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『ボヘミアの醜聞』
「君には結婚が合っているんだ、と見える。この前から見ると、七ポンド半は肥ったぜ」
「七ポンドさ」
「フーン。もうすこしよく考えてからいうのだった。ほんのちっとだけね。それで。また開業したらしいね。僕はそんな意向のあることなど聞かなかったぜ」
「聞きもしないで、どうしてそんなことがわかるんだい?」
「わかるさ。推理でわかる。近ごろ君は雨にあってズブ濡れになったし、君のうちにはひどくそそっかしい女中がいるなんてこともわかるが、どうだ?」
「おやおや、君にあっちゃ敵わないよ。これで二、三世紀もまえに生れていたら、君は間違いなく火炙りになってるぜ。なるほど僕は。この木曜日にいなか道を歩いてて、たしかにズブ濡れになって帰ってきたが、その服は着かえているんだから、どうしてそんな推理が下せるのだか、見当がつかない。女中のメアリー・ジェーンなら、こいつは何とも始末におえない女でね、たまりかねて家内が、お払いばこの予告を申しわたしたが、それにしても、どうしてそんなことまでわかるんだろう?」
ホームズは独りで悦に入って、ながい神経質な両手をこすりあわせた。
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『ボヘミアの醜聞』
「結婚生活はきみにいいのだね」と彼は話しかけた。「ワトスン、このまえ会ったときから、七ポンド半はふとっただろう?」
「七ポンドだ」私はこたえた。
「そうか。もう少しふとったようにおもえるが。きっと、もう少し重いよ、ワトスン。それから、また開業したのだろう? そうとは聞かなかったが」
「では、どうしてわかったのだい?」
「推理でわかるよ。それから、近ごろ雨にあってずぶ濡れになったことや、きみの家には、ひどくのろまでぞんざいな女中がいるというのもわかるね」
「おやおや」と私はいった。「きみにあってはかなわない。きみは数世紀まえに生まれていたら、きっと妖術者として火あぶりになっていたぜ。たしかに、木曜日は田舎をあるいて、ずぶ濡れになって帰ってきたんだ。だが、服もかえているし、どうしてそんな推理ができたのだろうか。それから女中のメアリ・ジェインには閉口してね、家内は、ちかぢか暇をだすと申しわたしているのだ。しかし、それにしても、どうしてそんなことまでわかったのかね」
かれはひとりでくっくっと笑って、長い繊細な手をこすり合わせた。
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『ボヘミアの醜聞』
「結婚したのがきみにはよかったようだな」と言う。「ざっと見たところ、前に会ったときから、七ポンド半は肥ってるだろう、ワトスン」
「七ポンドだよ」私は答えた。
「そうかな、もうすこし多いような気がするんだが。まあ、ほんのわずかだけどね。それに、また開業したようだな。医者の仕事にもどるつもりだとは、聞いた覚えがなかったが」
「だったら、どうしてわかったんだ?」
「見て、推理したのさ。ついでに言えば、最近、ひどい雨に降られて、ずぶ濡れになったってことや、きみのうちにとんでもなく無器用で、そそっかしいメイドがいるってこともね」
「おいおい、ホームズ」私は言った。「驚かすのもたいがいにしてほしいね。ほんの三、四世紀か前だったら、確実に火あぶりの刑にされてたところだぞ。たしかに、こないだの木曜日に田舎へ出かけて、歩いて帰る途中、ずぶ濡れになった。しかし、その時着ていた服はすっかり着替えてるんだし、それでなぜきみに、そんな推理ができるのかわからない。もうひとつ、メイドのメアリー・ジェーンのことだが、お説のとおり、どうにも救いがたい無器用娘で、妻はすでに暇を出すと申しわたしている。だがそれにしても、どうしてきみにそんなことまで見抜けるのか、やはり合点がいかないな」
ホームズはくつくつ笑って、ほっそりと長い手を神経質そうにこすり合わせた。
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『ボヘミアの醜聞』
「結婚生活はきみに会っているようだね、ワトスン。この前会ったときから、七ポンド半は太っただろう」
「七ポンドだよ」
「そうか。もう少し重いような気がするんだがな。もうほんのちょっと。それから、また開業医に戻ったらしいな。そうしたという話は聞いていないが」
「じゃあ、どうしてわかったんだい?」
「推理したのさ。きみが最近雨に降られてずぶぬれになったことや、きみの家にはひどく不器用で無神経なメイドがいるということもわかる」
「やれやれ、ホームズ。きみにあっちゃ、かなわないね。何世紀かまえに生まれていたら、きみはまちがいなく火あぶりにされたところだよ。たしかにぼくは、このあいだの木曜日に田舎道を歩いていて、ずぶぬれになって帰った。でも、そのときの服は着替えているんだから、どうしてそんな推理ができたんだろう。それから、メイドのメアリ・ジェーンのことだが、これがどうにも使いものにならない娘でね、家内が暇を出すと申し渡したぐらいだ。それにしても、どうしてきみにそんなことまでわかったんだい?」
ホームズはくすくす笑うと、長くて神経質そうな手をこすりあわせた。
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『ボヘミア国王の醜聞』
「結婚してよかったようだね、ワトスン。この前会ったときから、七ポンド半はふとったようだ」
「七ポンドだ」
「そうか。もうすこしふとったように思ったがね。もうすこし重いんじゃないのか、ワトスン。また開業医に戻ったらしいね。戻るとは聞いてなかったが」
「それじゃ、どうしてわかったんだ?」
「推理に結果さ。それに、きみが最近雨に降られてずぶ濡れになったことも、きみの家には、ひどくだらしのない女中がいることもわかっている」
「いやはや、きみにはまいったよ。数世紀前に生れていたら、きみはまちがいなく火あぶりになっただろう。ぼくが木曜日に田舎道を歩いていて雨に降られ、ずぶ濡れで帰宅したことは事実だが、服は着替えているし、どうしてそんな推理ができたんだろう? それから女中のメアリ・ジェーンのことだが、これが始末の悪い女でね、とうとう妻は暇を出すと申しわたしたんだ。それにしても、どうしてそんなことまでわかったんだろう?」
ホームズは、ひとりでくすくす笑いだし、長い華奢な手をこすりあわせた。
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『ボヘミア王のスキャンダル』
「結婚生活が性に合っているようだね、ワトスン。以前会ったときよりおそらく七・五ポンドは体重が増えているんじゃないか?」
「七ポンドだ」
「なるほど。もう少し多いかと思ったがな。きっともう少し多いよ。それに、また開業したんだね。もとの仕事にもどるとは聞いてなかったが」
「じゃあ、なぜわかったんだい?」
「見ればわかる。推理だよ。きみが最近、雨でずぶぬれになったことも、とんでもなく不器用なメイドがいることもわかる」
「すごいね、ホームズ。すごすぎる。二、三世紀前なら、確実に火あぶりになっているところだ。たしかにぼくはこの木曜日、田舎道を歩いてずぶぬれ になって帰ってきた。しかしもう服は着替えているし、わかるはずないと思うが。メイドのメアリー・ジェインのことも大当たりだ。救いがたい不器用でね、妻 がもう暇を出すと申し渡したところだ。しかしそれもどうしてわかったんだろう?」
ホームズはくすりと笑って、長くて繊細な二本の手をこすり合わせた。
A SCANDAL IN BOHEMIA
“Wedlock suits you,” he remarked. “I think, Watson, that you have put on seven and a half pounds since I saw you.”
“Seven!” I answered.
“Indeed, I should have thought a little more. Just a trifle more, I fancy, Watson. And in practice again, I observe. You did not tell me that you intended to go into harness.”
“Then, how do you know?”
“I see it, I deduce it. How do I know that you have been getting yourself very wet lately, and that you have a most clumsy and careless servant girl?”
“My dear Holmes,” said I, “this is too much. You would certainly have been burned, had you lived a few centuries ago. It is true that I had a country walk on Thursday and came home in a dreadful mess, but as I have changed my clothes I can’t imagine how you deduce it. As to Mary Jane, she is incorrigible, and my wife has given her notice; but there, again, I fail to see how you work it out.”
He chuckled to himself and rubbed his long, nervous hands together.
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