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ナスカ
2021-05-08 23:41:03
7940文字
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それはパズルを組み上げるが如く⑦
ガノアス転生ネタの続きです。
「お前を失ってから何年過ぎただろうな
……
」
年老いた魔王は星のよく見える小高い丘の上で一人ため息を吐いた。自身の座る右側にはこんもりとした土の山がある。そこには、彼の最愛が永遠の眠りについていた。彼によって苦しめられ、彼によって救われた、未来を視ることを生業とした男。土に埋められてから幾星霜。もう肉も骨も残っていないと魔王はわかっていたが、そこ以外ではどこにいるのかわからなかった。だからこうして毎晩毎晩、この場を訪れる。
「少しは褒めてくれぬか、アストルよ
……
。我はついぞ厄災に戻ることはなかった
……
。お前を喪った悲しみも、苦しみも、痛みも、我は抱えたまま、今際におる
……
」
土の山に寄り添い、魔王はそう語りかけた。東の空は少しずつ白んできていて、星たちが姿を隠し始める。金色に輝いていた月も無機質な白い物体になって空に浮かぶのみだ。
「だが、お前と出会えたことは本当に我にとって幸多きことであった。お前と過ごした時間は、我の人生の中で最も穏やかで愛情に満ちたものだった。感謝している、ありがとう」
東の山から、僅かに太陽が顔を覗かせる。終焉が、訪れようとしていた。
「願うなら、もう一度
……
一度だけでも、お前に
……
」
ある日の日の出の瞬間、この国を脅かし続けていた大魔王は人知れず消え去った。風の吹くこの地に執着し続け、憎悪と怨念の権化にまでなった男は枯れた木のように丘の上で力尽きたのである。愛する者に寄り添うその顔は、何よりも幸せそうであった。
「
……
やはりそうか」
ガノンドロフは朝の陽射しを浴びる高層ビル群
……
の向こうに見えるハイラル城を眺めながら呟く。
自分は、大魔王だった。豊かなこの国を欲し、欲したくせにこの手で荒廃させることしかできなかった。時には滅亡に追いやったこともあった。その度に姫と勇者に封印されてきた。蘇っては封印され、蘇っては封印されのいたちごっこ。その繰り返しにピリオドを打ってくれたのは、かつてのアストルだった。彼が愛を以てして自分の中に渦巻いていた怨念を消し去ってくれたお陰で、今の自分がいる。けれどかつてのアストルが死んだのは自分のせいだった。苦しむアストルの命を終わらせたのは自分だった。
愛している。何よりも強く、深く。けれど自分の側にいるとアストルは不幸になってしまう。今のアストルは自分といても不幸になどならないと言ってくれたが、それは彼の優しさから来る言葉だ。その優しさに甘え続けるわけにもいかない。
「ガノンさん、こちらにいたのですね」
「あぁアストル、おはよう」
おはようございます、とアストルが微笑みかける。紅色の頬にガノンドロフはドキリとする。アストルは本当に綺麗になった。骨が浮き出ていた体は細さがありながらも抱き心地の良い柔らかな感触になり、指が吸い付くような肌、輝く瞳、どこを取っても文句の付け所などない。自分のためにと美しくなったアストルは眩しくて、思わず目を背けたくなってしまうほどだった。
「アストル、その、」
「どうしましたか?」
「
……
いや、なんでもない」
言えない。自分から離れるべきだ、などと。身内もおらず、友もいないアストルが頼れるのは自分だけ。それと同時に、自分が頼れるのはアストルしかいない。お互い以外を失っているも同然なのに、離れるという選択肢を取るのは酷というものだ。アストルにとっても、ガノンドロフにとっても。
「じゃあ私から、いいですか?」
「?どうした?」
「今度、星を見に行きたいんです。場所はもう探してあります」
「もちろんいいぞ。お前と本物の夜空を見たことなど、まだ無かったからな」
ガノンドロフがそう言うと、アストルは笑顔から一転曇った表情をした。その表情の意味を汲み取れずにいると、アストルはすぐに元の笑った顔に戻った。どうやら曇り顔は無意識の内だったらしい。
「じゃあ決まりですね!次のお休み、一緒に行きましょ!」
❋❋
「ガノンさん、車お持ちだったんですね」
「ここは交通網がしっかりしているからな、日常的に使う必要が無いのだよ」
レジャーシートだの天体望遠鏡だのをどうやって持っていこうかと悩んでいたアストルは、「ならばこちらへ来い」とガノンドロフの言われるがままに導かれて地下駐車場へとやってきた。そこは静かで、夏ではあるが涼しくて、正直ずっとここにいたくなるほどだった。エレベーターの中は涼しかったが、外は茹だるような暑さでアストルはすぐに真っ赤になってしまった。そんなアストルを見て水と氷も持っていったほうがいいなとガノンドロフはクーラーボックスに二リットルのペットボトルや清涼飲料水、袋に入った板氷をポイポイと入れていき、もはや軽くキャンプに行くかのような様相である。食品はこの暑さで傷んでしまうことを恐れ、目的地に向かう道中で購入することに決めた。
ガノンドロフの愛車と初対面したアストルは荷物を持ったままそれを観察する。車については全く造詣のないアストルだが、その造りや大きさを見て所謂高級車であるのは間違いないとわかった。そして最大の特徴は、屋根が無いことだった。この車はオープンカーだったのである。
「出先で雨とか降ったら、どうしてたんですか?」
「
……
考えたことなかったな」
荷物をトランクルームに詰め、ガノンドロフは運転席に、アストルは助手席に乗りこむ。シートベルトを音が鳴るまでしっかりとつけると、ガノンドロフはメーターのところに置いてあったサングラスをかけた。変装用ではなく運転用ということはデザインの違いでアストルはすぐにわかった。
「よし、出るぞ」
「はい!」
アストルは横からガノンドロフが運転をする姿を見つめた。ペーパードライバーですらないアストルにはどちらがアクセルでどちらがブレーキかもわからなかったが、人車一体となって自在に車を動かすガノンドロフはいつもと違って見えた。
地下駐車場から出ると夏の陽射しが容赦なく二人を襲った。アストルは帽子を持ってくればよかったと後悔する。しかしガノンドロフがアクセルを踏むとたちまち車のスピードが上がったおかげで一気に涼しくなった。顔に当たる風は爽やかでありながら強く、帽子を持ってきていたらすぐに吹き飛んでしまったことだろう。思わず目を閉じて顔を腕で隠してしまう。
「わっ
……
」
「スピードは出しておるが大丈夫だ。安全運転で行くからな」
アストルが目を閉じたのは猛スピードを怖がったからだと思ったガノンドロフが声をかける。アストルはそこまで怖がっていたわけではなかったが、「はい」と答えた。ビルが並び立ち、高速道路が高い柱で支えられた街の下道はまるで深い渓谷の底のようで、自分がちっぽけな生き物なのだと思わされる。景色を見ていると、あまりにも早く過ぎ去るものだから看板一つ読むこともできないし、人とすれ違うのもあっという間だ。
「もう少しで中央街から出るぞ」
ガノンドロフの言葉に前を見てみるとビル群ではなく、広い平原とその奥にヘブラ山脈が見えた。夏であってもヘブラ地方は雪に覆われており、白く染まった尾根がぼんやりと見えていた。きっと向こうの方は涼しいのだろう。
「それで、何処だったか。お前が言っていた場所は」
「ラブラー山です。比較的登りやすいって言われてるので、私に丁度いいかなって思って」
「星はよく見えるのか?」
「もちろんです!そうじゃなかったら選びませんもの」
「はは、それもそうだな」
かつての街道に作られた道路を走っていくと、人家がポツポツとあった風景はやがて畑ばかりの田舎道に変わっていった。かつて山や丘だったところもあるのだろうが、そこは切り崩されて平地に変わっていた。しばらくそんな田舎道を進むと、向かって右側に田舎の風景とはミスマッチした奇妙な造りの建物が見えてきた。巨大な望遠鏡のオブジェが入り口の屋根にあたるところに飾られている。
「ガノンさん、あれ何ですか?」
「あれは王立古代研究所だ。古代シーカー族の残した遺産の研究をしているらしい。それ以外の話は聞いたことがないな」
「そうなんですか!古代シーカー族と言えば、星を読んでいたって聞いたことあります。天文学の基礎を作ったのは、彼らなんだとか」
またもアストルは饒舌に星の蘊蓄を語り出した。特待生になるための勉強をしているだけあってか、更に内容が高度で複雑なものになっており、ガノンドロフは運転していることもあって頷いて答えることしかできなかった。以前「好きなだけ語れば良い」と言ってもらったこともあり、アストルは生き生きと語る。楽しそうに喋るアストルの声を聴いているだけでガノンドロフは思わず笑みが溢れた。
だいぶ空気は涼しくなり、影に入ると少し肌寒いくらいだ。ラブラー山麓はこちらと書かれた看板の案内に沿って道を曲がると駐車場があり、それなりに車や人が集まっていた。特にファミリーが多く、軽自動車ばかりの中にオープンカーが停まるとなるとかなり注目が集まってしまった。
「
……
結構、人、いますね」
「怖くはないか?」
やや強張るアストルの顔を見て、ガノンドロフは心配する。しかしアストルは首を横に振った。貴方といれば怖いものは何もないと、そう笑った。
「
……
そうか。怖がっているのは、我の方なのかもしれぬな」
「ガノンさんが、怖い?」
「あぁ。
……
だが、我が怖がるわけにもいかぬな。お前をしっかり守らねば」
その強そうな表情にアストルは思わず見入る。やっぱりこの人は優しくて、それ故の脆さもあるかもしれないけど強さもあって、安心して身を任せられると。
「離れるんじゃないぞ」
車を降りてガノンドロフは言った。アストルは何も言わずにその大きな手に自分の白い手を組ませた。
❋❋
麓には駐車場があるだけでなくレストランやカフェ、お土産屋まで軒を連ねており、腹の虫も鳴ったところだったので食事を摂ることにした。観光地にありがちな少々割高価格ではあったものの、「こういうところはこういうものよ」とガノンドロフは笑った。ちょうどお昼どきで店の中は人ばかり。アストルは気疲れしてしまったようだが、頑なに自分だけ席に行こうとはしなかった。
「来るまで暑かったからな。それもあるだろう」
「そう、かもしれません」
満席状態で食事を買うわけにもいかず、二人で休憩スペースのソファに座り込んだ。アストルはガノンドロフに体を預け、ふぅとため息をつく。アストルの体はやや熱く、軽い熱中症になったのではないかと思った。腹は空いているものの、この様子では食事にも座席にもありつけそうにない。
「アストル、とりあえずソフトクリームでも食うか?このままでは埒が明かんだろう」
「はい
……
そうします
……
」
アストルはヨロヨロと立ち上がり、ガノンドロフに連れられて屋外にあるソフトクリームの店へ向かった。そこもやや人が並んでいたものの、中のレストラン程ではない。看板には「驚異の高さ!ラブラーソフト!」と銘打たれた通常サイズ三つ分の高さがあるというソフトクリームの写真が乗っていた。しかし食べづらそうという理由から、周囲のベンチに座って食べている客はほとんどが通常サイズを買っていた。これは面白そうだとガノンドロフは笑う。
「アストルよ、あのラブラーソフトに興味はないか?」
「うーん
……
私はあのサイズだと絶対お腹冷やしちゃうのでちょっと無理ですね
……
」
「そうか。ではお前は通常サイズでいいのだな?」
「はい。むしろハーフサイズ
……
いえ!通常サイズ食べます!」
食べられる量を増やしたいというアストルの目標は少しずつ達成されていた。二人して列に並び、アストルは通常サイズのバニラソフトを、ガノンドロフは面白がっていたラブラーソフトの抹茶チョコを頼んだ。茶色と緑色のミックスソフトはまさに目の前のラブラー山そのもので、大きさはアストルの顔の長さほどもあった。すぐに溶けてしまわないよう、先程座っていた屋内のソファに戻る。驚異の高さを誇るソフトクリームを持っている大男を周囲の客はざわざわしながら見つめていた。そんなことを二人は気にも留めず、涼しい室内でソフトクリームを食べ始めた。
アストルがスプーンを使ってちみちみ食べるのに対し、ガノンドロフはソフトクリームのてっぺんから豪快にかぶりつく。しかもバランスを崩さないようにうまいこと食べているので、アストルだけでなく周囲の人々までもが釘付けになる。
「うむ!美味いな!アストルも少し食べるか?」
「あ
……
じゃあ一口
……
」
アストルがスプーンでソフトクリームを一口分掬い、口に運ぶ。抹茶がやや苦かったのかアストルは口をすぼめた。その顔が可愛らしくてガノンドロフは思わず笑う。
「苦い、です
……
」
「抹茶が苦いとは、お前はまだまだお子様舌よのぉ」
クスクスと笑うガノンドロフにアストルはムッとする。じゃあもう一口ください!とムキになり、スプーンを強く握った。じゃあこっちをとチョコ味の側を差し出す。ガノンドロフのニヤニヤとした表情が気に食わなかったのかアストルは勢いよく反対側の抹茶味を掬った。
「抹茶の方でいいです!」
まるで警戒心丸出しの猫のようだと思い、ガノンドロフはアストルの頭を撫でた。今にも引っ掻いてきそうな様子に、自分は不満をぶつけられる相手になれたのだと嬉しくなる。それだけ心を開いてもらえているのだと。
「元気になったようで何よりだ」
ソフトクリームだけでは流石に満腹にはならないので、レストランが空いてきたのを見計らい遅めの昼食を摂った。ガノンドロフはケモノ肉丼の特盛りを飲み物かのように喉へ流し込み、アストルは野菜リゾットを時間をかけてゆっくりと食べた。食後の腹ごなしとしてお土産屋を回ったり、テラスから雄大な景色を眺めたり、夜になるまで時間を潰す。
日が暮れ始め、少しずつ客も減っていく。二人は山登りを終えた人々が帰っていくのをベンチに座って見つめていた。残っているのは星を見るのが目的らしい学生のグループや家族連れが数組。そろそろ行こうかと車に戻り、ガノンドロフはクーラーボックスを、アストルは望遠鏡とレジャーシートを抱えて整備された山道を登っていく。山といっても木がそこまで生えているわけでもないし危険な動物が彷徨いているわけでもない。しかし滅多に運動をしないアストルはゼェゼェと息を切らし、途中途中で休憩を挟みながらの登山となった。暗い山道だったが、登る度に星へ近づいてる気がして、疲れながらもアストルの気分は高揚していく。
「アストル、大丈夫か?」
「はい
……
な、なんとか
……
」
「頑張れ、あと少しだ」
ガノンドロフはアストルの手を取る。自分だって荷物を持っていて大変なのに、とアストルは申し訳無い気持ちになりながら棒のようになった足に言うことを聞かせた。もうすぐ望んだ星空が見られると己を叱咤し、一段一段を確実に登っていく。次の階段が無いことに気がついたとき、アストルは俯いていた顔を正面に向けた。
「着いたぞ」
ラブラー山山頂、そう書かれた看板が建っていた。アストルは疲れていたことも忘れて駆け出し、どこかいい場所は無いかと探し始めた。ガノンドロフはそんなアストルに引っ張られ、転びそうになりながらも夢中で付いていく。大きく高い岩が山頂の真ん中に聳えており、それは不思議な力で二つに裂かれていた。岩の間には先客がおり、アストルはそこでの鑑賞を諦めた。
打って変わってガノンドロフがアストルを導く。ぐるりと岩を一周し、ハイラル城や他の街明かりがあるものの空が広がっている場所だ。中央街や、かつて住んでいた街からは見ることのできない、いつかプラネタリウムで見た作り物の星空の本物が目の前に広がっていた。
「こっちはどうだ?ヘブラ山脈が邪魔をせぬぞ」
「ありがとうございます!そうですね、ここ
……
が
……
」
アストルはその風景に見入った。初めて見るはずなのに、何度も何度も見たことがある気がした。互いの手を重ね、夜が明けるまで一緒に空を見つめた。まだこんなビルも無く、アスファルトが草原だった頃。もう何年前のことなのだろう。
「ぁ
……
」
アストルは膝から崩れ落ちた。抱えていた荷物が地面に落ちたがそれにも気が付かなかった。とりとめのない感情が胸の中を渦巻く。これは一体何なのだろう。いや気が付いている。懐かしさと、寂しさと、後悔と、愛と。
「ここ、は
……
」
「
……
何度も、ここに来たな」
ガノンドロフの言葉にアストルは後ろに立っている彼の方を見た。その目は全てを理解しているようで、優しさの中に悲しみが浮かんでいた。わかっているのだ、知っているのだ、この人は。
「お前と何度もここへ来た。お前がいなくなった後も、ずっとここで星を見ていた」
「っ
……
!」
「我は、お前をずっと探していた。その意味が、わかるな、アストルよ」
アストルは黄玉の瞳を潤ませてこくりと頷いた。次々と溢れる涙を武骨な指が拭う。それでもアストルの涙は止まらない。これまでどうして忘れていたのだろう。いや、思い出したくなかったのだ。かつての自分が重い罪を犯したことを、彼一人を残してしまったことを。そんな過去に背を向けて、未来だけを見て生きていきたいと。それが後悔となって、アストルの瞳から溢れていた。
「ガノンドロフ、様
……
」
「今まで通りで良い。我らはもう魔王でも、占い師でもないのだからな」
「
……
ガノンさん」
「そうだ、それで良い」
二人が罪を犯したのは、もう遠い昔の話だ。二人を咎める者などどこにも存在しない。けれどガノンドロフはアストルに選択肢を与えた。
「アストル。お前は過去を知った以上、我から逃れる権利がある。我がかつてのお前を殺したも同然だ。それに、我がお前に近づいたのはお前を利用したかったからだ。こんな男と共にいたとして、お前は幸せになれるか?」
「
……
何故私が貴方にキスをしたか、忘れてしまったのですか?」
アストルは口をへの字に曲げる。そうだ、彼はとっくに覚悟を決めていたはずなのだ。覚悟が出来ていなかったのは自分の方だとガノンドロフは思わず自嘲する。
「いや、忘れてなどおらぬ」
「嘘、貴方は優しいもの」
結んだ唇をほころばせ、アストルはガノンドロフに抱きついた。これが彼の答えだ。そして、ガノンドロフが望んでいた答えだった。心は決まっていた。けれどそれは自分のわがままだと思っていた。最初から想いは重なっていたのに。
「ガノンさん、私と結婚してください」
「もうしただろう?」
「あれは紙の上でだけでしょう?貴方と、永遠の愛を誓いたいんです」
アストルの表情は至極真剣だった。黄玉の瞳の輝きを見て、ガノンドロフは悟る。あの日砕いた宝石を、もう一度組み上げたかった。元の姿に戻したかった。しかしそれはパズルを組み上げるが如くに難しく、何度も心折れそうになった。けれどそれは今、いや、もっと前から自分の側で煌めいているではないか。
「アストル、我と結婚してくれ」
その言葉を待っていたと、アストルは背伸びをする。求められているものはただ一つ。
交わした口付けは、新しい二人が誕生した瞬間だった。
続く
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