ダベミ
2016-01-28 22:50:37
1400文字
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俺はゴミ回収屋

矢地さんのおはなし(http://privatter.net/p/1300423)のおっちゃん視点。

いつものように仕事に来たはずだったんだけどねぇ。
……今日はおかしい、なんだか様子が違う。
それもそのはず。ゴミが女だった。
女がゴミだったのか、それともゴミが女になったのかは分からない。
けれどどうしてその女は、ゴミ箱の中にひとり静かに入っている。

「なぁ姉ちゃん、あんたゴミなのかい?」
「ゴミですよ」
「そうかい」

ゴミが自分からゴミと喋るわけがないだろうに。
ゴミならゴミらしく、俺に連れて行かれるのを大人しく待っておけばいいじゃないか。
ゴミならゴミらしく、再生させられるのを待てばいいじゃないか。

「ん?あぁ、あんたは燃やせねぇゴミだよ」
「そうですか」

俺は俺の仕事をしよう。

「なんで姉ちゃんはゴミになっちまったんだい?」
「理由なんてありません。ゴミだからゴミなんです」
「そうかい」

それは違うなぁ、なんて言えなかった。ゴミってのは一度何かに使われて、その果てになってしまうもんだ。
この姉ちゃんも誰かに使われて投げられたのだろうか。自分で自分を使い捨てたんだろうか。……だとしたら勿体ねぇことをするやつもいたもんだ。
俺はゴミ箱のゴミを回収していく。
髪に絡みついた缶を、誰かが鼻をかんだチリ紙を、投棄された電子レンジを、牛乳パックを。

「私が未来から来たって言ったら笑いますか?」
「あ、それ知ってるよ。流行ってる映画だろ、えっと、たいむりーぷってので過去に戻るやつ」
「まぁ何度繰り返したってゴミはゴミですよ」

「じゃあ色んなゴミになれるわけだ」

興味のなさそうな顔の姉ちゃんが、どこか遠くを見ている。俺には関係のないことだし、ゴミにも関係のないことだ。
本当にこの姉ちゃんがたいむりーぷ?してきたんだったら、未来の日本のゴミ事情も知ってるんだろうか。その未来では、この姉ちゃんはまた初めからゴミなんだろうか。

卵が先か、鶏が先か。どちらが先にせよ、いずれ必要のないものはゴミになる。
卵を食べないやつから見れば卵はゴミだし、鶏に興味がないやつから見れば鶏はゴミだ。
それでもそのゴミを有効活用しようぜ、なんて汚いなりの綺麗事を言いながら、俺も俺達も姉ちゃんも生きている。

「リサイクルゴミに生まれ変われたら、そのうち再生紙とかになれるかな」
「なんだいそれ」
「ううん、やっぱり想像つきません」
「おもしれぇ女だ」

何を言っているんだろう。思わず笑ってしまった。
鬱屈としたセリフを吐いた自称ゴミの姉ちゃんは、ゴミとは思えないほど綺麗な目をしていた。
まだまだ使えるのに勿体ない。せめて磨いてやりゃあ、また綺麗になるさ。そんな気持ちで頬の汚れを取ってやる。
白い肌が軽く赤く染まる。ほら、姉ちゃんはまだ生きてる。

「さ、遊びはやめて帰んなよ」
「私はゴミです」
「じゃあまた捨てられときな。おいちゃんがまた仕分けしてやっから」

よっこいしょ。ここのゴミは全て回収し終わった。こいつらはいずれ、また何かに使えるようなものに生まれ変わるだろう。
残念ながら……いや、残念でもねぇが、姉ちゃんはもちろん『ゴミではないから』回収出来なかった。

俺は回収屋。ゴミを回収するだけの回収屋。
ゴミがなけりゃ生きてはいけないけれど、ゴミを無くすために働く、しがない回収屋。
もしまた姉ちゃんがそこにいても、きっとゴミじゃねぇから持ってはいかないだろう。