yasaka
2022-11-25 22:27:47
7874文字
Public Star trek
 

【JJST】見栄っ張りの美学

ずっと一人で頑張ってきたので他人を頼るのが下手なAOSカークの話(JJST直後→STID後)
February 8, 2021.

「ラスーヴィ女史!それでは、全く話が違います!」
ひどく狼狽した男性の声が高い天井の合間に響いた。
はるか遠方に巨大なアーチを描く途方もなく広大な大広間。何もかもが白に輝く空間の中には大きさも形状も様々な物体が等間隔に並べられている。それらは色や見た目の材質、果てはその出自すらも異なる物体ながら、どれも目にすれば一様に【同じような感覚】に陥る物ばかりだ。
そんな異様な世界のただ中で一人慌てふためく中年のアンドリア人に付きしたがうのは、宇宙艦隊が誇る新型艦U.S.S.エンタープライズの新たなキャプテンジム・カークと、副長スポック、そして船医マッコイの三名だ。
「わ、我々はあなた方の『作品』を借受ける為だけに、そちら提示した膨大なテストをクリアしたうえ、数年にわたる万全の準備を施してここに参ったのです!それを……今になって突然拒否するなどと! しかも、その理由が我々に作品を扱う資格がないとはどういうことですかっ!」
青い肌を怒りと失望に震わせる男性のすぐ前には、世にも【美】しい存在が立っていた。

宇宙の片隅に浮かぶその星は、各言語において【美】ノ惑星という意味の単語で呼ばれている。
既知宇宙全域を見回しても、かなり早い時期に高度な文明を築き上げた当惑星の人々は、暴力と悲劇を伴う物質的繁栄から精神的で内面的な栄華を尊ぶ方向へその精神を成熟させていた。と、それだけならば早期に技術的頂点を極めた知的種族にままある傾向といえただろう。だが、彼らがとにかく独特だったのは種族一丸となって全宇宙の万物が等しく感じる超普遍的な【美】の探求という途方もない目標を掲げ、音楽、絵画、彫刻といった芸術活動に限らず、政治、経済、科学、医療、果ては物事の善悪や倫理観に至るまで、ありとあらゆる評価基準を【美】か否かに書き換えてしまったことだ。
母星の正式名称にしても、数千年にわたって選び抜かれた美しい音素の羅列を讃美歌のごとき節をつけ、数分にわたって正しく詠唱しなければならないと在っては、異星の民からすればもはや着やすく名を呼ぶことすらままならない。こうして長い年月をかけてひたすら先鋭化した彼らの【美】に対するスタンスは、いつのまにやら自身への強烈な選民意識と結びつき……やがて至った今日において、極端に自尊心が高く【美】以外に何ら価値を見出さない彼らとの交流は百戦錬磨の外交官でも至難といえる有様だ。それゆえ、この星は近傍の惑星連邦、クリンゴン、ロミュランの三大勢力はもとより、いかなる独立勢力ですら取り込むことを放棄した、一種独特の不可侵領域となっている。
しかしながら、文明黎明期からのべつ幕なしに掻き集められた数多くの品々と、彼ら自身が長い年月をかけて磨き上げた超々一級の【美】の化身の如き芸術作品が集うその惑星は銀河に名高い【美】の殿堂として著名であり、一度目にすればその者の人生すら一変させると噂されるそのコレクション群は銀河に散らばる多くの知的生命体を惹きつけて止まず、いかなる困難を突きつけられようとこの星を訪れる好事家や芸術商が後を絶たないこともまた事実だ。

今回、エンタープライズ号でこの地を訪れたアンドリアの美術研究家も、類まれなる【美】に魅入られた一人だった。
アンドリア芸術アカデミーで教鞭をふるう立場でもある彼は、長年の交渉の末に、彼らの著名なコレクションの一部を学園主催の展示会への出展を約束させるという歴史的快挙を成し遂げた。とはいえ、その過程で【美】ノ惑星が付けた条件として、教授当人の人物チェックやアカデミーそのものの調査・試験は言うに及ばず、果ては展示がなされる建物すらも彼らのコレクションの持つ【美】にふさわしくなるよう新築させたというのだから凄まじい。
ところが。いざ惑星から作品を運び出そうというこの土壇場になって「やはり出展は取りやめる」と現れたのが、ラスーヴィと名乗る、世にも【美】しい、そう、あまりにも耳目が整いすぎて気味の悪ささえ感じられる人物だった。
顔だけ見ればいまだ性別が合われていない少年と少女の合間を克明に刻み込んだ彫像のようでいて、その物腰は洗練された貴族令嬢か歌劇歌手。そしてなにより、何事にも動じない老成した賢者を思わせる超然とした雰囲気を携えた彼女は、自らが惑星の【美】的審議官なる要職ににつく者であるという簡素な自己紹介の後、悲嘆にくれる教授を前に美しい透き通った声でこう告げた。

「我々の試験をクリアした芸術アカデミーに不満が在るわけではございません。その輸送を、我々が作り上げた偉大なる【美】を正しく理解出来ぬであろう野蛮な輩に委ねねば成らぬ事が甚だ不快であると申し上げているのです」
滑らかに語られたその内容は、その清らかな響きに反してひどく辛辣な言い様だ。
それどころか、実際にコレクションの輸送任務にあたるカーク達を真正面から「野蛮」と嘲る美しきラスーヴィの不躾な言動に、その場にいる全員が絶句する。
「おや?そこにアナタのような方がご興味を惹くような物がありまして?キャプテン・カーク」
嫌な沈黙の中。自らが野蛮と断じた一人が自分でなく傍らに陳列された石像へ興味を向けていることに気づいたラスーヴィが嫌みなほどに煌びやかな微笑みを湛えて近づいてきた。思わず道を譲ったアンドリア人教授の前をさらりと通り過ぎると、美しき暴君は短く刈揃えられた明るい金髪を物珍しげに一瞥し、その耳元へ囁いた。
数か月ばかり前、惑星ヴァルカンをその民もろとも消滅させた恐るべき厄災から地球を救い、素行不良の士官候補生から一日にして艦隊大佐となった前代未聞の若いキャプテンの名は……この宇宙において【美】以外に何の価値も認めない彼女ですらも僅かに記憶に留めているらしい。
「キャプテン・カーク。アナタのご覧になっている像はβ暦の二四一年に惑星ベージョの石工、マスター・ガミールが手掛けた女神アラハーナの彫像で……
「アラハーナではなく、これはその配下アラガーナの像では?」
偉大なる彫像に圧倒されているであろう『成り上がりキャプテン』をせせら笑うような美声を遮り、カークは穏やかにそう返していた。

「惑星ベージョの石工ガミールと言えば、レプリケーター発明前のものとは思えぬ精緻な細工で名高いな反面、現代では現存する作品の少なさで知られる芸術家だ。彼は自分の妻をモチーフに幾つかの女神像を作製したとされるが、齢六〇の時に巻き込まれた異端審問で高位の霊的存在たる女神を己の妻と同化し即物的で卑猥に描写したと批判され、該当する作品たちは残らず破壊されたとか」
淡々と語られたその内容に、ラスーヴィは虚を突かれたような表情を浮かべた。それはこれまでの人形めいた物でなく、ひどく現実的な、生気を感じさせる表情だ。
「これは豊穣の女神アラハーナその物ではなく、女神の側近で彼女のたわわな髪を傍らで支えた神女官の像でしょう。右手に豊穣を象徴する髪房を抱えているのがその証拠。そして彫像の髪に結われたついたメイリィの花とアルムダの実はベージョ第三王朝の王女プルクラのシンボルだ。彼女はベージョで当時流行していた熱心なアラハーナ信仰の支持者で、自らをアラハーナに付き従う神女官アラガーナが現世に顕現した存在だと信じていた。これらを踏まえるに、この像は王女プルクラをモデルにして、神女官アラガーナの姿を象ったものだ。……さらに付け加えるなら、この彫像のモチーフの切り出し方、像全体から感じられる荘厳な雰囲気は天才石工ガミールの作品その物と思える一方で、残存するガミール作品の一種偏執的に思える細やかさにくらべると、髪の毛の表現や布地の見せ方などにやや拙いところが見られます。何より王女プルクラの時代、晩年を迎えたガミールは偉大な芸術家としての名声を獲得した反面大方の創作意欲を失い、物によっては彫刻前の粗描だけで放り投げていたとか。この像は王家の依頼を受けてガミールが制作していたものの完成には至らず、仕方なく細部をガミールの弟子達が仕上げた作品ではないでしょうか」
一切の淀みなくそう断言したカークが再び向き直れば、先ほどまでの小馬鹿にした態度が一転。目前の輝かんばかりの美貌はカークを据えるような目で睨み付けている。
「この宇宙にあなた方が追及する【美】を理解しない者などいませんよ、ラスーヴィ女史。ただ、その人物や文化によってその尺度が多少異なるだけです。私の個人的な尺度をお話させていただくなら……石に刻まれた固く冷たい【美】よりも、あなたご自身に宿す情熱的な『美』の類をより重要視しているといったように」
先ほどまで像に向けていたのとはまた異なった種類の熱視線を向けつつ、カークは気障ったらしい台詞を臆することなく口に乗せる。幸か不幸か、その背後で船医が盛大に頭を抱えたことに気づいたのは隣に立つヴァルカン人だけだ。
――【合格】です。像のモティーフがアラガーナであることは当然として、王女プルクラのエピソードと併せ彼の弟子の作であると見抜くだけの審【美】眼があるのならば、輸送係にしては十分でしょう。『作品』の搬出を許可します」
軽薄な優男からの「お誘い」など端から無かったかのように、ラスーヴィはその完璧な美貌を崩すこと無く優美な一礼を経て踵を返す。

慇懃無礼な美女の姿が扉の外に消えると同時に、カークは演技めいた仕草で肩をすくめてみせた。
「残念。フラれたか」
……!キャプテン・カーク! き、君は我々の救世主だ!あれほどの準備を経て、今更手ぶらで帰ったとあっては私の面目は丸つぶれ……
突然、路傍の石ならぬ路傍の彫像と化していたアンドリア人教授が、カークの真正面へ飛び出した。感極まった様子で『英雄』の両手を掴み、ぶんぶんと上下に揺さぶりながら口走り書けたその内容が、どこでのぞいているともしれぬ彼らの計りがたい【美】意識に反しかねないと気づいたらしい。
こほんと軽く咳払いし、居住まいを正した教授は晴れ晴れした口調で仕切り直した。
「今回我々が預かるのは【美】ノ惑星が誇る門外不出の至宝の一つ。それを直接目の当たりにできると在れば、芸術アカデミーの生徒たちにとって又とない刺激となることでしょう。キャプテン・カーク。あなたは連邦の芸術レベルを大いに押し上げる立役者なったのだと胸をお張になるとよろしい!」
「過ぎたお言葉ですよ教授。何より、輸送任務はまだ始まってもいないんですから」

すっかり落着したらしい様子を前に。少し距離を取りつつ控えていたスポックは一人意外そうに呟いていた。
「キャプテンがあれほど異星美術史に通じているとは存じませんでした。……何かしら美術の心得でも?」
「そんなわけあるか!」
副長の発言をいつものように茶化すとするには、いささか強すぎる否定に、スポックは片方の眉を吊り上げ隣の医者に視線を向ける。
その視線を向けられた当のマッコイは、しまった!と言わんばかりに表情を歪めると、どこか投げやりな風に言い放った。
「どうせいつものカッコつけだ。……あの『孤独な見栄っ張り』め」
極めて現実的な職に似合わず唐突に詩的な表現を用いるのは、このドクターの個人的性格であるらしいと、この半年の航海で把握し始めてはいたものの、そのどこかちぐはぐな言い回しはスポックの脳裏に不自然に引っかかり続けたのだった。


*****


「ああ、くそっ! 寝落ちた!!」
普段使いの情報パッドだけでなく、どこから引っ張り出してきたのか古い紙媒体の資料を掴んだままアンダーウェア姿のカークはソファから飛び起きた。

今日は重要な外交会談が控えているからと、早めに彼の部屋を訪れた判断は正しかったようだ。様々な資料や雑に脱ぎ捨てられたゴールドの制服が散乱する私室の入口で直立しながら、スポックは起床したばかりの我らがキャプテンの姿を手早く観察する。
推察するに、昨夜の彼はバスルームへ向かう前に軽く会談相手についてまとめた資料に軽く目を通すつもりで熱が入り、そのままソファの上で眠り込んでしまったらしい。
今から一年前、エンタープライズ共々文字通りの意味で『死線から舞い戻った』彼だが、退院後から伸ばし始めたらしいくすんだ金髪には奇妙なところで癖がつき、頬にくっきりと残る座面の跡と首周り僅かにのぞく無精ヒゲは日頃身だしなみに気を配っている彼にしてはかなり悲惨な状況だ。とはいえ、これまでの経験則から察するに、熱いシャワーを浴びてくればどれも問題なく解消されていることだろう。
肝心の任務遂行に関して大きな問題はなさそうだと判断し、スポックは改めて周囲に視線を移した。そこかしこに散らばるのは、事前にスポック自身が渡した情報資材とは異なるものだ。さらりと目を走らせただけでも、相手の所属する惑星の地理や経済情報に加え、その歴史や風俗、果ては公式情報とは言えない当地の要人に関するゴシップ記事までが散らばっている。たった一度の外交会談を行う前の準備にしては……その範囲も深度も度を越しているようにも思える内容ばかりだ。
――会談相手の詳細情報であれば私も記憶していますが?」
「優秀なヴァルカン人の副長の助けを借りずに語るから『格好いい』んじゃないか、ミスタースポック!」
枕替わりにしていた紙資料を放り出し、ヴァルカン人には理解しがたい論理を口に乗せたキャプテンは慌ただしくバスルームの奥へと消えていく。

そう、かつての記憶を振り返ってみれば。カークという人間はアカデミーの頃から表立っての言動とその実体に大きな隔たりのある人物ではあった。
前代未聞の入学経緯や、在学中の……主に女性関係をめぐる派手な逸話に誤魔化されがちだが、彼は紛れもなくあの優秀な集団の中でも十指に入る優等生だった。時折周囲を悩ませるいくつかの悪行さえなければ、スポックと同じく学生教官としての活躍もあったに違いない。
連邦代表としての責務を背負い、宇宙の果てで危険な任務に携わる艦隊士官。そんな人材を育成する場であるから、当然アカデミーのカリキュラムは遊び半分でクリアできるような難易度ではない。特に指揮官を目指すコースは心身共に極限まで追いつめられることも少なくなく、各地から集った優秀な人材であろうとも毎週のように脱落者が出るほどの険しい道だ。にもかかわらず、当時学生教官を務めていたスポックの耳へ聞こえてくるカークの所業は、どこか泰然とした緊張感の感じられないものばかりだったはずだ。

――そして、それから三年。
彼は宇宙でも稀とみられる果断な判断力を持ち、恐れ知らずに危機へと飛び込んでは華麗に成果を上げていく至極『有能』で『破天荒』で『大胆不敵な』キャプテンとして名を轟かせていた。
しかしその実、本来の彼は有能であれど、むしろ繊細な性質の持ち主であり、常人には得がたい日々の成果は本人の血の滲むような努力と苦渋の決断と忍耐力によってもたらされているに過ぎないということを今のスポックは知っている。危機を前にして誰に助けを求めることもせず、どこまでも孤独に抱え込んだ末、利他の為自らの命を躊躇いなく投げ捨ててしまう人物だと言うことを、嫌と言うほど思い知らされている。
いつぞやの【美】ノ惑星で披露された見事な知識も、任務までの休息時間やシフトの合間を見つけ、膨大な資料を読み込むことで準備されたものだったのだろう。おそらく、ああいった場において惑星の審議官による『抜き打ち試験』が行われることも聞きつけ、隣に立つ自分どころか家族と称した船の誰に助けを求めることなく、日々の激務の最中に人知れず対策を練ったに違いない。
古くからそんな彼を近くで観察しその様を『孤独な見栄っ張り』と評した男曰く。
誰にも心を許せぬから、完璧な姿を演じ続けるのだと。誰も信用が出来ぬから、誰の助けも求めず孤独に闘い続けるのだと。

スポックは散らかった私室の中を今一度見回した。
もしも、自分と彼がエンタープライズに乗り込んだ直後であれば、このような『努力の痕跡』を彼は誰にも見せることはなかったはずだ。あの負けず嫌いで見栄っ張りな性格のこと、いかなる苦労の痕跡を微塵も見せぬまま会談相手の前でしっかりと準備した知識を披露して周囲を驚かせつるつもりだったに違いない。
そうやって常に一人で完璧を装おうとしてきた彼が、今回不覚にも眠りに落ちてしまったというその事実に、胸の奥を不可思議に揺り動かしてくるような心情を覚えたスポックは僅かにその目を細めていた。


バスルームから戻ったカークの鼻腔に届いたのは、頭に留まるけだるさをかき消すような香ばしい芳香。それに釣られるように顔を動かすと、涼しい顔の副長が備え付けのレプリケーターから一杯のコーヒーを取り出しているところだった。部屋中に散らばっていた古い資料は的確な区分にまとめられ、テーブルの上に整然と並べられている。恭しく目の前に差し出されたマグカップを勧められるがままに受け取り、カークはバツが悪そうに肩をすくめた。
「悪かったな。君に従者みたいな仕事をさせるつもりは無かったんだけど……
「お気になさらず。わざわざ片付けのためだけに下士官を呼ぶより、その場で手の空いた者が動いた方が効率的です」
事務報告のような淡々とした回答と共にソファに座るよう促され、カークは大人しくそれに従った。
気合いを入れるべく熱いシャワーを浴びたおかげて、先ほどまで頑固に存在を主張した寝癖も、頬に居座っていた無様な跡も今はキレイに消えている。
一方で上気した肌を冷やすために、相変わらずその服装はショートパンツとアンダーシャツを引っかけただけの姿だが、それこそ制服に着替えるだけならコーヒーを味わってからでも遅くはない。
「資料の中に、何か興味深い事柄がありましたか?」
座したカークの真正面に座ったスポックがテーブルの上に積み上がった資料を眺めながらそう尋ねてきた。
「あぁ、先代の王弟という人物が未発見星域へ遠征した記録がとんでもなく面白くてさ。気づけば、準備そっちのけで読み込んでいたんだ」
昨夜意識の途絶えるその直前まで熱心に読み込んでしまったその内容を思い出し、カークはいくつかの印象深いエピソードをかいつまんで口に乗せる。
……まぁ、そんな魅惑的な話達のお陰で、今回会談する惑星周辺の知識が百年前で止まってしまったんだけどな」
人肌程度に温まったコーヒーを一気に喉に流し込み、カークは自嘲するように笑ってみせる。
そんな相手に、黙って話に耳を傾けていたスポックは事も無げに言葉を返した。
「では、最近百年以内の事象については、側に控える私の方でサポートいたしますのでご安心を」
きょとんとした碧の双眼を真正面に、スポックは相変わらず事務報告のように言葉を続けた。
「我々は仲間 チームですので『互いの不足をサポートし合う』のが最も論理的な解決方法ではないでしょうか」

淡々と告げられた言葉に、これまで幾度となく繰り返された反論はついに返ってこなかった。
……確かに、そう、だな」
やっとの思いで吐き出したように、そしてどこか恥ずかしそうに、カークは言った。
「お言葉に甘えて、もっと君を頼らせてもらうことにするよ。ミスター・スポック」