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ダベミ
2021-08-25 22:31:55
1562文字
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アイニスタと、人生の針
「ああ、貴方」
ある日、突然のことだ。
男が、私へ話しかける。
とても怪しい男だった。
とても突然の話だった。
「貴方、自分の力を信じたことはありませんか」
怪しい男はそう言った。
滑舌も少し怪しかった。
目つきも何か怪しいな。
こいつ本当に大丈夫か。
「貴方、自分が世界を変えられると思いませんか」
「全然思いませんが。」
そう答えて帰ろうとした。
しかし男は立ちふさがる。
「いえ、貴方は変えられる」
何の根拠があってそんな。
「貴方は世界を変えることができる」
一体どこから自信が出る。
「貴方が世界を変えるんだ」
気付けば私は。
担がれていた。
「相田さん」
男は名を小宮と言った。
怪しい目つきのままで。
怪しい滑舌をしたまま。
私を白い部屋に連れた。
「貴方はこれから、ぼく達の神になるんです」
「神ぃ!?」
流石に大それているよ。
私は思わず声を上げた。
けれど小宮は自信あり。
「ええ、そうです」
そして彼は話し出した。
「この混沌の世界には、指導者が必要だ」
「はあ
……
」
「そこで、相田さん。貴方です」
「なんで僕なんですか?」
「貴方には素質があります」
そこで小宮が笑い出す。
「
……
神の、です」
にわかに信じられない。
「貴方はただ笑っているだけでいい」
「そんな簡単なんですか?」
「はい。ぼくが支えます」
「そんな
……
馬鹿なことを」
出来るはずがないよな。
出来るはずがないんだ。
私はそう言おうとした。
けれど、小宮が制した。
「いえ、できますよ。貴方と、ぼくなら」
「
………
」
「だって、貴方は才能がある」
「才能、才能って
……
」
「我々を導く才能です」
それは本当だったのか。
それとも、ハッタリか。
どちらにしたって今は。
「ぼくは貴方を信じます」
もう元の名を語れない。
語ることを許されない。
声を奪われた金糸雀だ。
私の名前はアイニスタ。
新たに生まれた救世主。
「さあ、マイクへ」
誘われるままに歩いて。
「さあ、言葉を」
望まれるままに動いて。
「我々に貴方の言葉を下さい」
もはや取り返しなどは。
付かないところにいる。
「───ははは、ははは。ははは、ははは。」
声を奪われてしまった。
助けを求めるのは無理。
鳥籠に入れられている。
逃げ出すような力など。
もはやこの体には無い。
私、間違うことでしか、人生の針を正しくは使えないの。
もう、戻ることはない。
間違うことでしか、進めない。
人生の針を、正しく使えない。
分かり合えたはずなのに。
分かり合えるはずなのに。
正解を選べたはずなのに。
それをしなかったのは、
何よりも振り返らない、
誰よりも自分を諦めた、
(
……
俺自身、じゃんか。)
「アイニスタ様!」「ああ、私達のアイニスタ様!」「ありがとうございます
……
」「いつも拝見しています」「アイニスタ様、またお言葉を」「お願いします!アイニスタ様」
逃げようと、思えたら。
きっと逃げられたのだ。
だと言うのに私は何故。
逃げたいと思わないの。
……
間違うことでしか、人生の針を正しくは使えない。
「お願いします」
「また悩みを解決してください」
私は、私は、私は何故。
どうして、一体、何故。
金に目が眩んでしまい。
生きることの喜びなど。
忘れて、しまっていた。
神と呼ばれて、驕った。
「相田さん」
小宮は私を呼んでいる。
「相田さん、またお願いします、こちらへ」
私は声を出せないまま。
私は、小宮に囚われた。
誰かどうかどうか私を。
「
……
アイニスタ様、今日の言葉を」
私を許さないで欲しい。
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