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ダベミ
2021-05-24 19:45:43
10282文字
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【FGO風】幕間/今日も彼を愛そうか
英霊としまえんシリーズ、(暫定)最終章です。最初から読まないと全然意味が分からないので、必ずなんとか読んでください。
───ノウム・カルデア 廊下
【なかなか寝れないな
……
】
(時刻は日本時間でもう深夜1時だ。当然ながら、カルデアの廊下も電気が落とされている)
(薄暗い
……
転倒防止に足元が仄かに光っている
……
)
コツコツコツ
……
【?】
(あれ
……
あの部屋、扉の下から明かりが漏れてる。まだ寝てないのか?確かあの部屋は
……
)
プシュー
……
───とあるサーヴァントの部屋
【ここは
……
】
■■■「いらっしゃませ、お客様(マスター)。」
(そこにいたのは、としまえんさんだった。いつものように、優しい笑みを浮かべて俺を見ている)
黒髪「
……
何してんのよ、今もう夜中だよ?」
【なんだか寝付けなくて】
黒髪「ダメダメ、育ち盛りが何してんだか。いいかい、寝れる時に寝とくのも君の仕事だぜ」
黒髪「気力が無いと何もできないからね、自分の機嫌は自分で取らないと」
【それがなかなか】 →【案外難しいね】
黒髪「だろうねぇ」
黒髪「だってお客様(マスター)、その若さで両肩に世界が乗っかってんだもん。そりゃあ大変でしょ」
【まあそれほどでもある】
黒髪「あんのかよ」
黒髪「
……
はぁ。自覚があるのは大変結構だけどさ、それがね?軽すぎても重すぎてもダメじゃん」
【どういうこと?】
黒髪「んー、なんつうのかな
……
」
黒髪「張り切りすぎても俺みたいに空回りするし、力抜いてリラックスしすぎても酒井みたいになっちゃうよ、ってこと」
(酒井
……
としまえんさんとほぼ同時期に現界した、【酒井兵庫】さんのことだ。依代の人と、としまえんさんのオリジナルには浅からぬ縁があるらしい)
(
……
って、酒井みたいに、なんて言い方してるけどみたいにって何だみたいにって!)
→【ふたりとも】 【すごいのでは】
黒髪「まさか。お前、ちゃんと見てる?酒井のこと。落ち込むことがない平気な鋼メンタル、お外で鬼ごっこして疲れて帰ってくるようなキッズ感、そんでパワーフードはおにぎりだよ?頼れるか?あんなの」
黒髪「それに、何かの間違いで、俺みたいなのを尊敬なんてされても困るぜ?忘れてると思うけど、俺は形のない遊園地の概念なんだから」
【としまえんってすごいじゃん】
黒髪「いや、そらぁね?確かに、すげぇとこもあんだけどさ?」
黒髪「つうか、すげぇとこが無かったら、俺のオリジナルも「俺自身がとしまえんだ」なんて言わねえだろうしさ?」
黒髪「けどさ、悪いことがないわけじゃないじゃん。事故も、あったし
……
やけくそ広告も作ったし
……
あと俺が全面協力して作った映画がボロクソ言われたし
……
」
→【ノーコメントで】 【映画はフォローできない】
黒髪「せめてなんか言ってくれよ!俺も何も言えないんだから!自分で何言ったって評価に含まれねえんだからさあ!」
黒髪「
……
仮にそれを差っ引いたとしたって、『俺』はただみんなに迷惑かけてばっかりで、やる気を空回りさせてるだけの、ただのうざ絡み脱臼おじさまだよ」
→【ゴーレム
……
】 【としまえんさん
……
】
黒髪「お前絶対知ってるよな、この霊基に関して!絶対に!俺よりも遥かに詳しく!」
【そんなことないです(棒読み)】
黒髪「まぁ、いいけどさ、別に
……
知ってることあんなら言ってくれよ、お客様(マスター)
……
」
黒髪「で?どうしたの、わざわざ俺のところに来るなんて。他にもたくさん、お前のサーヴァントはいるのに、わざわざ俺のところに来るなんて」
黒髪「
……
ほんとに寝れないだけ?」
【それは
……
】
黒髪「言ってごらん、何かあるなら」
【少し気になることが】
黒髪「
……
気になる?」
【どうしてとしまえんさんは】
【『自分』について知識がない?】
黒髪「
……
」
黒髪「
………
、は?」
黒髪(
……
どういう意味だ?いや、聞きたいことはわかる。聖杯ってのは英霊に対して、召喚された時に不都合がないような知識を付与するらしい)
黒髪(だから、俺が『俺』について
……
正確に言えば、『英霊としまえんが形どってしまう、この姿についてなぜ知識がないのか』と聞いてるんだろう)
黒髪(
……
当然に決まってる。あくまでこの姿になるのは、呪いのような言霊のせいに過ぎない)
黒髪(或いは、その呪いのせいで無形が有形になったことによる弊害か?聖杯からの知識共有が上手く行っていない?)
黒髪(それとも何か。イレギュラーな状況、人理白紙化に伴って『俺』の歴史そのものが読み込めない?
……
いや、いや。そんな理由はどうだっていい。)
黒髪(答えはひとつだろう。
……
『俺』自身が歴史に名を残すほど優れたわけじゃない
……
から
……
)
??「いえ。それでは、説明できないことがあります」
黒髪「? お前は」
紫式部「夜分遅く、申し訳ありません。マスターに呼ばれまして
……
、こうして此方に来させていただきました」
黒髪「え?ちょっ、いつ呼んだんだよ」
【としまえんさんがなんか考えてる間に】
黒髪「なんでそういうことするかね、お前は」
紫式部「お待ちください、そこは本筋ではないのです
……
!」
紫式部「私が来たのは、貴方について、貴方が知らなければならないこと。それを伝えるためなのです」
黒髪「
……
?」
スッ
……
黒髪「
……
本?これは、」
紫式部「あったのです。
……
電子書籍としてデータが残っていました。そう、『貴方』の記した、愛の言葉が」
紫式部「これは『貴方』が人理の中で活躍した証にほかなりません」
紫式部「今回は電子の情報を、私の魔力にて物理書籍に変換してお持ちしました。さあ、どうぞ」
(ウェーブがかった髪型の男性が写った本を受け取った。メガネが似合うなあ。そして)
【大胆な表紙だァ
……
】
黒髪「うっさい、うっさい!それで?
……
これ読んでどうしろって?」
紫式部「貴方が『その姿』───『としまえんとしての今形どるその姿』について学べば、もしかすれば。貴方に未だ眠る力が開花するかもしれません」
紫式部「ですよね?マスター」
【せやねん】
黒髪「ホントかよ」
紫式部「わからないので、試してみましょうか?という話になった次第です」
黒髪「(絶句)」
◆
(というわけで本を読んでもらうことになったのだが)
ぺらっ
黒髪「
……
」
黒髪「
………
(真顔)」
ぺらっ
黒髪「
………
(苦悶)」
ぺらっ
黒髪「
……………
」
ぱたん
黒髪「
………………………………
(目瞑り考え中)」
【どうだった?】
黒髪「これほんとに『俺』が書いたの?あまりにも
……
読みやすすぎる。まさか、誰かゴーストライターでも雇ったんじゃないの?」
→【信じなよ】 【本人だよ】
黒髪(疑わしいな
……
俺を騙そうって魂胆か?こんな夜中に
……
はぁ
……
)
紫式部「間違いなくこれは貴方の物語です、としまえんさん。貴方が疑おうと、自信がなくとも」
黒髪「
…………
あ?」
黒髪(
……
自信、か)
黒髪(確かに俺は
……
自信が、持てない)
黒髪(自信がないから、何かで被っていないと我慢できない。自分が傷付くことに、俺は慣れてない)
黒髪(図体でけえのに、なんでそんな臆病なんだと笑われる)
黒髪(人を見た目で判断すんなよ、俺は俺なんだから)
黒髪「そもそもだけど。なんで俺の思考を読めてんのよ」
紫式部「あ、いえ、それはその」
(そういや説明してなかったな。式部さんは簡単な陰陽術が
……
)
黒髪「
……
? ひょっとしてお前、陰陽術の類が使えるのか」
紫式部「
……
え?」
【知ってるの!?】
黒髪「いや、なんとなく、なんとなくだけど確か、そんなのどっかで聞いたような
……
」
黒髪「あー!そうだ!そうだよ、確か紫式部は、藤原道長の伝で
……
」
【としまえんさん!】
黒髪「何!?」
【シュミレーターに行くよ】
黒髪「なんで!?」
◆→移動/【シュミレーター・とある家】
黒髪「
………
(諦めの表情)」
マシュ『
……
出力安定しています、マスター。』
【夜中にごめんね】
マシュ「い、いえ、元より備えていましたので!はい、問題ありません」
黒髪「は?いやちょ、どういう意味
……
」
マシュ『この空間はお好きにお使いください。音声は一度切りますので、会話を盗み聞いてしまうこともありません。何かあれば手を振って呼んでくださいね』
プツンッ
黒髪「説明がないなぁ!それで?ここは
……
」
紫式部「本にあった『出会いの場』を再現したものです。いかがですか?」
黒髪「いかがって言っても、俺は本人じゃないからなんにもないんだけど
……
」
???「何もない、と言うことはないかと思います」
黒髪「!」
シェヘラザード「本には
……
物語には、人の思いが込められています。それはどんなものでも同じ、例えば貴方の恋愛本だったとしても」
シェヘ「そしてここは、その思いを擬似的に再現した場。何か心境に変化が起こるのではないかと思ったのですが」
黒髪「不夜城のキャスター、シェヘラザード
……
語り部のキャスターか、ってねえ
……
巻き込む人数増やしてんじゃないよ、お客様(マスター)」
シェヘ「いえ、いえ。いいのです。貴方の精神の死を見過ごすほど、私も臆病では無くなりましたから」
黒髪「
………
」
シュウウウウ
シェヘ「ところで
……
」
×××「
………
」
シェヘ「あの方はどなたでしょう?」
黒髪「! え?あれは
……
」
(キレイな女性だ。黒い長髪の、美しい女性。シンプルな白のワンピース
……
あれ?もしかして)
黒髪「
……
見たことがある、気がする、ような、しないような
……
」
紫式部「としまえんさん
……
の関係者、ではないのでしょうか?」
シェヘ「恐らくそのはずですが、心当たりは」
黒髪「ぜんっっっっっぜんない。本人じゃないから」
【ですよね】
紫式部「誰かが出てくるとか、そのような設定はしていないはずですが
……
マシュさん!」
シーン
……
シェヘ「ジン(精霊)!外への経路を確保して!」
ぼんっ!すたすたすたすた
……
ガチャガチャガチャガチャ!!!!!!
黒髪「
……
おい、外にも出れなくなってんじゃねえか」
シェヘ「死んでしまいます
……
死んでしまいます
……
」
紫式部「
……
はわ、はわわ
……
はわわ
……
」
【隔離された!?】
黒髪「マシュ!」ふりふりふり
黒髪「あー、手ぇ振っても反応なしか。ほんとに隔離された可能性があんな」
黒髪「
……
誰だか知らないけど、こいつを排除して
……
」
×××「───」
黒髪「
……
え
……
」
(としまえんさんの動きが止まった)
【どうしたの?】
黒髪「いや、その
……
何だ、これ」
×××「───!」
ゴォォッ!!
シェヘ「私達に向かってきます。このままでは皆さん、本当に死んでしまいます
……
!」
紫式部「
……
としまえんさん!構えて!」
黒髪「わかってる、わかってるけど
……
!」
◆
アルフ・ライラ・ワ・ライラ
シェヘ「『千夜一夜物語』───!」
ズドォンッ!
シュオオオオ
………
シェヘ「これにておしまい、です」
【撃破したけど
……
】
黒髪「
………
」
【ステータス異常!?】 →【魅了!?】
シェヘ「本調子ではない、ようですね」
紫式部「はわわ
……
!何か、されてしまったのですか!?」
シェヘ「
……
これは
……
」
(しかし、自分との魔力パスは正常だし
……
ステータスにも異常が見られない。一体何が
……
?)
黒髪「
……
ああ
……
追体験、なのか」
紫式部「え?」
黒髪(あの娘は
……
もしかして、さっきの本にあった、運命の───)
ヴヴヴンッ
……
黒髪「
……
あ?なんだ、世界が乱れて
……
!」
◆───【シュミレーター・ファミレス】
→【場面が
……
】 【変わった!】
紫式部「やはり。ここは、あの本にあった大切な場所。本の記憶に刻み込まれた、思い出の場所を再現しているのでしょう」
黒髪「んなの、なんのために
……
?」
紫式部「ひょっとすると。貴方自身が一番わかっているのではないですか?」
黒髪「何?」
紫式部「貴方の功績。そして、貴方の良い部分、です」
シュウウウウ
……
×××「
………
」
【また出た!】
黒髪「シンプルな白のドレス
……
ナチュラルメイク
……
、いや、まさか
……
!」
×××「───『 』────」
(その人が、呼んだ。何かを、誰かのことを)
黒髪「
……
呼ぶな、それを。呼ぶな、その声で、俺を
……
」
黒髪「『俺』を!『俺の真名(な)』を!呼ぶなっつってんだよ!」
ゴオオオッ!!
黒髪「なんで
……
何でこっちに来んだよぉ、来るな、来るなよ!」
紫式部「魔力が揺らいでいる。やはり、荒療治でしょうか
……
?」
紫式部「いえ、いえ。本を愛する英霊として、貴方の本も、貴方の愛も
……
守りたいのです
……
!」
シェヘ「お供いたします。私もまた、物語に救われ、物語を語ることを宿命とした霊基。それならば」
シェヘ「この男の物語も、鮮やかに読み聞かせて差し上げましょう───」
【倒すしかない
……
!】
黒髪「
……
くそっ!!」
◆
紫式部「ハッ!」
ぱしゅぱしゅ
シェヘ「
……
!」
ぴゃー
(何とか撃退したけど
……
)
(なんで襲い掛かってくるんだろう?)
(だって、あの人は多分、としまえんさんにとっては───)
ヴヴヴンッ
……
紫式部「またシュミレーターが!」
◆───【シュミレーター・”テレビ局”】
黒髪「
……
っ!?」
ワーワーワー
(
……
気付けば俺達は、舞台の上にいた。真ん中には、一本のマイクが立っている)
(まばゆい光が降り注ぐ。光が、人の目が、カメラのレンズが、大量にこちらに注がれている)
黒髪「ここ、は。ここは
……
!」
シェヘ「これは
……
大舞台ですね。貴方の物語の中でも、のちへ語り継ぐべき素晴らしき日々を表しているのでしょう」
紫式部「此処が所謂、ターニング・ポイント。貴方が打ち立てた功績の一つ。たとえ英霊と呼ぶにはちっぽけでも、貴方の中では輝かしいに違いありません」
黒髪「ああ、そうかい、そうかい!俺らはこっから始まったってか!」
シュウウウウ
……
×××「
………
」
黒髪「ここにも出てくんのかい」
黒髪「いや、おかしい。本来ならお前は、ここにはいない。だけど、お前の魂は俺とともにあった、そう言いたいわけ?だからここにもいる?」
黒髪「俺に何を伝えたい?『俺』をどうするつもりなのよ。そんなの思い出してまで、俺は前に進まなきゃなんねえのか?」
黒髪「
……
本当は。本当は
……
としまえんに根深くリンクしてるのは、俺じゃなくて
……
」
×××「───!」
黒髪「
……
なぁ、どうしてなんだ。どうして俺に襲いかかってくるんだよ。もしもお前が、嫁ならば
……
!」
シェヘ「今は説明する言葉を、誰も持ちません。抗うしかないのです、ここで物語に幕を下ろしたくなければ」
黒髪「
……
、
………
ああ。分かったよ」
黒髪「せめて、俺が何とかしてやる」
◆
(
………
荒れている。戦い方も、息遣いもだ)
ドゴゴゴンッ
黒髪「おらあああ!!」
黒髪「スナッピー!」
ばしゃぁっ!
黒髪「フロッグホッパー!!」
どがぁんっ!
黒髪「ッ
……
!サイクロン───!!」
ドガガガガガガ
……
!
黒髪「まだ、まだぁぁぁぁっ!」
紫式部「
……
としまえんさん!」
黒髪「あぁ!?」
紫式部「
……
もう、終わっています」
黒髪「
……
く、ハァ、ハァ
……
っ」
【としまえんさん
……
】
ヴヴヴンッ
……
シェヘ「まだ
……
場面が変わるようですね」
黒髪「なんだ、なんだ、ええ?俺に見せる必要のあるものって、そんなにたくさんあんのか?俺に『それ』を思い出させて、なんのメリットがあんだ?」
◆───【シュミレーター・舞台】
黒髪「───ッ!!」
紫式部「ここは、あの本にはない場所。だけど、貴方には欠かせない場所。だからこうして出てくる、だからこうして貴方は此処に呼ばれる」
紫式部「そう、貴方という霊基が避けて通れない場所です。おわかり、ですよね?」
黒髪「ここは、俺、は
……
俺は、そんな」
シェヘ「そして、ここに立っていると言うことは。貴方はもう既に、おぼろげながらに取り戻しているはずです」
シェヘ「自分が何者なのか。人として、どういう在り方をした者なのかを」
……
コツコツコツ
黒髪「靴音
……
? まさか、まさか!?」
スーツの男性「───」
(
……
現れたのは、『いつか見たことがある顔』の男性だった。どこか不機嫌な唇、黒い目がこちらを見る。同じく黒い髪を目元が隠れるか否かまで伸ばしていて)
(肌は
……
褐色。日焼けと言うには焦げすぎている、きっと地黒なんだろう。それにしても)
黒髪「
……
お前
……
は
……
!」
スーツ「は。まぁーーーだうじうじやってんすか、アンタは。そうやってうだうだうだうだ、テメェが傷付きたくなくて、テメェが落ちたくなくて」
スーツ「理想は結構。美しいもんを見るのは悪かねえでしょうよ。アンタの姿だって、輝かしい夢の中に残された強い情熱なんすよね」
スーツ「けど、俺にも情熱はあんすよ。なにか、アンタに踏み躙られた俺の情熱なんて、どうだっていいと?そんな汚え記憶、座からもらわねえでいいとでも?」
黒髪「それ、は」
スーツ「アンタは俺を傷付けた。そうして、真っ向勝負からも、俺の追撃からも、全部から逃げた。その汚点が!」
スーツ「座に、霊基に!刻まれてんのが納得行かねえって言いてえんすか!」
黒髪「あ
……
」
スーツ「当然、『今の俺ら』からすりゃ、そんなのもう過去の過去、どうしようもねえ」
スーツ「だけどそれとこれは違う」
スーツ「アンタはテメェの上澄みだけ掬って、いいとこばっか見てやがる。
……
俺は?アンタの汚え部分を知ってる、俺の気持ちはどうすりゃいいのよ?」
スーツ「アンタのことを覚えてる。アンタのことをちゃんと知っている。俺が、アンタのことを今教えてやる、全部、全部!」
スーツ「アンタって人を、アンタと言う人格を!」
スーツ「イヤってほど刻んでやる!!」
黒髪「
……
【酒井】。」
黒髪(ああ、そうだ。そうだよな。お前は全部、何もかも知ってんだ)
黒髪(俺が何故こうなったかも、俺が何故過去を持ちえないかも。全て俺の責任だってのに)
黒髪(耐えられなかった。何もかもに。それは全部、俺がはじめにやらかしたことなのに。必要ないと、手放してしまった。俺の汚さ故に)
黒髪(そうだ。今はっきりと理解する。これは『俺』の、そして俺の、せいだ)
【
……
ちゃんと話そうよ】
黒髪「
………
」
スーツ「まだなんか言いてえことあんすか?」
黒髪「いや
……
そうだな。」
黒髪「
……
酒井。お前には、謝っても謝りきれない。迷惑かけた、お前を泣かせた。お前のやりたいことも全部台無しにした
……
らしい。まだ全部思い出せない」
黒髪「だけどお前は俺の隣にいて、俺の相方で、俺の大切な存在で
……
あー
……
とにかく」
黒髪「だからさ
……
」
スーツ「だから?」
黒髪「来いよ。殴り合おうぜ」
スーツ「そう来なくちゃな!」
◆
黒髪「スナッピー!」
ばしゃ
スーツ「なっ、にすんの!」
ヒュンヒュン
シェヘ「剣戟を全ていなしている?」
黒髪「イーグル!」
スーツ「いやいや、くらえねえすよっ」すかっ
黒髪「逃げんなクソ!【夢を乗せ輝く回転木馬】!」
ギュオオ
………
!!どっがぁぁぁぁん
スーツ「っぶねっ!!何すんの!」
どごっ
黒髪「ぉふっ!?おっ、前!少しは手加減しろ!」
どがぁんっ
スーツ「や、テメェから本気で宝具開放しといてよく言いますわ!」
キィンッ!
(剣を抜いた!?来る
……
!)
スーツ「
……
【浅葱埋葬】───」
黒髪「ちょっ、お前、ずるっ
……
!」
【オシリスの塵!】
カキィンッ!!(硬いSE)
黒髪「っぶ
……
!ありがとな、助かった
……
!」
スーツ「くっそ、なんなんだよ!アンタは!何でそんな風に!持ち上げられてんだ!」
スーツ「自信ねえって口で言ってセーフティ作って、そのくせ自信満々に出てって!ウケりゃテメェのもんで!スベりゃ受け手のせいか?」
スーツ「答えてくれよ!なぁ!平子さん───!!」
黒髪「違う!それは
……
!違う
……
っ!!」
ォォォォォ
……
!!
紫式部「これは
……
!」
【魔力上昇!?】 →【宝具開放!?】
黒髪「違うんだ、酒井。俺は本当に自信がなかったんだよ。ウケててもスベってても、生きてるだけで、そこに立ってるだけで」
黒髪「ただ、自信がなかったんだ」
スーツ「だったら
……
!」
黒髪「だけど。なんの因果か、はたまた呪いか。俺はこうしてここに立っている」
黒髪「俺はテーマパークとしての概念でありながら、芸人の核も持ったままここに来た。人を楽しませることは、俺の至上の喜びであることに変わりない」
黒髪「笑顔が見たい。人の、誰かの、笑顔を見るために、俺はここにいる」
黒髪「だから、だからさ、俺が謝ったってきっと遅いし、今からどうにかなるわけじゃないのもわかってんだけど!」
黒髪「
……
笑ってよ、酒井」
紫式部「宝具が来ます。マスター、お覚悟を」
【えっ?】
黒髪「回れ、回れ。全ての人の笑顔のために」
黒髪「走れ、走れ。この世を風を切るように」
黒髪「歌え、歌え!愛する者の笑顔を讃えて!」
黒髪「百年の恋よ、届け!」
カルーセル・エル・ドラド
黒髪「【夢を乗せ輝く回転木馬】───!!」
カ ッ ! !
スーツ「ああ、なんだよ畜生。絶対嘘だって分かってんのに」
スーツ「ちょっとだけ。ちょっとだけ
……
」
スーツ「
……
泣きそうになっちゃった」
ちゅどぉぉぉぉぉぉんっ!
【爆発したーー!?】
黒髪「
………
」
シュウウウウ
………
ン
◆───【シュミレータールーム】
シェヘ「これにておしまい、のようですね」
【戻った
……
!】
シェヘ「記憶の旅は、いかがでしたか?」
黒髪「
……
ああ、うん。ほんのり、うっすらと。大切なことを思い出した気が、する」
紫式部「その本も、綴られた愛の言葉も。貴方が彼に持っている思いも。全て、『貴方』を構成する要素です」
黒髪「そう
……
だな。忘れちゃいけない部分と言うか、『俺の芯の部分』
……
」
黒髪「
……
もう忘れねえよ」
◆───移動/としまえんの部屋
黒髪「つっかれた
……
腰イカれたかと思った
……
」
黒髪「まぁ
……
うん。いい時間だった
……
んじゃない?知らねえけど」
黒髪「つうか、何度も言うようだけど。俺は『本人』じゃないから。あそこにいた本人じゃない、だから全部、ちゃんとは思い出せないのよ?そこ分かってる?」
紫式部「前提として無理があったのでしょうか
……
いえ、少しでも記憶できたのなら、上出来だと思います」
シェヘ「ええ、ええ。忘れているストーリーよりは、少しでも。ほんの僅かでも、貴方の中に物語が綴られたのならば」
黒髪「あの子らはそんなこと言ってたけどね?」
黒髪「嫌なことに、なんか霊基も調子いいからなぁ!なんでなの、これぇ!」
【よかったじゃん】
黒髪「
……
結果的にな?ったく、夜中になにしてんのほんと!いろんな人まで巻き込んで
……
」
黒髪「まあ、いいや。俺は
……
うん、俺として。お客様(マスター)に呼ばれた遊園地(サーヴァント)として、そして芸人(サーヴァント)として」
黒髪「貴方の役に立つように尽力を尽くすだけですよ」
黒髪「
……
まぁ、なんだ。」
黒髪「その
……
ありがとうな、マスター」
【なにが?】
黒髪「俺の
……
、違うな。『俺ら』のこと、ずっと気にしてくれていて。助かってる。
……
お前なら、」
黒髪「来園する『お客様』としてではなくて、未来を作っていく『仲間』として。ちゃんと一緒に戦える気がする」
黒髪「じゃあ、まあ、相変わらず完全には記憶取り戻してないけど、酒井ともども宜しく頼むわ」
(こくり、頷いた)
(これからも彼は、夢を乗せて輝き続けるだろう)
(俺のために、誰かのために───自分のために)
◆
備考:
『彼』は『本人』ではない。ただ『彼の姿をトレースする、遊園地の概念を人化したサーヴァント』である。
しかし、もしも。もしもその影法師を理解できたなら。
もしも、その姿に関連した記憶を全て取り戻せたなら。
……
カルデアでは、無限コント地獄が始まるだろう。
……
ごめん、やっぱ思い出さないで。
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