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ダベミ
2021-10-03 21:00:29
15693文字
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ダブルハンターXの7話も妄想でできてますがどうですか?
元ネタを見返して泣きそうになったので初投稿です。
夜の、攻防。
「了」
力のない声が聞こえる。
「
……
平原さん、しっかりしてくださいよ」
外灯に照らされる不気味な姿を、僕らはただ見つめることしかできなかった。できなかったが、そこに確かにソレはいた。僕の記憶にはないが、伝え聞いた特徴はぴったり一致する。
了。【酒月 了】。既にいなくなったはずの人物。
それが、どうして、ここにいる?何かの能力、ひょっとして了は死んでなかった、いや、いや、いや。可能性はいくつも存在して、存在しすぎているからこそ理解が及ばない。
「説明すっと長えんだけどな。いや、やっと見つけましたよ」
「
……
なんで、お前が」『あ
……
?な、に
……
』
「まあ驚くのもしゃーねえすよね。俺はアンタの前じゃ死んでんだから」
「あ
……
」『そうだ、こいつは俺の前で、俺の
……
』
「なことよりぃ」
そんなことより?そんな、こと?
誰よりもお前を思っていたバディに、なんでそんなことを?
「や、今はいいんだっつの。俺は、ずーっと探してたんだぜ、終」
「僕を?」
どういう状況だ?なぜ僕がこの人に探されていたんだ?
訳がわからないことが多すぎて、二人して呆然としてしまう。思考がうまく行かない、何が起きているのか現実を処理しきれない。
「ああ。お前さえいりゃあ、全部丸ぅくうまく行くんだっつの」
平原さんじゃなくて、僕を、探していた?なぜ?その、少し前に聞いた計画とやらが関係あるのか?
【ロストパラダイス】計画。
日本を重火器ではない、超自然的能力で支配しようっていう、あまりに突飛でとんでもない計画が、何か関わっているのか?
「
……
動くな」
気が付いた時には、思わず口に出していた。そこからこちらに一歩でも近づいてきたらと思うと、背中に冷たいものが伝う。手に持った缶コーヒーをぶん投げて逃げ出したい気持ちになってきた。ああ、何だ今日は、厄日なのかな。
「了、なあ、了
……
お前は死んだ、あの日死んだんだ。」
平原さんはまるで別人みたいに、弱々しくつぶやいた。
眼前の彼が、信用できなかったのだ。
じわりと風景が滲む。心臓がバクバクと大音立てて振動するのがわかる。くらくらしてきた
……
僕も無事ではないようだ。全身に血はちゃんと回っているか?僕は両足で立てているか?
『本人にしか見えない。生きている、生きて立っている。幽霊か?いや、俺達二人に見えている。どうして
……
どうして?偽物?いや、そんなことが
……
』
ぐるぐると思考が回っている。毒に蝕まれたかのように全身が痺れているみたいだった。
眼前に、あの時の様子が、浮かんでくる。僕も同じような映像を思い浮かべてしまっていると思う。
冷たい月の下で、
了が、血まみれ、に、ああ、
手が、真っ赤に汚れるのを、思い出し、
「
……
う、うぇ」
びしゃ。
汚らしい水音が隣で響いた。キャパシティを大幅に超えすぎてしまったのだろう。さっきまで上機嫌で飲んでいたコーヒーを無駄にしてしまった。
フラッシュバックした記憶、あまりにも深すぎた傷跡は、彼を改めて傷つける。僕はそっちを見る余裕もなくって、前をひたすら睨んでいた。
「説明してくれなきゃ、理解も納得もできない。」
「あ?なにが?」
「なぜ───」
なぜ僕を探していたのか。
なぜ僕がいなければいけないのか。
平原さんには、言うべきことはないのか。
お前は誰なのか。
「いちいち説明しないとだめ?」
そんなの言うまでもないだろうに、わざわざこいつはそんなことを聞いてきた。じり、と音がする。少しずつ前に進んでいるようだった。その顔が、外灯からじわりと外れて行く。
「なんか疑ってるみてぇだけど、俺は【酒月 了《サカヅキ リョウ》】。お前を探してたんは、俺の計画に必要だから。あと
……
」
「ゲホ
……
っ」『どうして、どうして
……
』
「ハ。俺からアンタに言うことなんかねーよ。いつまで足踏みしてんすか?」
「
……
っ、うぷ」『了、了がそんな、こと、ダメだ
……
体が言うこと、きかね
……
』
ジリジリ距離が詰まってくる。平原さんは片膝ついて、息も途絶え途絶えでなんとか呼吸している。しかし厳しい。今すぐ引っ張り上げて逃げ出すのは簡単だろうか?
……
いや、この巨体を僕の細腕で引っ張れるか?
というより、今のやり取りに何か違和感があった。僕は何も言っていない、何も伝えていないのに、なぜ。
「バカだなぁ、終は」
とんとん、と。こめかみ辺りを指先で叩きながら、了が言う。
「───聞こえてんだよ。お前の心の声は」
「は?」
わけが、わからなかった。
頭の中が真っ白になってきた。
僕の心の声が、聞こえている?僕と同じ能力、え、でも了は普通の
……
いや、もしかしたら能力か何かで、ああ、けれどだめだ、わからないことばかりすぎて!
気がつけば、僕達の距離は急速に縮まっていた。
「来てもらうわ、終。お前が必要だ」
そして腕が伸びて、来て
……
。
がちゃり。
「動くな」
「
……
あ?」
暗闇から、もう一人出てきていた。
「署、長
……
?」
【白馬 桜慈《シロマ オウジ》】。白い馬と書いて、シロマ署長。✕✕市の警察署の女性署長だ。僕を呼び寄せた張本人、それが
……
なんでここに。
「やはり、出てきたわね。組織の連中は、そんなに切羽詰まってるの?」
「ハ。物知りさんか?違ぇわ、最後のピースがここにあんだ、邪魔すんな」
「貴方じゃ私の思考は読めない」
「
……
だから何だよ」
「優位を取っているのは私の方」
僕達の知っている情報からさらに三手先くらいの話をしている。何がなんだか。
そんな中でも署長は拳銃を降ろさず、確実に頭蓋を撃ち抜ける高さで保持しながら了に告げる。圧倒的強者のオーラが、僕にすら伝わってきた。レベルの違いと言うやつなんだろうか、或いは。
了はと言えば、そんな危機を告げられたとて特に変わることもなく、ニヤニヤとしている。なんだ、不気味でしかない。そして何もできない僕は、時折聞こえる咳き込む声にわずかに視線を逸した。
「それで?優位取ったから?俺に勝てるって?」
「今ならね。貴方を封殺できるもの」
「
……
」
「そう言うってことは、どういうことか。貴方にもわかるでしょう?馬鹿じゃないんだから」
「
……
ハ。ハハ、ハハハ!んだよ、面白いこと言うじゃねえか、テメェ」
「反能力装置」
「あ?」
「一般人(パンピー)が持ってないと思ってたかっつってんだよ!!」
えっ。
署長から放たれるとは想定していなかった、随分とはしたない物言いだった。
僕が(了も)驚いた瞬間、署長は拳銃を横に振りかぶった。銃を鈍器にするみたいに、ぶんと振りかざしたのだ。それを読んでいたとは思えないが、了は瞬間的に体を縮め、ごろりと体を回転させることで距離を取る。
空を切る拳銃、と思った次の瞬間には、署長は既に拳銃を構え直して、なんなら引金に指をかける。
まずいと察した了が、すぐさま体勢を整えてばっと一気に飛び退いた。
「俺が望んでんのは、ただ一つ」
「
……
引きなさい。部下に二度もトラウマを植えたくないの」
「連れねえな。また来るよ」
そうして僕達は、呆然としたまま、夜を超えることになった。
◆◆◆
翌日。
「どういうことですか、署長」
つい口調はきつくなる。それをただじっと捉えている署長は、無言でこちらを見ていた。
改めて僕達は署長室を訪れている。昨日の件については聞かなければいけないことがあまりにも多すぎた。
タイミングよく現れたのも理解不能だし、それにあの言葉遣いはなんだったんだろうか。
それでも悪びれる様子もない署長は、椅子に座って僕達を見上げていた。
「署長!」
僕が改めて声を上げて、初めて署長が口を開く。
「
……
酒月が死ぬ前、私のところに、特殊能力について教えてきた人間がいた」
「は?」『おい、嘘だろ署長。そんな大事なこと、なんで
……
』
「言えるわけ無いでしょう。貴方にとっても、私にとっても、手に余ることだった」
「それって」
どうしても結論を急いでしまいそうになった。この話を聞いたら、すべての謎が解けるような、そんな気がしたからだ。今までの僕の過去も、平原さんが抱えてしまっているものも、全てが、解決できるような気配がにわかに漂ったからだった。
当然、署長とて僕達の期待を理解していないわけではない。むしろそれが当然とばかりに小さく頷いた。
「ええ、きっと貴方の期待するものがある」
「署長
……
」『俺の
……
俺達の、期待している
……
もの?』
「その前に、座ってコーヒーをどうぞ」
署長のテーブルには、自分で淹れたであろうブラックコーヒーが、未だに湯気を立てている。僕達の分も合わせて三杯あるが、恐れ多くてまだ手を付けていなかった。
しかしだ。署長から直々に勧められた以上、それに手を付けないわけにはいかないだろう。さらに署長が手のひらで促してくる。
応接用のソファに、僕と平原さんで向かい合うように座り、さて話を
……
と思ったのだが、腰がずどんと一気に沼にでも落ちたかのようにつんのめり、慌ててコーヒーをこぼさぬようにガラストップのテーブルに置く。
ふかふかな素材に驚きの声を我慢するのでいっぱいだ。平原さんも同じようで、短くひっ、と悲鳴を上げたのを確認した。
もう、こんな無駄なことをしている場合じゃないのに。なんとか座り直して、コーヒーをひとくち。
「とても、苦いですね」
「お気に入りなの、この豆が」
ふ、と短く笑う。
室内に漂っている不穏な空気を飛ばしたいんだろうとすぐにわかるが、そんなに簡単に気分を切り替えられるはずもなく、高級そうな接待用のカップの中に、落ちていきそうな漆黒だけが広がっていた。
それから、言う。
「
……
相川くん。読めるはずよ、今なら、私の記憶が」
「え?」
不意を突かれたみたいに体が痺れる。
「貴方の能力の真骨頂。人の心の声を聞く
……
そのさらに次のステージ。今なら、出来るはず」
くん付けのところから驚くべきか、僕の能力について詳しいことを驚くべきか、あるいはどちらもか、なんなのか、僕は驚いてカップを落としそうになったものの、慌てて頷くしかなかった。
かちゃかちゃ、緊張は再び体にまとわりついて、ソーサーと触れ合うカップは異常なほど震えていたと思う。
期待がかかっているなら、やるしかない。
「わかり、ました」
「相川、お前
……
」『無理、すんなよ』
すう、と息を吸うと、目を閉じる。眼前にいる署長に意識を集中していく。
読めない。僕に署長の心の声は聞こえてこない。
と、思った次の瞬間───
がちゃん。
重い錠のようなものが、開く音がした。
開かれた先に、暖かなものを感じる。触感ではなく、なにかこう、心がほっこりとあたたまるような、そんなイメージを覚えた。否応なしに、僕の意識は吸い込まれ、溶け込んでいき、僕自身が温まっていく。
その先に見えるのは果たして。
「
……
貴方の脳に、入りました。」
◇◇◇
一年ほど前。
「つか、聞きました?」
「あ〜?何がだ?」
地域課は今日も賑やかだった。
「なんか最近、変な人がいるらしいんすよ」
「んだそれ。変って、どう変なんだよ」
「や、あのほら、なんつの?変出者っつの?ああいう感じのよ」
「どういう感じのだよ
……
」
それはまだ、フードの男の目撃情報が二度ほど出た頃であった。
地域課がそんな情報を精査しているのを尻目に、とある人物が署長目当てにやってきたという。
事前に電話でアポイントメントを取って、しっかり時間通りにやってくる人だった。社会人としては当然と言えば当然だが、本当に時間ぴったりだった。
つまり、早すぎず遅すぎず、一部の狂いもなく、ぴったりと、約束した時間に、署長室にそれは現れた。
「珍しいことですね、社長が直々にだなんて」
「いやあ、ね。ちょっとさ、どうしても伝えたいことがあったんだ。火球の用でねぇ」
「【✕✕市三大企業】の社長とあろう方が、そんなに焦ってどうされました」
「はは、世辞はいいよ。そんなことより、俺は君にお願いしに来たんだ」
「
……
何?」
話し相手は、【日千 岩石《ヒチ イワオ》】という社長だ。知育や勉強書を出版している【サンデー出版】と言う巨大な会社を一代で作り上げた豪腕社長で、【サンデードリル】
……
略して【サンドリ】シリーズで有名だ。
「いやあ、ね。知ってる?噂で聞いてね」
「社長。時間がないのはお互い様、本題にさっさと入りましょうよ」
「ははは、おうっちゃんは焦りんぼさんだな!」
「いわっちょ」
地味にこの二人、✕✕市生まれの幼馴染らしい。仲がいいことでも知られている。
「や、ねえ。どっからか分かんないけど、変な話を聞いてさ。俺も竜さんから聞いたんだけど」
「ねえ、どうしたの?貴方がそんな風に何度も忠告だなんて
……
」
「桜慈、【組織】って知ってる?」
「そしき?一体なんの話
……
?」
「何十年も前から、ずっと。人体実験をし続けて、人間に人智を超えた特殊能力を芽生えさせようとしてる
……
っていう、イカれた連中だよ」
「そんなものが」
「存在するはずがない。だよな?」
「
……
」
「目に見たことがないものを疑ってかかる。桜慈のいいとこだと思う、けどな」
そうして、日千は何かを取り出した。様々な資料、色とりどりの写真やら文章が並んでいる。
その中には、見覚えのある名前も含まれていた。
震える手で資料をめくる。理解の及ばないことが書いてある。何を言っているか全くわからない。
「これが事実なんだ。そして、お前の部下、あれにも危機が迫ってんのよ」
そこに書かれていることを読みながら、呆然としている白馬に、日千は言った。
「お前のとこにいるアイツ、あれはな、了じゃないんだ」
「は?」
「アイツは了じゃない。本当の名前は、【酒月 最《サカヅキ サイ》】
……
十年くらい前に、その組織から逃げ出して、保護された子供なんだ」
◇◇◇
「最!? いや、だって最は、死んだって!」
僕は思わず声を上げてしまっていた。鮮明に見えていたヴィジョンから強制的に起き上がり、署長を見る。見比べると、記憶から髪の毛が少し伸びているように見えた。
最、という名前を聞いて、ひたすらにこれを待っていた平原さんも驚いたように顔をこちらに向ける。
「あ〜?なんの話してんだ」『ぜんぜんわからん。なんか見たってことだけは分かるけど、それ以外がぜんぜんわからん』
「
……
そもそもその認識が間違ってた。貴方も、私も、平原もね。違うの、違うのよ
……
」
悪夢を見たようなあとの表情をした署長が、熱々のはずのコーヒーをまるでお構いなしにぐいと流し込んだ。
「貴方達が了だと思っていた、そいつこそが最なの」
『はあ!?』「署長?ちょっと、意味がよく
……
」
「これを見て」
そう告げて、署長は自分の机に手をかけた。引き出しを開けて、中から何かを取り出した。
ことんと置かれた缶のような箱の中に、仰々しくそれは保管されていた。
ビデオテープ。
……
いや、ビデオカメラのテープ、という方が正しいだろう。小型で、専用の機械を使わなければ見る事ができないという。
ちなみにその専用の機械と言うのは───後から知った余談だが、当時サンデー出版が動画方面で学習系ソフトを作ろうとしていた時に、✕✕市のとあるカメラメーカーと共同開発したものらしい。
カメラと、テープ。それぞれ全国で数百台も売れていないらしい。余談を付け加えるなら、開発にかかった予算と実際の販売台数が乖離しすぎた結果、採算が合わず早期に生産終了している。
故に、録画機器として有用だったようだ。もう既に機器は新規販売されていない。外部に見られたくない映像も、専用機器がなければ見られないのだから。
「日千から渡されたものよ」
小型のビデオカメラにそのテープを差し込み、署長は僕達にソレを見せてくれた。
◇◇◇
「ああ、まずいまずい。まずいな、大変だこれは」
映像は、白衣を着たような男性が、突然カメラを回し始めたところから始まった。既に辺りは火の海で、真っ白な施設のようなところが崩壊している。倒れている人もいれば、慌てて逃げている人もいた。
画面の奥の方で、青年が手を振りかざす。その周囲が突然ぶわっ、と強い風が吹いて、火が強制的に消し止められたようだ。直後、青年はその場に倒れてしまった。近くにいた白衣達は、感謝こそすれど青年をそのまま放置して逃げていく。
カメラはその青年に近づいていった。手がフレーム外から伸びてきて、首元に指を置く。
「だめか。人のために能力を使い、人のために死んだとはな」
何を言っているんだ。
一体、何を、言っているんだ。
まるでろうそくが燃え尽きたのを見守っていたかのような軽い口調だった。もしかしたら蚊取り線香や、線香花火だったかもしれない。今更、どれでも構わない。とにかく、消費されたということをただ軽く理解している。
すたすたとカメラが、燃え盛る廊下に出て行って、ふと。
カメラが揺れる。
「うぉ、」
カメラを持っている男が軽く驚いて、レンズがぐんとそちらへと向いた。
見覚えのある少年がいる。明るい白にも見える金髪、寂しそうな視線で男を見ている。
「
……
来て。助けて」
「終?」
男は子供に連れて行かれた。すたすた、そうしてその先に、別な子供がいるじゃないか。
いつかどこかで見たような。瓦礫に下半身が埋もれて息も絶え絶えの子供がいる。
……
肌は褐色、ここからでも分かるくらいに、目が隠れるくらいに髪の毛を長くして。
そこにもうひとりいる。見たことのない姿の子供だ。その子は、瓦礫の下の子と何かを話して、それから、
ぶつん。
突然映像が強制的に途切れ、別な場面に切り替わった。どうやら建物から避難し、安全な場所に移動したあとらしい。数名の子供が眠っている。
「
……
これだけしか連れて来られなかったな。とにかく、見つからない場所に来られてなによりだ」
どうやら誰も知らない場所らしい。
「一体何人の子がこの映像を見るかわからない、だが
……
」
カメラを持つ男性の声は震える。
「私達は多くのものを失った。ここにいる子供達を、私は全力で守ろう。残った力を使い、全力で居場所を隠蔽し、彼らを探すであろう者からの追手をすべて退けよう」
宣言していた。それが彼に、彼らにできる罪滅ぼしのひとつであったから。
しかしその隠蔽もいつ暴露されるかわからない。どこまでやれるかわからない。実際、僕は居場所を見つかって、組織が狙いをつけている。
傍らには他の白衣の人間が立っている。何やらあれこれ準備しているようだが、一体なんの準備だろうか。
「主任、本当にやるんですか」
画面外から全く別の女性の声が入った。
「やるとも。彼らを守るためだ。特に、最と終
……
あの二人は、守らなければならない」
「しかし」
「いいんだ。知らないことは、無かったことになる。彼らの記憶から、せめてここの記憶を消すことができればきっと
……
」
何かを決意したような男の声が聞こえてから、映像は止まった。
◇◇◇
この映像だけでは、何がなんだかわからないかもしれない。けれど、少なくとも僕は、脳に強い痛みを覚えていた。何かを思い出せそうな、そんな気がしていた。
「貴方が大人になるまで、そしてこの✕✕署に入るまで、居場所が特定できなかったのは彼らのお陰」
どうやら僕は、想像している以上に、多くの大人に守られながら生きてきたようだ。
「日千の恩人がこのプロジェクトに関わっていたらしくってね。その人は当初騙されて資金提供していて、途中で抜けようとしたけれど、抜けられず、逆に命を奪われた」
「そんなことが
……
」『日千社長にとっても、弔い合戦っつうこと、なのか
……
?』
「己の命に危機を感じたその恩人は、唯一無二、頼れる日千にこれらの情報を残した。組織の超機密情報の数々を送り、同時に、我々に危機を知らせた」
竜さん、という人物がそれだ。
日千社長の恩人というその人は、組織から『人体のデータを元に、より効果的に全身に負荷をかけられるフィットネスマシン』の製造をしないか、と声をかけられたそうだ。
果たして取引もしたことがない人からそんなことを言われ、しかし実際に会わずに門前払いもかわいそうだろう、と会って話を聞いたのが運の尽きだった。
まあ、お人好しというか、いい人というか、そういう人だからこそそこまで事業を大きく出来たし、そのせいで必要のない危機に巻き込まれて命を落とした。
「ビデオカメラを回していたのは、その恩人と意気投合した、数名の研究者だそうよ。同じ組織と言っても派閥は色々あるから」
「ただでは転ばないってやつですか
……
」
「ちょ、ちょ
……
」『やば、全然意味分かんないんだけど、え?これなに?今どうなってる?』
ストーリーの流れる速さに、平原さんがいよいよ理解不能とばかりに首を振っている。整理しながら進めてきたが、確かに分かりにくい部分も多い。
確認すると、僕は組織の建物が壊滅した時に外に連れ出され、過去の記憶を消去された。そののち、今の両親のところに連れて行かれ、生活を送った。特殊能力を使いながら生活する中で警察官を志し、色んなことがありながらもとうとう夢を叶えた。
……
なぜこんな能力があるのか、なぜ背中に数字のような傷があるのか、何がなんだか分からなかったのが、だんだん分かってきていた。
「それで、了が最って言うのは
……
」
「貴方はもう思い出せるはず、相川」
君付けやめたんだ、と思いながら、まだ思い出せていないためにちょっとしょぼくれてみせる。署長は小さくくすりと笑うとそれについても説明してくれた。
「おしまいコンビ。貴方と了が、施設にいる時に呼ばれていた名前だそうね」
「はあ
……
」
「ん
……
それは」『特殊能力開発をしても目覚める気配のなかった二人の総称
……
あれやっぱ夢じゃねえんじゃんかよ
……
』
「貴方と了は、どれだけ能力開発をしても能力が芽生えなかった。そう思われていた。けれど、それも誤解だった」
「
……
え
……
」
そこでようやく、脳の中に記憶の1ページが見えてきた気がした。時間差が憎いが、仕方がなかった。
◇◇◇
その日はいつもと違う日常だった。
無機質で好きではなかった白い壁が、がらがらに崩れ落ちたり、いろんなシミがペンキみたいにバラまかれて色とりどりだ。
報いだと思った。今まで僕達のような子供を傷付けてきた大人への報いだ。
叫びが聞こえた。嘆きが聞こえた。
それらは僕の脳にダイレクトに届いて、僕自身も狂ってしまいそうになりながら、ボロボロになった廊下を歩いている。
燃え盛るプラントCは阿鼻叫喚、焦げる臭いや焼ける音、どこかで誰かが特殊能力を使っている様子があちこちで見られた。
当時の僕は、ああ、すごい演習だなと思っていたのだけれど、そうではなかった。本当に誰かが、人為的に起こした事故が発端だった。以前に説明があったように、僕や、その他の研究成果や、はたまた自分のクビが切られることを嫌った連中が仕組んだことなんだろう。
多くの人は普通に逃げられた。
「
……
いつまでボーッとしてんだよ、お前も来んの!」
「え、でも僕は」
死ぬんだと思っていた。明日には処分されてしまうのだと知っていた。
けれど、その明日は永遠に来ない。
誰かがそれを壊してくれたからだ。
僕は了に手を引かれる。近くには最もいる。それから複数の
……
今や会えるかどうかもわからない仲間がいる。
子供には荷の重すぎる脱出ゲームだった。けれど、僕達は普通の子供ではなかったので、一見すれば楽勝のはずだったのだ。
「余所見すんなバカ!」
突然叫ばれて、僕は驚いたようにそちらを見るが、次の瞬間には突き飛ばされていた。受け身をしっかりと取れず、廊下に倒れ込んでげほげほと咳き込む。
あちこちから叫びが届いた。或いは僕を叱咤したり、呪ったりする音声が頭の内側をギチギチに縛り上げて行く。頭が重い。それでもなんとか立ち上がり、なにするんだよ、と言いかけて顔を上げて、
「
……
あ。了」
「ハ。バカすぎんだろ
……
気付けよ、これくらいさぁ」
了が瓦礫に体を挟まれて、廊下で埋もれていた。出ているのは右手と、頭くらいだ。
「了ー!」
殆どの子供達を先に行かせながら、僕と最は、了をなんとか助け出せないかとその場に残る。天井には煙、奥からは炎、正直時間の余裕もないし、詰みだ。
了は、僕達には救えない。
「ごめん、僕
……
」
「いいっつの、お前、けほ
……
目覚めたばっかだろ、仕方ねえな」
「了、やだよ、僕
……
了と一緒に
……
」
「どんだけバカなんだお前、こんな状態で一緒に逃げられるわけねーだろ」
「っ、けど!」
「うるっせーなー
……
」
その当時良く見ていれば、きっと了の下半身が既に潰れており、救い出したところで残された時間は限りなく少ないだろうと分かっているだろうし、そもそも僕の不注意が原因ではないと気付けたはずなのだが、非日常に神経が過敏になり、脳がぐちゃぐちゃにかき乱されている状態ではまともにやりとりも難しかった。
「だれか、うぐ
……
たすけを
……
」
吐きそうになりながら、僕は歩いていた。損傷の少ない廊下を辿り、カメラを構えた白衣をひとり見つけたのだ。
了のところへ連れて帰った時には、了のすぐそばへ最が寄っていた。
そしてそこが一番の確信だった。
「っせーな、いいから
……
手え出せや」
「んなことできるわけねーだろ!」
「時間が
……
ねんだよ。俺の分まで、最
……
なあ、終を、守ってくれ
……
」
「
……
く
……
!」
廊下で手が握られる。少年達の最後の別れの言葉が紡がれる。
「終。ごめんな、俺、お前に嘘ついてた」
まるでここだけ無音になってしまったかのように、あらゆる音が掻き消える。死に際の了の声だけが僕に聞こえていた。
「俺さ。実はもうとっくに能力、目覚めてたんだよ。『作る』力。『作り変える』力。誰も気付いてなかったけど」
「
……
え?」
握られた最の手がゆっくり光る。まるでそこだけ塗料を塗ったみたいだ。徐々に光は体のあらゆる場所へ伸びていく。
「ほんとはお前にもやってやりたかったけど
……
ごめん、時間足んねえ。だから、だからさ、最。せめてお前だけは、あんなクソみてぇな連中から、狙われないようにしてやるよ」
「ど、どういうこと
……
意味分かんないよ、何言ってるの了!」
「連中、俺のことは『まだ能力の芽生えてないガキ』だと思ってるだろ。だから
……
」
語りかけている了自身も、光に飲まれていっていた。健康的と呼ぶには深すぎる焦げ茶の肌も、白く修正されて塗りつぶされているようだった。
「俺の能力で、最と俺の見た目を作り変える。最、お前、能力のコントロールが出来んだろ?だったら、素知らぬ顔していればいい、なんにもできねえガキの顔していりゃあいい」
「了!なにしてんの、どういうこと!僕にも分かるように話してよ!」
「っせーな、今集中し、ゲホッ
……
」
「了!!」
「くそ、時間が足んね
……
ごめんな、終、お前のこと守って
……
やれ
……
な
……
」
光が弱まる。声が途絶えていく。
何が起きたのか、理解ができないが、結果はそこにある。
「りょう
……
?」
次の瞬間に僕が見たのは、瓦礫の下で目を瞑り、もう二度と動くことのない『最』と、力の無くなった手を握って涙を堪えている『了』だった。
◇◇◇
「
……
そうか」
思い出した。思い出したと同時に理解した。
この署に来ていたのは、平原さんのバディだったのは、あの事件で撃たれたのは───最だったのだ。僕と同じように、人の心の声を聞く能力を持っていた、優れた特殊能力者である最の方だった。
そうして逃げおおせたはずの最すら見つかった。おそらく、赴任から二年ほどして届いた手紙は、『最のことを書いた手紙』だったのだろう。
目撃されていた不審者も、本来は最を捕まえて連れ返そうとしている、組織の生き残りのうちの誰かだったと言うわけだ。
……
だとして、また謎が増えたじゃないか。昨日襲撃してきた了は何だったんだ?能力が使えたのが『了の姿をした最』をトレースか何かしていたからだとして、それがどうやって今ここに来た?
「うーんと、えーと、」
知恵熱出そうな平原さんが混乱している。
『俺が了だと思ってたのが最で、最は相川と同じような能力を持ってて?最は俺の目の前で撃たれて、同じ連中が相川を狙ってて
……
あー、ダメだ、分かるけどわかんない。一回家帰って寝たい』
「わかんなくなるとすぐ寝ちゃいますね」
「分かんねえんだから仕方ねえだろ」『そもそも了じゃなくて最だってとこでまず足踏みしてんだよ』
「気持ちはわかりますけどね?」
「とにかく
……
これが真実。そして、本当ならこれは、貴方達に伝えるつもりのなかったこと」
僕達の会話に署長が割って入る。和やかな雰囲気に戻る前に、この集まりを終わらせるつもりのようだ。
「けれど、事情が変わったわ。組織が本格的に相川を発見・追跡し始めたし、日千にも被害が及んだ」
「え?日千社長はご存命では
……
」
「先日襲撃された。
……
命は無事だけど、危険は日千にも迫っている。✕✕市民の、大企業の社長の、なにより
……
親友の危機なの」
『おいおいマジか
……
いよいよ俺達だけで収拾つくのか、これ?なあ相川、なあ。そりゃあ俺は、あー、その、お前のことは大事な仲間だと思ってるけど』
とりあえずスルーする。
「それは
……
まずいですね」
「昨日は相川を直接狙ってきたけれど、相川を追い込むために周りを分断するでしょうね。日千を襲ったのも、私を動揺させるため
……
となると恐らく次は、私と平原、二人を狙うはず」
「は?」『は?』
おお珍しい、声と『声』が重なった。
署長の言葉に、平原さんがびっくりしている。なんせ聞くとは思ってなかったワードだった。
しかし道理ではある。今の僕は色んな人に支えられているおかげでここにいられる。その支えがなくなったら、僕は果たしてどうなる?
「だからやるわよ。こっちから迎え撃つ。
……
平原、行ける?」
「あー
……
」
聞かれた平原さんは、少し困ったように頭を掻いて、ほんの少し迷ってから、小さく頷いた。
「
……
やれる範囲で」
顔はやる気満々だった。
『いつもみたいに気合でなんとかしますわ、って言えりゃあいいんだがなあ』
◆◆◆
その日の夜だった。
夜道を歩く平原さん。右の足首にはアンクレットが見える。靴下の上からでもつけられると言われてもらったものだ。控えめに、キラリと鈍く輝いている。了が平原さんにそれを渡したのも、今なら分かるかもしれない。自分が側にいる限り、いつ超自然的な現象に巻き込まれてもおかしくはないと悟ったのだろう。
ざりっ、と小石を踏む音がして、前方に、一人の男が現れる。見覚えしかない風貌のそいつは、にやりと笑ってこちらを見ているのだ。
足を止める。平原さん自身、腹を括ったと言ってもやはり抉られるものは抉られる。思い出さないよう気を付けているものの、やはり思い出してしまう。
「よお」
「
……
、了」
眩暈を覚えたようで、平原さんがくらっとして、しゃがみこんだ。片膝をついて今にも吐いてしまいそうだ。
「ハ、ハハ!どんだけトラウマよ?俺の顔見ただけで思い出すってか!」
ケラケラ笑いだした了の顔は邪悪のそれに尽きる。が、何かに気付いたようでぐにゃりと曲がった。
「
……
あ?」
「そりゃ
……
思い出すよ。俺とてお前を忘れたことは一度もない」
「あ、ああ?おい、何してんだよ」
「だがな、了。俺にとっての了は、あの日の夜死んだんだ。テメェがどれだけ了に似てようが、テメェが了と同じことが出来ようが、テメェは了じゃねえ」
「おい、どうなってやがる、アンクレット付けてんだろ?なあ!」
「俺の思い出を土足で踏みにじるな、クソ野郎」
「なんでアンタ、今日は『声』がしねえんだ!」
「
……
なんでか分かんねえのか?」
キラリとアンクレットが光る。
そこに、『何か』違和感があった。
「あ?」
実はこのアンクレット、銀色の実にシンプルなものなのだが、普段付けている時には欠けているものがあった。
それは平原さん自身も付けるつもりはなく、また了に「必要なかったら外しゃいいんすよ」なんて言われて無意識的に外していたものだった。
アンクレットに小さなくぼみがあり、そこに何かをハメることができる。
男性で、それも割と大人しめの色合いのものばかり身に付けるので、個人的に合わないと思って取り外していた。
箱を見て、そこにきちんと保管されていることを、つい今朝思い出した。そう、それは───小さな、ピンク色の飾り。
「
………
あぁ〜〜〜?」
アンクレットは【反(アンチ)能力装置】という、特殊能力を防ぐためのアイテムである。そして、本来はあらゆる能力を貫通出来なくさせる効果がある。
冥がうっかり触れてしまったばかりに、平原さんに憑依するどころかそのまま成仏させたられたりしたのもそのせいだ。あるいは、マイクロ波で本人の体は何も起こらず、携帯電話が故障したのも、その反能力装置が平原さんの肉体を保護したおかげだ。
安心院に連れ去られた時はアンクレットをしていなかった。だから平原さんは、安心院のテレポーテーションの効果を受け付けて、一緒に空間転移することができた。
「いやあ、そうか。俺の相棒は、随分心配性だったんだなあ。いいやつだったよ、本当に」
今回付けた飾りはとても重要なものだと知った。
ピンク色の飾りを外すことで、平原さんの肉体に悪影響を及ぼさない能力、つまり───【飾りを外すことで心の声を聞く能力を、ずっと通していた】。
「チェックメイトだよ、了
……
いや、了の姿をした誰かさん」
「っち、く、そがぁぁぁぁ!!」
吠えながら了が走る。しゃがみこんでいる相手にならば負けないだろうと踏んだのだろうか。しかし、相手が誰だか忘れてはいないだろうか?
この物語が特殊能力者の集まりだから忘れがちだが、相手はフィジカルエリート、化物級の肉体を持つ男だ。
しゃがんでいた、と思われた次の瞬間、平原さんはうんと立ち上がって、ものすごい速度で了の腰元辺りにしがみついた。
「が、あっ!?」
「能力関係なきゃあ肉体勝負。テメェなにもんだ?」
そのまま勢いで押し倒す。コンクリートが了の背中へ直撃して、息が詰まるようだった。と同時に、反能力装置の効果がその肉体に及んだ。平原さんの身を守るためのアイテムは、強力なアンチ効果で能力そのものを打ち消していく。
倒された男はその焼け焦げたような色の肌もじゅうと溶かされ、能力の強制解除に驚きを隠せない。あっという間にマウントポジションを取られたところには、冴えないボサボサの頭の男が苦悶の表情を浮かべて倒れているだけだった。
「あぁ!?ぼくの、ぼくの能力、うそだ、なんで」
「変化してた?化けてやがったのか。さらには本人が使える能力まで使ってやがった、どうやって」
「なんで能力が消えたんだって聞いてるんだよぉ〜〜!」
「そうファニーな声で叫ぶなよ。なんで能力が消えたんだって聞いてるんだよ、って聞こえたぜ?」
なんとか逃げ出そうとしてみるものの、平原さんとは体格差がありすぎてどうしようもないらしい。遂に抵抗を諦めて、大の字になった。
はあはあ、息を切らしている。
「さて。どっから話を聞いたもんかね」
「ぼくはなんも知らないんですよお
……
ただ相川 終を連れて来いって、そのために貴方をまず何とかしろって言われて
……
」
「何も知らないってことはねえだろ。日千社長を襲ったのもお前だろ?」
「はあ?日千社長?知りませんよう、ぼくは昨日、貴方達の前に出たのが最初なんですってば」
「
……
あ〜?」
そんなところに、じゃり、ともうひとつ、気配。
「!」
顔を上げるとそこにはいつかの、フードが、
「遅い!」
がんっ!
そのフードの男も油断していた。後ろから強烈なハイキックが飛んできたのだ。当然、それを繰り出したのは白馬署長である。側頭部にキレイに蹴りが入り、フードの男はよろめいて倒れる。
すぐさま署長がそいつを確保し、後ろ手にして手錠をかけた。フードの男も少し抵抗したものの、同じように反能力装置を身に着けている署長に抑えられているせいで何も抵抗ができない。
そしてその一連を、少し離れたところから僕は観察していたのだった。
慌てて駆け寄っていく。
「平原さん!署長!」
「おう、全部終わったぞ」
「
……
相川!そちらに異常はないわね?」
「はい、無事です」
相変わらず署長の『声』が聞こえないのはともかく、今日は平原さんの『声』も聞こえない。二度目とはいえやっぱり不思議な気分だ。
とにかく、今回の犯人達を取り押さえた。一件落着とはいかないだろうけれど、当面の危機は回避できただろうか。
「とにかく、署まで連れ帰り、話を聞かせてもらうわよ」
「ですね。よし、残業んなっちまうけど頑張りますわ」
和やかな雰囲気が夜道を包み込んでいく。
ああ、やっと終わった。長い二日だった。三人でようやく安心できるのかもしれない、ちょっとくらいは。
ここからまた、真相に近づくための準備が始まる。
反撃開始だ。
パーン。
「
………
え。」
そんな雰囲気をぶち壊したのは、やはりいつか聞いたような、気の抜けた破裂音。
「っ、ぴ
……
そんな、ぼくはもうようず、み」
「
……
!」
ぴしゃ、と血しぶき、辺りに散乱するナカミ。
平原さんの控えめな笑顔が凍りつく。
何が起きたか、一瞬では理解できなかった。ただ、僕達は脳天を貫かれた二つの死体を、見下ろすしかなかった。
.7:たーにんぐ[からまわる]
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