたいねえ。あーあ! もうへとへと。久々に、研究以外で疲れたわ」
 ジューダスは薄く笑って自分も腰を下ろした。たぶん、ジューダスも何かしら割り当てられた仕事から逃れて来たのだろう。真面目で律儀な奴と見せかけて、息を抜くことを知らないわけではない。そのくせ、こういう場面で叱られるようなことはあまりしでかさないので、要領が良い男だ。
「そういえば、浮遊島に籠りっぱなしだったな。お前たちは」
「そ。私たちの成果にもっと感謝してほしいわね」
「してるだろう。イクスたちは」
「あんたもちょっとは感謝しなさいよ」
 何となくいつもの、軽妙なやり取りを交わして、すぐに沈黙する。ジューダスは多弁な方ではないので、ハロルドといる時の彼は三割くらいしか喋らない。ただ今の静寂は、疲労のせいだろう、と思った。
 負傷兵たちの治療を率先して行なっているアトワイト、彼女の手伝いにルーティとリアラ。必要物資の運搬には男手が駆り出され、炊き出しの準備をしているのはナナリーとマリーだ。ここにはいない仲間たちも、今は姿が見えないだけで、いろいろやっているのだろう。自分たちのように、休んでいる人間もいるだろうけれど。
「ねえ、ジューダス」
「何だ」
「オムライス食べたい」
……は?」
 その思い付きは、とても良いことのように思えた。元の世界で、神様を倒すため──それは同時にリアラの消滅を意味する──に旅をしていたあの時、料理当番はハロルド以外の持ち回り制で、カイルやロニの豪快ながら無駄のない孤児院料理も、リアラがナナリーに教わりながらちょっと不恰好な料理を出すのも、ナナリーの絶品料理も何でも楽しんできた。戦時下の貧しい食事に比べれば、何だって豪勢なものだった。
 その中でもよく覚えている料理がいくつかある。そのひとつが、仲間全員に何故か大人気だった、ジューダスの作るオムライスだ。ハロルドは料理のことを知識としては知っているし、人並みに自分の腹を満たすために食べられるものを作ることはできる。だがそれが人にとってどんなふうに感じるか、どうしたらこういう味になるのか、ということまでは経験してみないとわからないことだ。ジューダスが作っている様子を邪険に追い払われながらじっと観察してみたこともあるが、ナナリーの方が手際はよほど良いし、カイルやロニの方が作り慣れている感じがする。なのに、彼の作るオムライスはハロルドを含む仲間たちみんなに好評なのであった。
 怪訝そうにハロルドを見るジューダスは、思い切り嫌そうな声を出したが、多分、頼めば作ってくれる。……少なくとも、カイルが頼めば。
「うん、決まり。カイルもきっと食べたいって言うわ。ほら、帰ったらリリスのマーボーカレーを食べるだの何だのって話、してたでしょ。私はオムライスの方が食べたいし、多分カイルならどっちもぺろっと食べるだろうから、あんたも作れば一石二鳥ってわけね」
「勝手に決めるな。アジトのキッチンで料理はしたくない」
「帰ったらカイルに言っておこうっと。あんた、カイルの頼みなら断らないでしょ」
「お前な!」
「いいじゃない。全部片付いたら、もしかしたらみんなで一緒にってわけにもいかなくなるかもしんないでしょ。最後にあんたの料理が食べたい、なんて可愛い仲間のお願いひとつくらい、聞いてくれてもいいじゃない?」
 ジューダスは今までに見たことのないような妙な顔をした。困っているような、何を言ってるんだ、と訝しむような、当惑するような──まあ、良い表情ではない。だが、これは作ってくれるだろうな、とハロルドは確信する。
「そういうわけだから、お願いね!」
 こういう時のため息は、了承の返事も同義。そう思うと空腹を思い出してきたが、まだしばらく、アジトには帰れそうにない。
「さーて、そろそろやりますか。こういうのって、後始末の方が大変なのよねえ」
「お前が言うか……
混ざり物のない青空が綺麗に広がっている。新たな時代が始まったことを知らせているかのような光が、疲れ切った人々の上に、優しく降り注いでいた。