藤野 こまち
2022-10-12 00:25:33
1105文字
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さよなら、愛しき人

たぬみか を書きたかったらしい。刀解決定なたぬきと別れを惜しむ三日月の話

 じんわりと伝わる熱が心地よかった。あの轟々と燃えるような熱さはそこにはなく、彼の者には似合わない体温の熱だった。
 刀が体温を感じるなど以前であればおかしな話だが、今は肉の器を持っているのだ。滾々と流る命の奔流に我々は顕現させられ、生かされ、戦わされ、100も満たない赤子に使役され、今日まで保ちた。
 どんな物であろうと終わりというものは必ず訪れる。それが〈今日〉であっただけなのだ。
―――……
 繋ぎ目さえ分からない、溶けて一つになってしまったと思わせる程、緩やかな熱を交換し合っていた唇はそっと離れていく。細い糸が名残惜しげに伸びてぷつりと切れた。
「なぁ、正国。俺はお前を還したくは無いぞ」
 三日月は同田貫の首元に頭を擦りつけた。
「戦う事の出来ないモノに存在する意義なんてものはねぇんだ」
 同田貫は強い口調で言い放った。彼の兄弟たちは幾重にも折り重なって共に混ざり合ってきた。同田貫正国という器にたまたま形取ることが出来ただけなのだ。
 それを知る彼にとって役目の終わる人ならざる者の存在意義などただのガラクタでしかなかった。
「錆びちまったなら朽ち果てるのを待つだけだろ」
 三日月もわかっていた。錆びて使えない刀など好んで使うやつが居ない事ぐらい。
「あぁ、ひどい男だ」
 戦うことが生きがいではなかったのか。錆び切った刀身に諦めを見出すというのか。――愛する者を置いてまでお前は熔けるというのか。
「お前なんぞ、さっさと熔けてしまえ――
 恨みを溢して憎めない目の前の刀に嘯く。
「最後くらい素直になればいいものを、本当にあんた性格が悪い」
 視界が歪み顔を上げることなど出来なかった。声は震えて縋るように、小さく息づく。
「まさくに、」
 行かないで、置いてかないで、必要として
 離れがたい。千年近くも現世を見て、別れを惜しむことなどなかったのに。目の前の景色は弾け、頬に冷たい雨を降らせるなど。
「なぁ、笑ってくれてもいいだろう?」
 柔らかい声がする。愛おしい、大好きな音。
「宗近さんよォ」
 どうしてそんなに朗らかな笑みを見せるのだろう。炉に沈むお前を俺は見たくないのに、ひどい選択をさせる。
――あい、わかった」
 うつむいていた顔を上げる。
「さらばだ、同田貫正国」
 お前の旅路に幸あれと願いを込めて、笑って見送ってやろう。例えそれが業火であろうと。
「意外と楽しかったぜ、三日月宗近」
 その言葉を合図に審神者が祝詞をあげる。刀身は炎に飲まれその形を変えていく。きらきらと輝かせながら夢を現へと戻していく。
 そして、同田貫はあるべき場所へと還った。