黒竹
2023-08-05 00:53:45
22727文字
Public リコリス・リコイル
 

イチブトゼンブ

【まじちさたき】【ペイントバース】
https://www.pixiv.net/artworks/77347389

 何か甘いものがほしくて押し入れから出てきたクルミが、廊下ですれ違ったたきなの顔を見てギョッと目を瞠る。心持ち足音を忍ばせ、声もかけずに通り過ぎて、喫茶リコリコの店内に入ると食器を洗っているミズキの着物の裾を引いた。
「お、おい、たきなのやつ、いったいどうしたんだ? ものすごい形相になってたが」
「ああ、千束よ千束。今日、十五日でしょ」
 視線だけでクルミを見下ろしながら、ミズキはため息でもつきたそうな表情で答えた。本当に嘆息しなかったのは店内に客がいるからだろう。
 ミズキの返答でやっとクルミも合点がいって、「ああ、そうか」どこか呆けたような口調で独白した。
「いい加減、慣れても良さそうなものだが。月二回、必ずあるんだから、そろそろ諦めてもいいんじゃないか」
「ま、そうもいかないんでしょうよ。大事な相棒がよりによってあれとだもんねえ」
「ふむ……
「無駄話ばっかしてないで、あんたも出てきたなら手伝いなさいよ。たきながあんな仏頂面なせいでホールに出せなくて困ってんだから」
「僕は電子戦専門だ」
 飄々とかわすクルミの脳天に、ミズキの持っていたコップの底が叩きつけられた。



 地下室の鍵は重い。重厚なそれを差し込んで、回転させながら上部のパネルの生体認証パネルに手のひらを当てて掌紋認証を通す。「錦木千束」次に声紋。発する言葉はなんでもいいが、いちいち考えるのも面倒なのでいつも名乗ることにしている。最後に二つ目の鍵をスリットに噛み合わせて解錠。
 デジタルとアナログを組み合わせたセキュリティはクルミのお手製だった。「デジタルだけでも大丈夫だとは思うが、念のためにな」けっして己の作ったセキュリティプログラムが破られることを心配したのではないと強弁していたが、千束は難しいことはよく分からないので特に気にしていなかった。
 第一、本当ならこんな頑健なシステムなんて不要なのだ。ミカやミズキが心配するからクルミに頼んだものの、ノブを回せば開くドアひとつで本来は充分なのだった。
 よく整備された鉄扉は音もなく開く。それでもこの部屋の住人には何かしらが聞こえていて、情報を得ているのだろう。「よぉ」気楽な声が姿より先に届いた。
「やあ、二週間ぶり。真島サン」
 千束は人を食った声でわざとらしい敬称を呼ぶ。もう一人も残っていない彼の部下たちが呼んでいた敬称。
 嫌味にも真島は大した反応を見せず、右手を胴体に拘束された状態で椅子に座り、静かに笑っていた。
「調子はどう?」
「いつもどおりさ。色の溜まり具合も前と変わらねえ」
「っそ」
 閉じられた両目と緩んだ口元も、またいつもどおりだった。光を失った男の両目はただそこにあるだけで役目を果たすことはなかった。惜しくはないと、死線の向こうで男は言った。
……じゃ、早速始めますか」
「ああ。優しく頼むぜ」
 千束が細長く息を吐き、ゆるりと右手を握る。
 それから一瞬。振り上げた腕をしならせ、真島の頬に拳を叩きつけた。真島は声を出さずにただ体勢を崩し、椅子から落ちそうになった身体を戻す。
 じわりと、殴った拳に灰色のシミがついて、それが服の下の皮膚を這い上がって髪先で止まった。もともとが光に反射して薄く金に光る程度の白髪はくはつなので目立ちはしないが、よくよく見ればその箇所だけが光を吸い込んで鈍い。
「ッハァ! 今日もお優しい﹅﹅﹅﹅ことで、ありがたくって涙が出るな」
「泣くほど喜んでくれて私も嬉しいよ」
 上機嫌な声と穏やかな声。お互い、表情に感情はなかった。真島の両目に涙などは浮かんでおらず、ただの冗談なのは明白で、千束は無表情のまま握っていた拳を一度開き、また握り直す。
 二発目。真島の口端が切れて赤く血がにじむ。呼応するように千束の髪にも灰色が増えた。それと同時に制服に隠れた箇所が鋭く熱を持つ。左の鎖骨の下。そこに浮かんでいるだろうものを思い、千束が忌々しげな仕草で制服越しにそこを引っ掻いた。
 殴った衝撃を逃がすように開いた手を振りつつ、真島を上から下まで眺める。
「っし。だいたい吸い込んだかな」
「まあこんなもんだろ」
「ちょい口開けて。ワセリン塗っちゃるわ」
 鞄からファーストエイドキットを取り出し、真島の切れた口元にワセリンと化膿止めの軟膏をグリグリと塗り込む。腫れた頬はおそらく数日はそのままだろう。それでも、次に会うときにはケロリとしている。まあ延空木から落ちてもしぶとく生き延びたくらいなので、ファーストリコリスといえど人間の膂力の域を出ていない拳など、大したダメージにもならないということか。
「怪我しない程度に殴れねえのか」
「触ったときの衝撃インパクトが強いほうがたくさん吸収できんだから、短時間で済ませるならこのくらいやらないといけないんだって。大丈夫、死にはしないよ」
「お前なあ、飯の時にけっこう滲みるんだぜ?」
「ああごめん。夕飯は滲みないように優しい味付けにしとくわ」
「気ぃ遣うのそっちなのかよ」
 真島が乾いた呼気で笑い、ワセリンで艶光りする口元を奇妙に歪めた。あるいは奇矯に、もしくは酔狂に。
「ま、お前としちゃいつかの仕返しができて面白いだろうけどな」
「ん?」
 なんのことだろうと訝ってから、以前襲撃を受けた際のことだと気づく。目を潰されてろくな抵抗もできないまま殴られ続けた思い出が蘇るが、千束は呆れ混じりの息を吐いて、「なに言ってんの」と平坦に答えた。
「戦闘中でもない、捕まって縛られてる相手を殴っても楽しいわけないでしょ」
……そうか? ああ、そう思いたいのか」
「なによ」
「いいや」
 部屋の隅に置かれていたパイプ椅子を引っ張り出して真島の隣に移動させる。この部屋で二脚の椅子を除けば家具と呼べるのは小さなテーブルだけで、千束はそのテーブルに鞄から取り出した缶を並べて置いた。
「ほれ。差し入れ」
 缶をひとつつまんで真島に渡してやる。手の中で軽く缶を転がした真島が顔をしかめた。
「コーヒーじゃねえか。しかもブラックだろ。ふざけんな、嫌がらせか?」
「なんで見えてないくせに分かんの」
「粘度が違うんだよ。缶の中で反響する音である程度は区別できる」
 真島が投げ返してきた缶コーヒーを受け止めて、それを持ったまま椅子に腰かける。もうひとつの缶を開けて一口飲んでから真島に差し出した。
「しょうがないなあ、私のやつ譲ってあげるよ。ありがたく思えー」
 受け取った缶に口をつけた真島がわずかに懐かしそうな表情になった。しかし楽しそうではない。
……例の甘すぎるやつじゃねえか」
「わがまま言わない」
「なんでそう苦いか甘いか極端なんだよ。もっとバランスのいいもんがいくらでもあるだろ」
 げんなりと言ってくる真島に千束は答えなかった。
 巧妙に潜伏しながら、以前ばらまいた銃の拾い主を扇動していた真島を捕らえて半年が過ぎていた。クルミが独自に用意した隠れ家の地下室に幽閉されたまま、いまのところは逃げ出す様子もなくおとなしくしている。
 鞄から小型のプロジェクターと、イヤホン付きの小さな機械を取り出し、壁に映像を照射して角度を合わせる。「今日はハットマンフォーエバーでーす」「おお、いいねえ」帽子を深くかぶって顔を隠したヒーローの映画シリーズはどうやら真島も気に入っているようだった。
「悪を滅ぼすために手段を選ばないのがいいよな。国家権力に頼らねえで自分の手で正義を貫くのがいい」
「いやいや、それもあるけどやっぱ相棒の男の子とのやり取りがさぁ〜。これぞ仲間って感じで尊いのよ」
「そうかぁ? あいつ、勝手に動いてピンチになったりするだろ」
 真島が左手でイヤホンを装着し、つながっているムービーガイドを手慣れた仕草で操作する。同期しているプロジェクターが起動してオープニング映像を流し始めた。
 椅子の肘掛けに頬杖をついた姿勢で足を組み、千束が小さく息をつく。
「世の中、便利なもんができてるよねー」
「これもバランスさ。目の見えない哀れな人間にも映画の楽しみをってな」
 真島が使っているのは映画の内容をすべて音声で伝えてくれるガイドツールだ。セリフや効果音だけではなく、情景や人物の動きや背景なども教えてくれる。千束も興味本位で一度試してみたことがあるが、目で見るのとはまったく違った体験だった。それでも確かに映画を『理解』できる。なかなか新鮮な経験をしたと思う。
 ふたり並んで、一方は見えすぎる目で、一方は聞こえすぎる耳で映画を楽しむ。
 架空の都市の架空のビルが崩れ落ちるシーンで、千束が軽く口を開いた。
「真島サンさあ、なぁんで延空木に爆弾仕掛けなかった? あそこで花火じゃなく爆弾が爆発してたら、たきなも私も助からなかったよ」
 イヤホンで両耳をふさいでいるのに、真島はさして聞き取りにくそうな顔もせず、見えない目を前に向けたまま答えた。
爆弾それじゃあ、俺の手でお前を殺したことにならねえだろ」
……ふふっ。熱烈じゃん」
「もちろんさ」
 今でも隣のこの男はチャンスがあれば錦木千束の命を奪いたいし、それを隠そうともしていない。囚われの身でずいぶんと傲慢な態度だったが、千束は不快感を覚えてはおらず、むしろ愉快に感じてすらいた。無論、むざむざと目的を達成させるわけもない。それでもこの男の目的自体は面白いと感じてしまうのだから始末が悪い。だから誰にも内緒だ。特に相棒には知られちゃいけない。知られたら烈火の如く怒るに決まっているのだから。
 プロジェクターが映す物語では、家族を悪党に殺されたヒーローが犯罪を撲滅するべくテロ行為をしている。そんなヒーローに憧れて慕う少年の目は純粋だった。
「次は蜘蛛のヒーローのにしようかな。あっちのほうが好きなんだ」
「あぁ? お前、あのヒョロい陰キャが好みかよ」
「しなやかで優しいって言うんだよ、ああいうのは」
「ったく、どこまでも気が合わねえな、俺の運命とは」
 ぬるい缶コーヒーを飲みながら、吸収が起こるギリギリの位置関係で二時間。
 錦木千束の髪と瞳はすっかり灰に染まって、白黒どっちともつかない中途半端な色はとてもじゃないが似合ってるとは言えなかった。


 喫茶リコリコはちょうど客の入れ替わりのタイミングだったのかほとんど人がおらず、遅番で入った千束が元気良く挨拶してもミカしか応えてくれなかった。
「どうだった?」
「なーんもなし。いつもどおりだよ」
「あ! 千束!」
 不意に裏から大声で呼ばれた。思わず苦笑い。引き戸の向こうからまろび出てきたたきなが千束の髪を見つめて顔を真っ赤にする。
 両腕で捕まえられ、ぐいぐい引っ張られて奥座敷まで連れていかれた。
「クルミ! 千束が帰ってきました、さっさと色抜きリムーブしてください! 早く!!」
 一大事とばかりに叫ぶたきなに苦笑しか出ない。きっとカウンターにいるミカとミズキも同じ表情をしているに違いない。この半年、欠かさず繰り返されたやり取りだった。
 クルミもうんざり顔で押入れを開けてきて、たきなをねめつけている。
「も〜毎回毎回うるさいな。僕が抜かなくてもどうせ二、三日で自然に抜けるんだからいいじゃないか」
「二日も三日も待っていられるわけないでしょう!?」
「あーごめんクルミ。手間かけさせちゃうけど、ここは千束さんに免じて、たきなのお願い聞いてあげて」
「まったく……仕方ないなあ」
 怠惰な動きで押し入れから這い出てきたクルミが手招きをしてきたので、背の低いクルミに合わせて中腰になりながら頭を差し出した。袖から出した手でくしゃりと髪を撫でてくる。クルミの手が千束の髪を撫でるたびに薄墨で塗ったようなくすんだ色味が薄れて、本来の金に近い白髪に戻っていった。
 地下室で自由を奪って閉じ込めている以上、ストレスがかからないわけがない。コーヒー片手に話し相手になろうが、映画を見せてやろうが、真島に負荷がないわけがなく、それは放置していればあの男を見殺しにするのと同じ意味になった。『いのちだいじに』は誰に対しても適用される。だから定期的に真島ペインターの色を取り除いてやる必要があるのだが、それがたきなには耐え難いらしかった。
 白髪と柘榴の瞳を取り戻した千束の姿に、ようやく少し落ち着いたか、たきながずっと掴んでいた千束の制服の袖を離した。
「DAに引き渡せば話は早いのに……
 苛々と足踏みしながらひとりごち、不機嫌そうな手付きでたすきを結び直すたきなの頭を、千束がどうどうと抑えるように撫で回す。
「それじゃ殺されちゃうでしょー? まあ、いつまでもこのままってわけにもいかないけど、少なくともDAに報告するのはナシ」
……じゃあ、店長もキャンバスなんですから、店長にしてもらうとか……
「先生の足だと地下室まで降りるの大変じゃん。それに真島が逃げようとしたら先生だけじゃ厳しいっしょ」
 むにぃっとたきなの頬を両手で揉んでやりながら冷静に答えていく千束。さっきからたきなの瞳が青みがかってきている。撫でるだけじゃ足りないかも。胸中でぼやきつつ、それでも手のひらをたきなの肌に滑らせていく。
 相棒のペインターは厄介なもので、千束が灰色を吸収するたびに激昂しては自分の内側に色を溜めてしまって調子を崩す。敵の命を守るために相棒の体調を犠牲にしては本末転倒だということは千束も分かっていて、かといって他に方法もなく、せめて、こうして千束がたきなの色を引き受けることで贖罪としているのだった。
「だいたい、なんであいつが千束の運命セットなんですか」
「そんなの私に言われても知らんよぉ。勝手に決まっちゃうんだからしょうがないじゃん」
 たきなの顔が青くなってきて、しかしそれはペインターの特性とは関係がない。単に気持ち悪くなっているだけだ。色を溜めすぎている。ああ、これはいかん。千束がやや強引にたきなの身体を引き寄せた。もうあまり力が入らないようで、華奢な身体はあっさりと千束の腕の中に包まれる。
「おいおい、大丈夫か? 千束はさっき真島の吸ったばかりだろう。ミカを呼んでくるか?」
「クルミが抜いてくれたから平気。私がやるから大丈夫だよ」
 押し入れに戻っても二人の会話は聞いていたらしく、心配そうに声をかけてきたクルミに首を振って見せて、「ほら、たきな。千束さんとハグしようハグ」抱き寄せたらなぜか抵抗された。青い顔で腕を突っ張り、駄々っ子みたいに唇を引き結んでいる。
「この程度は問題ありません。そこまでしてもらわなくても支障は出ないはずです」
 そばにいる程度の吸収で充分だと言い張るたきな。さすがにそれは説得力ゼロだな、とクルミが表情で語る。透徹した紫水晶みたいな瞳は濁って、油絵の具を雑に乗せたような不透明の青に変わっている。体表変化を起こしておいて支障がないもなにもない。
 いつもの効率がどうだ合理的な判断がどうだという主張はどこに行った、と言いたいのを我慢して、千束はゆるゆるとたきなの髪を撫でた。
「んー、でも、千束はたきなとハグしたいので、させてくれたらすごく嬉しいんだけどな〜」
…………
「たーきーなーさん」
……し、仕方ないですね。千束がそこまで言うなら」
 千束が頼み込んできたからしょうがなく、という姿勢を崩さずに、たきなが不承不承という表情でうなずいた。かわいいなあこいつ、と思いながら千束は青い少女を抱きしめる。
 うなじに触れると少しだけ冷たかった。両腕で包み込んで温めてやる。撫でて頬ずりをするたびに舌先がしびれた。純粋な青が無色を染めていく。他になにとも言いようのない、ただただ単純に「青」としか言えない青だった。うがった形容も洒落込んだ描写もない、物にも者にも替えられない、空にも海にもならないただの青だった。そんなたきな無色千束はただ受け入れる。
 内側が染まっていくのを感じ取る。それは淡い淡い熱だ。灰色の焼け付くような鋭い熱とは違った、夏の夜の灯籠みたいな熱だった。
……あの、千束。……手」
「んー? ん」
 たきなにせがまれて背中に回していた腕を下ろし、彼女の手をそっと握る。接触は一方的だ。お互いに手をつなぐのではなく、だらりと下がったたきなの手を、千束の手が外側から包む。手の甲をゆるりとすべって、指の付け根をひとつずつたどって、きれいに揃えられた四本の指それぞれに逆順で指を重ねる。絡みもせず、蠢きもせず、水流に手を浸すように、そっと触れている。
 しばらく大人しく吸収されていたたきなが、遠慮がちに身を引いた。
「も、いいです」
「まだだーめ」
「もう充分ですから」
 頑なに言い張るたきなには苦笑するしかない。
 たきなが色の浸潤を嫌がることはとっくに知っていた。ほんとうの色が一番似合うからと。薄く金にけぶる髪と、いくつもの赤を内包した柘榴の目。それが一番いいのに、つまらない青で染めてしまうのが嫌だと、いつかの折に告白されていた。それでももうひとつの心は千束以外の誰かに己の色を奪われたくはないとも思っていて、そうやって相反する想いを抱えたままでいる相棒をいつだって千束はやや強引に吸い上げる。
「たきなの色、きれいで私は好きだけどな」
「いや、千束からは見えないでしょう」
「見えなくても感じるんだよ。ドントシンク、フィィィィル。ってね」
「はあ……?」
 後半の口真似はまったく通じていなかった。真島だったらこちらを指差すくらいのことはするだろう。ああそうだ、気になっていた映画が配信サービスに追加されていたのだった。そのうち見ようと思い立って、それから、さて、『誰』と見ようかと迷う。
 千束の髪が半分ばかり青く染まったところで吸収が止まる。たきなは不甲斐なさそうな表情で千束から離れると、「すみません」と小さく謝ってきた。
「まだまだ修行が足りませんね……
 激昂を千束に吸い取られて冷静さを取り戻したようである。千束は軽く肩をすくめただけで言葉をかけなかった。
 たきなは自己嫌悪に眉をひそめながら考え込んでいる。
「DAの特別強化訓練を受けたほうがいいでしょうか。確か、メンタルトレーニングも課目にあったはずです」
「いいよそんなのぉ。それよりリコリコのお仕事がんばろうよ。ほら、人の役に立てたらストレスもパーッと消えちゃうでしょ」
 ほれほれ、と先日イベントの手伝いをした保育園から送られてきた動画を見せる。園児たちが並んで二人に御礼の言葉を届けているその動画は、もちろんたきなも同じものを持っていたが、こういうのは何度見たって嬉しいものだろう。
 やっぱりたきなの表情も緩んで、「そうですかね」と気の抜けた声で応じてきた。「そうそう」ビジネスライクにこなしていた頃に比べればずいぶんな進歩だ。下手にDAのメンタルトレーニングなんて受けて、また組織の合理性が云々などと語るようになっては堪らない。
「さて、と。それじゃあ千束さんも着替えてお店に出ますかね。たきな、そろそろ伊藤さんたちが原稿しに来る時間だからホール片付けて、お座敷の準備しといて」
「はい」
「クルミも。今週一度もお店手伝ってないでしょ」
「どうせ客もほとんど来ないんだからいいじゃないか」
「そういうこと言わない」
 最近はDAからの依頼も小康状態でクルミの本来の仕事だってないに等しい。個人的になにか調査をしてはいるようだが、匿うかわりにこちらの仕事を手伝ってもらうという約束を反故にさせるわけにはいかない。
 半ば無理やり押し入れから引っ張り出して更衣室に放り込む。そこまでしてようやく諦めたか、クルミが嫌々ながら着替え始めた。
 千束も自分のロッカーからリコリコの制服を取り出して着替え始める。先に着替え終わったクルミが隣までやって来てこちらを見上げた。
「それも抜いてやろうか?」
 青く染まった髪色を指差して言ってくるのに、「んー」口元だけで笑い、首を横に振る。
「いいよお。どうせみんな、たきなの色だって知ってるから変にも思われないしね」
「難儀だよな。真島はお前しか吸収できないわ、戻ってくればたきながへそを曲げてまた吸収する羽目になるわ」
「ま、私けっこう容量でかいみたいでどっちの色も吸い取っても問題ないから平気よ。たきなさんが珍しく甘えてくるのが可愛いしね〜」
 ペット扱いか、とクルミが呆れた顔をした。千束はかまわずワンピースの上着を脱ぎ、ロッカーにかけてブラウスのボタンを外す。
「やっぱり、僕が消去アンサインしたほうがいいんじゃないか。そうしたら裏でキャンバスを雇って真島の世話をさせられるだろ」
 クルミのぷくぷくした手の人差し指が伸ばされて、己の左の鎖骨の下をトンと叩いた。そこに何があるのか彼女は知っている。
 たきなに内緒にしていることがふたつある。
 ひとつは真島を実はけっこう気に入っていること。
 もうひとつは。
「しかしまあ、真島の色が目立たない灰色で良かったな。これならパッと見じゃ気づかない」
 開いたブラウスの隙間から下着と鎖骨が覗いている。それから、左の鎖骨の下に染みた、灰色の紋様。
 鎖模様のそれを指先で撫でて顔をしかめた。
「って言っても、解消したら確実に逃げるからね、あいつは」
「僕のセキュリティが破られるとでも?」
「そこを信用してないわけじゃないけどさあ、あいつ地下室の中で爆弾使っても生き延びそうじゃん」
 建物ごと吹き飛ばして脱出する可能性もなくはない、と真剣に訴える。クルミもまさかと言いたいところだが、ロケットランチャーの砲弾が直撃してもピンピンしていたり地上数百メートルから落ちても生きていたりする事実を思い出して、安易に反論もできずただ唸った。
「今のところ、これが最善なのよ」
「たきなを泣かせておいてか?」
「なか……たきなが泣いてるところなんて見たことないけど? ああまあでも、怒ってはいるか」
「そういう意味の『泣かす』じゃない」
 深々と嘆息をして、斜めにねめつけてくるクルミ。その視線に、思いがけず喉が締まった。
「ま、精々たきなに染色ステイニングを知られないように気をつけるんだな。今でさえあれだけ暴れるんだ、これでお前と真島が染色してるなんて知ったら……
「クルミ!」
 ステイ! 咄嗟にクルミの口を手のひらでふさぎ、細い首を抱え込んだ。「もが!」いきなり拘束されたクルミは訳が分からず目を回す。
 クルミからは死角になっていた店舗側の引き戸が指二本分くらい開いている。光が洩れて、爽やかな青色の和服が見えていた。それからふたつにまとめられて胸元に落ちる黒髪も。
 クルミを押さえ込んだまま、まんじりともせず様子を伺う。
 勢いよく引き戸が開けられた。スパンといい音がする。クルミもようやく事態を把握したらしく、首を締めている千束の腕を叩いて解放を求めた。そこで千束が腕の力を抜き、小柄な身体がするりと抜け出す。
 扉の向こうに佇むたきなは無言だった。微妙な空気が三人の間を流れていく。スタスタと歩いてきたたきながだらしなく開いた千束のブラウスを掴んだ。あ、と思ってももう遅い。さっきからクルミとじゃれていた間もボタンは開けられていて何も隠すものなどなかった。
…………
「あ、あのー、たきなさぁん……?」
 灰色の鎖模様からたきなの視線が動かない。下着とブラウスだけという、なかなか扇情的な格好の千束だが、極限まで緊迫した空気にそれを恥じらう余裕もなかった。
……刻名クレジット
「いや、これには深いわけがありまして……
 事情を説明すればきっとたきなも分かってくれる。なぜならこれは効率と合理性を求めた結果なのだから。このふたつが揃っていてたきなが納得しないなんてこと、あるわけがない。
 己の思考が希望的観測だということは痛いほど理解しながら、千束は首筋を伝う脂汗に気づかないふりをし続けた。視線の先でクルミが両手を合わせ固く目をつぶっている。「ごめん千束!」言葉ではなく態度で謝ってくるクルミに小さく首を振って、「とりあえずお店お願い」手振りで伝え、忍び足で更衣室を出ていくクルミを見送る。
 たきなは固まったままでいる。キャンバスの皮膚表面に浮かぶ刻名クレジットはペインターとの契約証明である。お互いをただひとりと認めて、深く結びついた何よりの証拠だ。
「染色、したんですか」
「しょうがないんだって。染色しておけば真島の色は私しか吸収できなくなるから、あいつは私から離れるわけにはいかない。それにあいつと私は運命セットだからね。たとえ逃げても染色していれば必ず引き合うことになる。あいつを自由にさせないためには、これが一番効果的ってわけで」
 いっそ美しささえ感じるほどの合理性だった。錦木千束の選択においてここまで合理的なものもそうそうない。大抵、ノリと好みで選ぶので。
 方程式みたいに美しい理由を並べ立て、千束は胸ぐらを掴まれたまま胸を張る。このとおり、凶悪なテロリストを逃さないためのこれ以上ない手段なのだと主張すると、たきなの手から力が抜けた。
……わかりました」
「お、おう。分かってくれた?」
 俯いたせいで表情が見えなくなったたきなの肩に手を置いて、そっと下から顔を覗き込む。
 無表情と言っていいのだろうか。無表情という表情すらない。目鼻口すべてそろっているはずなのに、千束はそこに真っ暗な穴が空いている錯覚をした。
「そういう理由なら仕方ありませんね。真島は世界を混乱に陥れるテロリストですし、DAに引き渡さない以上、我々が監視するしかありませんから」
「う、うん」
「たとえそのために千束が真島と染色ステイニングしたとしても、そのせいで千束の身体に真島の色が一生ついてまわるとしても仕方ないですね。わたしのは数日で消えますけど」
「た、たきな〜」
「ああもし真島が死んだら千束に穴が空くことになりますね。撃たれて穴を空けられて、魂にも穴が空くんですかあなた。穴だらけですね。二度と埋まらないのに」
 わたしでは埋められないのに。
 そんな空洞ものを他の誰かに許して。
「やっぱ怒るじゃぁん……
 静かな激昂に手を出しあぐねて中途半端な位置で止まった両腕がいやに重い。なんとなくブラウスの襟元を引っ張って鎖骨の下に刻まれた紋様を隠した。見えなければいいというものでもないんだけれど。見せなければいいと思っているわけでもないんだけれど。
「DAに引き渡せなくなりました」
 たきながポツリとこぼした言葉に思わず肩が落ちる。
「狙ってたなキサマ」
「殺さなくても、DAの監視下で投獄しておくことはできるんじゃないかと」
「無理でしょ。まだ真島がばらまいた銃は全部見つかってなくて、後始末に大忙しなんだから。DAにしてみれば、情けをかける余地がない」
 落ちたままだった千束の肩に、力なくたきなの額が押し当てられた。彼女の仕草があんまり幼くて、千束は珍しくも不意をつかれて反応が遅れる。
「前の、は、ふさがりましたけど。二回もあなたに穴が空くのは、嫌です」
 たきなが拗ねたように額を押し当ててくる左肩。そこにある傷跡を思う。
 失望とともに撃ち込まれた銃弾は千束にとってはなんの意味もないものだった。爆弾を止めるためにあの男に背を向けたのも、それが失望を呼んだのも、あのときは本当にどうでも良くて、手を伸ばしてスマートフォンを掴む、それが最優先だった。
 あんな弾丸ものより、あの呼び声のほうが、ずっと。
 気づくことはないんだろうな、と半ば諦念のようなものを感じてもいるけれど。
 そうやって子供みたいに拗ねてくれたから、ようやく千束は彼女の首に腕を回せた。
「まーまー。真島をどうにかできたらクルミに反故アンサインしてもらうからさ。それまでちょっと我慢して。なんにも変わんないよ。これはただのGPS代わりっていうか」
……分かってます。すみません」
 カラリと小さな音がして引き戸が開く。目を向けるとミズキが呆れ顔でこっちを覗いていた。そういえば遅番に入る時間はとっくに過ぎている。小言のひとつも来るかな、と身構えたら、彼女は「風邪引くぞ」と低い声で言い、それから両手を腰溜めにして顎をしゃくった。
「もう今日はいいから二人とも帰んな。たきな、目ぇ真っ青よ」
「え? ちょっとたきなよく見せて」
 ずっと俯いていたたきなの顎を捕まえて無理やり上を向かせる。たきなは抵抗してきたけれど、さすがに首の力だけで両手には抗しきれず、力比べに負けて首を上げた。
 ミズキの言う通り、たきなの両目はさっきとは比べ物にならないほど鮮やかな青に染まっており、とっくに危険水域まで達していることは明白だった。
「うわー!? おま、今めっちゃ気持ち悪いだろ! なんで我慢すんの!」
 言い返す気力もないらしいたきなを抱えていったんミズキに預け、急いで制服を着直してまた汗だくの身体を受け取った。
「いいです……、病院行ってきますから、千束は仕事しててください」
「駄目。たきなは私と一緒におうち帰るの」
 一緒に暮らしてるわけじゃないでしょう、と、消え入りそうな声だけれどいつもの調子が見える様子で言ってきたから少し安心した。
 ちょうどいいからしばらく同棲しようよ、とは言わなかった。



 接触している範囲が広いか、接触の際のインパクトが大きいほど吸収効率が良い。
 というわけでたきなを膝に乗せて抱きつかせた。「そこまでしなくても平気です」「膝から退く元気もないくせに何言ってんの」両腕で背中を包み込み、ポンポンと寝かしつけるみたいに優しく叩く。乱れていた呼吸も次第に平静へと復してきた。
 抵抗を諦めたのか、たきなが千束の肩に力なくもたれて息を吐く。
「転属前は病院のお世話になったことがほとんどありませんでした」
「ん?」
「何ヶ月かに一回、漂白ブリーチしてもらうくらいで済んでて。他のリコリスが任務のたびにケアを受けてる横で、わたしは連続で任務をこなしてました。それが、けっこう自慢だったんですけど」
 自慢だったというわりに彼女の口調は自嘲気味だった。自慢というか、自負だったのだろう。転属前ならDAからの評価に誇りを持っていた頃だ。本部のリコリスが暮らすあの寮を憧れだったと言った彼女を思えば、どんな様子だったのかなんとなく想像はつく。
「でも今はこの有様です」
 相棒が気に入らない相手とちょっと関わっただけでこれだ、と、己のいじましさに呆れているよう。すぐ横で同僚が撃たれて死んでも増えなかった青が、今は許容量を超えた証である染瞳せんとうまで起きている。
 もたれかかっているから千束からはたきなの顔が見えない。背中に手を添えたまま、たきなの体重に押されるようにソファの背もたれに沈んで天井を見上げた。
「嫌なの?」
「嫌というか……自分が情けなくて。千束にも迷惑をかけてますし」
 千束は喉の奥で笑うと、「気にすんなよぉ」と気楽に言った。「気にしますよ」たきなは正反対のうんざり顔だ。
「相棒なんだから迷惑かけていいのよ。迷惑じゃないけど。私は君の役に立てて嬉しい」
 キャンバスとペインターが同数になるようにチームを組むのがDAの規則なのに、千束は例外的に単独で仕事をしていた。一緒にいるミカもキャンバスだったし、ミズキはギャラリーだ。色落ちフェードで体調を崩すことはなかったが、山岸医師に定期検診のたびに染料剤を注射されていたので、実はこうして吸収するのは千束にとっても有意義なのだった。
 落ち込んでいるせいか、たきなの増色ぞうしょくは止まる気配がない。増えるそばから千束が吸い込んでいるから不調は覚えていないようだが、かといってこのままというわけにもいかない。千束だって無尽蔵に吸収できるわけじゃないのだ。
 千束が理由で色が増えて、その色を千束が吸い取って。
 なんつーマッチポンプだと内心で呆れる。これでたきなが恩に着るようなことがあったら最悪だ。あの花火くらいの最悪さだった。
 根本まで青く染まった髪をくしゃりと掴まれた。その苛立ちをなんとなく微笑ましく受け止める。それは井ノ上たきなの青さだ。まっすぐで未熟で暑い、彼女が生まれた季節の色。
「も、もういいです。その、千束といるといつまでも落ち着かないので」
「ん?」
「だから、体調も回復したしもう帰ります。ひとりで頭を冷やしたほうがいいでしょうし」
「えー? あ、じゃあ気晴らしに映画見る? それともクルミから借りたゲームやろっか? そうだ、こないだ読んだ漫画が面白かったんだ、たきなも読んでみない?」
 矢継ぎ早に提案すると、膝の上の彼女は訝しげに唇を結びながら首をかしげた。
「いえ、帰ります。そもそも今の状況、千束といるからわたしの色が増えるのであって、このまま帰宅すれば落ち着くはずです」
 この合理的な判断になにか文句でもあるのかと見下ろしてくる視線に言われ、千束もうっかり言葉を呑んだ。マッチポンプについて胸中でぼやいたのはついさっきの話だ。
 まあ、自分のことなのだし、たきなだって気づかないはずがない。そして彼女の性格を考えれば、そう言い出すことだって予定調和なのだった。
 分かっていつつも千束はたきなの腰を捕まえて離さなかった。
「ま、そう言わないでよ」
「千束?」
 ぽん、となにかを伝えるように優しく腰を叩いた。
「もっとたきなといたいから帰らないで。って言わないと分かんない?」
 たきなの喉がか細く鳴る。
 しばしの無言があり、千束の心臓はいつもどおり無音で、そんな静寂の中でたきなの鼓動が響くかといえばそんなことはなかった。
 百やそこらの心拍を刻む彼女に頬を両手で包まれる。その手には抗議の意味が含まれていた。
「どの口が言うんです?」
 自覚しているのかどうなのか、彼女の瞳は「この浮気者」と切実に訴えていて、それが左の鎖骨の下にある刻名クレジットのことだと分からないわけもなく、千束は眩しそうに目をすがめる。
 先ほど説明したように千束にとってそれはただの手段だ。凶悪なテロリストを自由にしないための方法のひとつでしかなく、不要になればすぐに解除する程度のものでしかない。
 それを彼女は嫌だと言う。
 その根底にある理由が、相手があの男であるからなのか、それとも、自分以外﹅﹅﹅﹅だからなのか、どちらなのかで瞳の意味はずいぶん変わって……
──ああ、そっか。
 不意に理解して胸中でつぶやいた。
 頬を包まれたままそっと抱き寄せる。
「ごめん」
「千束?」
 バランスが悪いんだよ、お前ら。真島がいつか言ってきたことがある。お前はなんにも分かっちゃいねえし、あいつはなんにも言えやしねえ。
 だから俺と組んでバランスを取れよ。そんな提案を一蹴したのはいつだったか。
「たきなは、そういうのなくていいと思ってた。だって相棒だもん。契約がそんなのなくてもたきながここを居場所に選んだから、それでいいんだと思ってたよ。心が通じ合ってるっていうかさ。そっちのほうが強いと私は思ってて……。けど、そんなのはただの私の甘えだ」
 ミカはそうだった。一緒に来てほしいと頼めば来てくれたし、そばにいてほしいと頼めば他のリコリス全員を置いてそばにいてくれた。やりたいことをさせてくれて、どんなことにも約束なんて必要なく、早すぎる死すら受け入れてくれた。それは格別の愛情だった。正しさとは無縁の、ひどく盲目的な愛情である。
 同じことを、この友人に求めるのは筋違いだ。
 そうだ。だって彼女は諦めなかった。
 膝の上にいる相棒を青く染まった目で見上げて、静かに口を開く。
「たきなも書く?」
「え……?」
「何を使ってもいいし、どこに書いてもいいよ」
 青い署名を、この身体のどこに残そう。
 どこだって良かった。
 胸を開いて無機質な心臓に刻んだって構わない。
 誠実に訴えたのに、たきなはしんしんと降る雪みたいな視線になっていた。
「千束。ほんと馬鹿ですね、あなたは」
 こっちのこと散々アホだのバカだの言っておいて、人のこと言えないじゃないですか。
 本質の激しさに似合わない雪みたいな視線が千束の胸を冷やす。
……だめ?」
「全然だめです。零点です。養成所からやり直してください」
「厳しいなあ」
 千束の髪も瞳も青くて青くて、けれどそれはどれだけ濃くても数日もすれば消えてしまう。
 たきなの手が頬から離れて少しずつ降りてきた。
 消えない青を刻みたいのではなく、消えない灰色の署名を削り取らなければ意味はないのだと、強く押しつけてくる指先が伝える。
「じゃあ、そっちにしようか」
 首元のリボンをほどいて、上着と下のブラウスのボタンを外して開けてみせる。大きく開いた胸元の灰色を見つけたたきなが顔をしかめた。
「痛くしても?」
「どうぞー?」
「八つ当たりですよ?」
「いいよ、たきなならね」
 何を使ってもいいし、どれほど深くてもいい。
 お好きにどうぞ、と差し出した首はそのままに、井ノ上たきなは錦木千束の左の鎖骨の下に赤い赤いラインを引いた。


 両手にどっさり抱えた紙袋の音に、ドアの向こうの虜囚は怪訝な顔をする。「最後の晩餐か?」そこそこ冗談でもなさそうな口調で問いかけてくる真島に、「へっ」と嘲笑じみた吐息で答えた。
「近所に新しくできたハンバーガー屋さんがおいしそうでさー。しかも限定メニューがいっぱいあったから迷っちゃってつい買いすぎた。一人じゃ全部食べきれないから手伝ってよ。あ、ハンバーガー嫌い?」
「いや、わりと好物……ってそういう問題じゃねえだろ。どんだけ買ってきたんだよ」
「えーと、ひーふーみー……うん、あんた図体でかいしいけるいける。飲み物はジンジャーエールでいい?」
 鼻歌交じりにどさどさとバーガーを積み上げる千束。真島は自由になる左手で額を押さえた。それでも嫌だとは言わなかったので、それを了承の合図として、引っ張ってきた椅子を真島の対面に置いて腰を下ろす。さすがに音だけでハンバーガーの種類は分からないだろうと、千束がひとつずつ包み紙に書かれた商品名を読み上げていった。
「どれがいい?」
……ベーコンチーズバーガー」
「お、王道行くねえ。じゃあ私はこの青じそおろしバーガーにしてみよっかな」
 包み紙を半分剥いたベーコンチーズバーガーを真島の手に持たせ、次いで自分のバーガーを開く。「全部食べるなよ、半分こだぞ」「わぁったよ」
 真島が大口を開けてかぶりつくと、食欲をそそる肉汁の匂いが鼻腔をくすぐった。冷めないように急いで運んできてよかった。まだ温かいバーガーに千束も行儀悪くかじりついた。こういうのは行儀を気にしていたらおいしく食べられない。たきなはいい顔をしないだろうし、またカロリーがどうとか言ってくるに決まっているので、うず高く積まれたハンバーガーはここで証拠隠滅してしまわなければいけない。
 強引に共犯者にされた真島はパンと肉と肉と野菜とチーズを黙々と頬張っている。「うめぇなこれ」二週間前に殴った時の裂傷は跡形もなく治っていた。
「あああちょいちょい食い過ぎ! はい、交換」
「見えねえんだからしょうがねえだろ……お、こっちはさっぱりしてて食いやすいな」
 バランスがいい、と面白そうに笑う。千束も真島からぶんどったバーガーにかぶりついて、濃厚なチーズの風味とベーコンのパンチの効いた味付けに舌鼓を打った。
「こっちもうまぁっ。あ、サイドメニューもあるよ。ポテトとチーズボールと、こっちがオニオンリングね」
「なんで揚げ物しかねえんだよ。サラダとかなかったのか?」
「ジャンクフードと炭酸はアメリカ映画のお約束でしょ」
「レタスとトマトが入ってるからハンバーガーはヘルシーだ。ってか?」
 真島のジョークにくくっと笑う千束。「そうそう。分かってんじゃん」我が意を得たりとばかりにうなずいてやる。灰色の男は残ったバーガーを口に押し込んで、空になった包み紙をくしゃりと潰した。千束が身を乗り出して真島の口端についたマヨネーズソースを紙ナプキンで拭いてやる。真島は千束の動きの理由が分からないわけでもなかったろうに、避けもせず大人しくしていた。
「おいおい、ガキじゃねえんだぜ?」
「ああごめん。見えないから分かんないかと思ってさ」
 買い込んできたハンバーガーを半分ずつ分けて食べていく中で、真島がオニオンリングを縦に﹅﹅重ねていくのを大はしゃぎで見守ったり、あまり好みの味じゃなかったバーガーをひと口食べただけで真島に押しつけて文句を言われたり、代わりに真島の嫌いなものが入っているバーガーを引き受けたり、「残ってる銃の在り処教えろよ」「場所は部下に任せたから分かんねえな」と話したりした。
 お互いに三つ目を食べ終えたあたりでみるみるうちに食事のスピードが落ちていって、一休みとばかりにサイドメニューをもそもそつまみながらジンジャーエールを流し込む。
「あと二個かぁ。真島さん、ちょっと腹ごなしにゲームやんない?」
 チーズボールをずいぶん長いこと咀嚼していた真島が、「かまわねえが」とうなずいたので、脇に置いてあった鞄から二つ折りにされたケースを取り出した。開けばすぐにゲーム盤になるすぐれものだ。
「マンカラ知ってる?」
「ああ」
 それなら話が早い。色とりどりのガラス玉をゲーム盤の穴に入れて準備をしていく。玉の色はゲームには関係ない。真島にも影響しないし、千束が有利になることもない。
 ちびちびとジンジャーエールを飲みながら玉遊びをする。単純なルールだし、木製の盤にガラス製の玉だから音がよく響く。真島にも遊びやすいだろうと思ってこれを選んだのだけれど、正解だったようだ。
 遊び方も簡単だ。穴に入っているガラス玉を取って別の穴に入れて、自分の陣地から玉がなくなれば勝利。片手だけあれば充分だし座ったままでなんの問題もない。真島は背もたれに身体を預けてだらしなく足を広げており、千束は逆に前かがみでテーブルに頬杖をついている。
 一ゲーム目は真島が勝って、次のゲームでは千束が勝利した。三度目の勝負は五分五分で進み、追い詰められた千束が破れかぶれの手を打って見事に撃沈する。
「うぬぬ……!」
 悔しさに唸る千束の前で真島が悠然と足を組み、つまみあげたガラス玉を穴に放ってカチリと音を立てた。
「追い詰められると運頼みの適当な手を打つ……リサーチ通りだな」
「なんだそれ」
「うちのハッカーのありがたい助言さ」
「ロボ太かぁ? そういえばあいつ、司法取引に乗ってホワイト転向したらしいよ。専用のパソコンまでもらってネット犯罪の捜査に協力してるって」
「らしいな」
 真島が残っていたバーガーを掴む。ゲームをしている間に小腹でも空いたのだろうか。残っていたのはなんだったっけ、確か柚子胡椒バーガーとエビカツバーガーだったかな。
 などとどうでもいいことを考えてしまったせいで気づくのが遅れた。
……『らしいな』? ネット環境なんかないのになんであんたが知って」
 瞬間、千束が本能的に飛び退る。投げつけられたハンバーガーが背後の壁に当たってべちゃりと潰れた。一瞬後には真島が組んでいた足を振り子のように回してテーブルを蹴り上げていた。銃を取り出す。構える。飛び散ったガラス玉がキラキラと光を反射する。その向こうから真島の左腕がしなり、拳が迫る。千束は紙一重でそれを避け、胸元に引き寄せた銃の引き金を引く。直前で銃身を握り込まれて無理やり軌道をずらされた。そのまま引っ張られてテロリストが間近に迫る。
「お前がいつも持ってきてたガイドツールな、とっくにハッキングしてるぜ」
「!?」
「ダウンロードしたファイルにロボ太からのメッセージが紛れてたのさ。もちろん、俺にしか聞こえない、分析してもただのノイズにしかならない特殊加工された音声だ。お前が律儀に毎回持ってきてくれて助かったぜ?」
 思わず舌打ちする。確かにガイドツールにはネットワーク機能がついていて、それで毎回音声ガイドをダウンロードしていた。千束は電子戦に詳しくない。クルミにチェックを頼めばすぐに工作の痕跡くらいは見つかったのだろうが、ただの単機能端末だと思っていたから、そんな発想にまったくならなかった。
「最後の晩餐ってそういう意味かよ」
「ああそうさ。で、あと三秒。ニ、イチ」
 左手で軽快に指折り数える真島の背後で、鈍重な扉が外側から吹き飛んだ。
「また爆弾かよ!」
 咄嗟に顔をかばった腕を熱波が襲う。黒煙の向こうで真島のしゃらくさい笑みが見えた。
「っ、逃がすか!」
「遅え!」
 とっさに撃った非殺傷弾はわずかに外れ、その隙に身を翻した真島が一直線に階段を駆け上がった。毒づきながら千束もすぐに後を追う。
「悪いな運命セット! 今は俺のハッカーを迎えに行くのが優先だ!」
 「お前とはまた後で遊んでやるよ」いっそ優しささえ感じるような声で真島が言う。喧嘩を売られていることは明らかだったので、千束も躊躇なく銃弾を真島に叩き込もうとする。外に出られたら銃撃戦はまずい。DAが工作してくれるとは言え、先の銃ばら撒きの件で人々の意識が少しずつ変わっていた。女子高生が銃を撃つ姿をじかに見られるのはさすがにまずい。
 真島が階段を登りきり、通用口を開けて外に躍り出る。仕方なく銃をしまって追いかけるが、片腕を封じられて半年以上も閉じ込められていたとは思えない速度で真島が駆ける。「こんにゃろ!」ワイヤーを射出して捕らえようとしたがすんでのところで横を走ってきたバンに飛び乗られる。
「新しい仲間までいんのかよ!」
 いつの間にそんな裏工作を、とほぞを噛むがもう遅い。さしものファーストリコリスと言えど自動車に勝てる脚力は持ち合わせていなかった。
「あんにゃろぉ……解消アンサインは同意がなくてもできるもんなぁ。どっかで染色を解除されたらおしまいだわ」
 運命セットである以上は引き合うことに代わりはないが、同調が切れると格段に追いにくくなる。クルミとたきなにどやされそうだ。
 それにしても、ロボ太とそんな仲良かったのかあいつ。男同士、裏でこそこそやり取りしていたのかと思うと面白くなかった。校舎裏でセクシーなグラビアを回し読みしているクラスメイトを偶然見つけてしまった気分。学校に通ったことはないけれど。
 仕方なく喫茶リコリコに戻ろうとしたところでクルミから電話がかかってきた。「おい千束! セキュリティが破られたぞ!」「知ってる。ごめん、逃げられたわ」「はぁぁ!?」セキュリティを突破したのがロボ太だと知ったら卒倒しそうだ。クルミの魂属性ペイントコードがギャラリーで良かった。ペインターだったらどれだけ吸収しても追いつかなかっただろう。


「で、おめおめと逃げられたわけか」
 腕組みをして難しい顔をしているクルミが重々しく呟く。真島の逃走と時を同じくして、ロボ太が収容されていた特殊刑務所で蜂起が起こり、囚人の一割が脱走中だそうだ。もちろんその中には奇妙な被り物をしたあの生意気な小僧もいる。今度こそ再起不能になるまで叩き潰す、とクルミが息巻いていた。
 まだ真島との同調は解かれていない。浮かれた感覚が微弱に流れ込んできて不愉快だった。無意識に鎖骨の下を指先で撫でる。そこにある灰色はいつ消えるだろう。灰色が意味のない無為色むいしきになったとしても、その上から引かれた取り消し線クロスアウトはしばらく残る。
 それだけが救いかもしれない。
「どうすんの、千束。DAに頭下げてラジアータに探してもらう?」
「うぅ……まーた楠木さんに嫌味言われそう……
 お前のせいだぞー。ミズキに頭をペチペチ叩かれるけれど、反論もできないのでなすがままだ。「ミズキ、やめなさい」見かねたミカが止めてくれた。
「まあ、我々が真島を匿っていたのは事実だからな。そこを誤魔化すのは難しいだろう。私からも口添えするから、今回はDAと協力しよう」
 ミカが冷静に話していると、表から対照的な騒がしい足音が聞こえて、それが店の手前で一度止まった。中に客がいたらと配慮したものと思える。ゆっくりとドアが開き、店内に千束たちしかいないと分かった瞬間、入ってきたたきなが荒々しく千束に詰め寄った。
「千束! 真島が逃げたって本当ですか!?」
「あー……本当……
「追いかけましょう、今すぐ! 早く!」
「落ち着きなって。やみくもに探したって見つかんないよ。いまのところ私との染色は解かれてないみたいだし、今のうちに範囲を絞って……あ」
 じわりと、『抜けていく』感覚があった。自分の背骨の中にある空洞をずっと流れていた色が流出していく感覚。
 背中に誰かの指が入り込んできて、引きずり出されるようだった。
……切られた」
「ん、あ、刻名クレジットが消えたな。どこかでリムーバーを使ったか」
「あっちゃぁ、油断したわ。真島は観測者スキャナーじゃないからリムーバーを探すのに何日かかかると思ってたんだけど」
「脱走の協力者の中にいたか、事前に手配しておいたんだろうな」
 まあ、真島もそんなにのんきじゃなかったってことだな。どこかしみじみと言うクルミに肩をすくめてみせて、さてどうしたものかと考え始めた直後、たきなが胸ぐらを掴んできた。そのままひん剥かれそうになって慌てて抵抗する。
「ちょいちょいちょい、なにすんの」
「消えたんですか!? 見せてください!」
「ここでかよ! いやまあギリ大丈夫か……。ミズキ、お客さん来ないか見てて」
 入り口に背を向けて、制服のボタンを上だけ外す。ブラウスもまとめてはだけて、鎖骨が出る位置までで手を止めた。たきなは無意識だったのだろうか、千束の手を掴んで動かないようにすると食い入るようにあらわになった肌を見つめた。
 そこには赤い取り消し線しかなく、その下にあったはずの灰色は跡形もなく消えていた。
「ない……
「染色したままじゃ真島は私から離れられないし、しょうがないけどね」
「なんでちょっと惜しがってるんですか」
「そんなことないよ」
「いーえ、今千束はなんか淋しがってました! 『しょうがない』ってなんですか『しょうがない』って! どういうつもりですか、あいつは凶悪なテロリストですよ!?」
「真島を追いかける方法がなくなったけど、状況としてしょうがないって意味じゃわ」
 言葉の綾だ、と主張する千束に、たきなはまだなにか言いたそう。
 相変わらず真島のことになるとすぐ頭に血がのぼる。完全に言いがかりだと千束は思うんだけれど、どうせ言っても聞かないだろう。とはいえ、このままにしていたらまた色が溜まってしまう。さりげなく掴まれた手から色を抜いてやりながら、千束は「どうどう」とじゃじゃ馬を抑え込んだ。
「真島は捕まえるし、今度こそ決着をつけるよ。そのために力を貸して、相棒」
…………
 まだなんか不満そうだった。少し押しが弱かったのかもしれない。
「なんでそんなにあの男にこだわるんですか」
「えぇ……? そういう話じゃなくない? 運命セットだから私が一番見つけやすいんだって。ロボ太もどうせ合流してるだろうし、そっちはうちのクルミさんに頼むのが一番でしょ? ほらほら、合理的、合理的」
「ほら、そうやってまた運命セットの話を出す!」
 あ、なるほど、ここが逆鱗か。ようやく悟った。取り消し線を引かせたくらいでは収まらなかったらしい。
 ひとまずブラウスと上着のボタンを留め直してリボンを結び、弱りきった表情でたきなの肩に両手を置いた。
「それはそれ。あいつはただの追跡対象ターゲットってだけだよ」
 油断したら噛みついてきそうなたきなの眼差しを真正面から受け止めて、わずかに頬を緩める。
「たきながいっちばん大事」
「めっちゃ嘘くさいです」
「ほんとだって」
「じゃあ店長は?」
「うっ。先生はぁ〜……先生も一番かな〜……
「常連の皆さんは?」
「そ、そうだねえ、あの人たちも大事かな〜……
「ミズキさんは?」
「ミズキは別に?」
「おい」
「逆にミズキさんだけちょっと特別っぽくなってるじゃないですか」
 ああ言えばこう言う。そういえばいつぞやもこんなことがあった。何を言ってもたきなが言い返してきて埒が明かなかった、噴水前でのやり取りを思い出す。あれからずいぶん丸くなったと思っていたが、なかなかどうして、本質的なものはそう簡単には変わらないらしい。
 手に手を取って強大な敵に立ち向かうとか、そんな分かりやすい構図だったら彼女もここまでへそを曲げたりはしなかったんだろう。そんなにあいつと仲良くしてたつもりもないんだけどなぁ。胸中でぼやくけれど、余人には理解し難い関係なのかもしれない。
 にこやかにハンバーガーを食べた次の瞬間には全力で殴り合える。それを特別と言ってしまえば、そうなのだろうが……
「おーい。真島が乗ってた逃走車の乗り捨てられた場所が分かったぞ。ここから逃走経路をいくつか洗い出すからちょっと待ってろ」
 タブレットを眺めながら横入りしてきたクルミが画面の地図を指し示す。千束は渡りに船とばかりに飛びついた。
「お、さすがクルミさん、仕事が早いねえ」
「ちょろいね。といってもある程度時間はかかるからな、お前らはコーヒーでも飲んでゆっくりしてろ」
 だってさ、とたきなに水を向けると、彼女はまだ納得いかない顔をしていたけれど、クルミの成果に水を差すのも憚られるのかぐっと唇を噛み締めた。
「仕方ありません。経路が推測できたらすぐに出ましょう」
「オッケー。あ、たきなお昼もう食べた?」
「まだですけど」
「じゃあさ、あそこのハンバーガー屋さんでテイクアウトしない? 柚子胡椒とエビカツのどっちがいい?」
 「なんでその二択なんですか」以前一緒に店の前を通ったことがあるからメニューの豊富さはたきなも知っている。どうして最初から絞り込むんだと訝るたきなに、千束はスマートフォンで口元を隠しながら少し苦く笑った。地下室に置きっぱなしにしてしまったふたつの罪滅ぼしだとは、さすがに言えない。
「まあいいですけど。どうせそのふたつが気になってるんでしょう? どっちも頼んで半分ずつ食べましょう」
「ふひっ」
 思わず妙な笑い声が洩れてしまった。どいつもこいつも!
「なんです、変な笑い方して」
「んーん。そうだね、半分こしよ」
 ミカたちのオーダーも聞いてから二人並んでハンバーガー屋を目指す。
 半分こ、か。
 半分にできたら解決するんだろうかと考えたけれど、おそらく一方は半分じゃ満足しないだろうし、もう一方はバランスが悪いと文句をつけてくるだろうから、結局、灰色を刻んだり上から赤線を引いたりするしかないのだった。
 たきなに内緒にしていることがみっつある。
 ひとつは、すでに魂に焼き付いた灰色があり、それを消し去るにはあの男の命を奪わねばならないだろうこと。
 もうひとつは、青を嫌がる可愛い相棒の青さを実はかなり気に入っていること。
「ねーねーたきな」
「なんです?」
「全部終わったら染色ステイニングしようぜ」
……全部って、なんなんですか?」
「全部は全部だよ。そういう約束」
「意味が分かりませんよ。相変わらず、千束は謎だらけですね」
 呆れたように言うたきなはそれでも笑っていた。

 そしてみっつめ。
 錦木千束の無為色を塗りつぶすとして、何色にするかノリと好みで決めるなら、青がいいなと思っていること。