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豆炭々炬燵
2364文字
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訳アリ心霊マンション
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【東ツヅ】明日ね
ポッ〇ーの日(風味)(添えるだけ)な酔いどれ🍮さんの🍮👓なお話。
「今日元バイト仲間と飲み会で帰り遅くなっからさ、晩御飯用意しなくて大丈夫だぜ」
あと、先に寝てろよなー。
そう東雲さんが言ってから数時間経った。片付けないといけない家事全般は早々に終わり、今は有希さんと二人で晩御飯です。
「ツヅミ、今夜大家いなイ」
「そうでしたね」
身に沁み込んだ動きは時に厄介だ。ついつい三人分作っただけではなく東雲さんの分のお茶碗をローテーブルの上に並べてしまった。有希さんに指摘されるまで全く気付かなかっただなんて。
東雲さんの分は一応ラップをして冷蔵庫に入れておこう。もしかしたらお夜食で食べるかもしれないし、食べないとなったら私が明日食べればいい。
「今日ノ魚の煮つけうまイ」
「いいのがお魚屋さんで買えたんですよ」
皮目の下処理、照り照りになるように煮詰めた魚は見た目もさることながら味付けも我ながらバッチリ。箸を入れれば身はほぐれ、白米との相性もいい。私が作った晩御飯をおいしいおいしいと褒め食べてくれる有希さん。
いつもならここに声がもうひとつ増えるけど今夜はそれが無い。
晩御飯のお片付けを済ませ、割烹着を脱ぎハンガーに掛けた。
「お風呂先にいただきま、すね」
本当に普段の癖って恐ろしい。あとから東雲さんはいないというのを理解しているにもかかわらず、彼女がいるように振舞ってしまう。苦笑を漏らしつつ、私は着替えを持って順番待ちをしなくても入れるお風呂場へ向かった。
ほかほかの風呂上り。消していたテレビをつけた。
「あ、これ東雲さんがいつも見ている番組だ」
しかも特番なのか通常より放送時間が長くそこそこ遅くまでやるようだ。ひとまず録画予約をしてから放送終了時間をもう一度確認する。
「見てるうちに帰ってきたりしないかな」
放り投げた言葉は誰にもキャッチされず静かな部屋の中を転がっていった。
夜遅いって言ったけど何時に帰ってくるつもりなんだろう。まさか午前様と思い時間を確認すれば、まだ一応今日の時間帯だった。結局最後まで番組を見てしまい、東雲さんに言われた手前、寝支度を始める。
「明日の朝ご飯なににしよう」
食材の下拵えをしたいけど、流石にこんな夜更けに音を立てたくない。黙々と思考を朝ご飯の献立内容に割いていたら、廊下側から硬い何かが床の上を歩く音がこの部屋に近付いてきて、程なく鍵を差し込む音と玄関扉が開く音が続いた。
「明るいって思ったら起きてるじゃ~ん、ツヅミィー」
へらへら、ふらふら。覚束ない手つきで扉を閉め鍵を掛ける東雲さんの姿は誰が見ても酔っているものだった。
だらしなくサンダルを玄関で脱ぎ部屋に上がる東雲さんへ物音を立てぬよう出迎えに行く。
「おかえりな、酒くっさ!」
近寄った瞬間、漂う強いアルコール臭に思わず鼻を摘まみ顔を背けた。心なしか顔も赤く、表情筋もゆるゆるだ。そういえばここまで酔った東雲さん見るの初めてかもしれない。私がいる前では彼女はお酒をあまり飲まない。飲んだとしても嗜むくらいだった。
久々に羽を伸ばしたんだろうと思えば、お酒臭さもしょうがないって思えた。
「飲み会、楽しかったですか?」
「うん、楽しかったー」
上機嫌にこたえる東雲さんにこっちまで顔が緩む。
「はい、お土産ー」
そういうや手に持っていたビニール袋を渡された。中を見ればお徳用ポッキーが一袋入っていた。
「今日はーポッキーの日なんだってー」
一緒に食べようという東雲さんの誘いを私は一刀両断した。もういい加減夜遅い上に歯を磨き終えているのもある。
「えー」
「明日一緒に食べますから、ね? はやく歯を磨いて着替えて寝ますよ」
私の言葉に残念がっているけれど、そこまで深く残念がっていないというか東雲さんはふわふわ続けた。
「あとねー、ポッキーの日ってのもあるけどよー。これ、ツヅミへのお礼なんだー」
「お礼?」
うん、と殆ど寝る一歩手前な眠そうな東雲さんの糸目が薄っすら開き、私に半ば凭れかかる様なかたちで抱き着いてきた。
「ありがとなーツヅミー」
鼻につくお酒の匂いが一気に強くなる。私に凭れ掛るかたちで抱き着いてきた東雲さんの腕がぎゅうっと背中に回された。
「いっつも家事してくれてー助かるー」
「どういたしまして」
ぽんぽん。東雲さんの背中を擦れば嬉しいのか楽しいのか彼女の口から笑い声が漏れる。
「子供なのに偉いよなー」
「いえ」
「ぎゅっとするといい匂いがするしー」
「うん?」
「やわっこくてー、かわいいしよー」
「ううん?!」
鼓膜を通り越し頭の中にまで入り込む東雲さんの言葉にどんどん恥ずかしくなってくる。多分、今顔赤くなっちゃってる。こっちの気持ちを知ってか知らずか、頭をよしよし撫でる手付きはいつもより柔らかい。
「ご飯一緒に食べてくれてよーひとりじゃないご飯ってこんなにうまいんだってさー分かってなー?毎日すっげー嬉しいんだぜー?知ってたかー?」
背中に回していた腕を解き東雲さんが私を見詰める真剣でいて朗らかな眼差しに火照っていた顔の熱が引き代わりに胸の奥が熱くなった。
だから私も真っすぐ彼女の目を見詰めこたえた。
「私だって毎日とても楽しくて嬉しいんですよ?知ってました?」
東雲さんは八重歯を覗かせてニカリ笑うので私もつられて笑った。
その後、今にも寝てしまいそうな東雲さんを着替えさせ、歯を磨かせベッドへ転がさせた。
着替えは殆ど私が彼女の服を脱がせて着替えさせたし、歯磨きに至っては途中までしか磨いていない歯を代わりに入念に磨いた。
「ありがとーママー」
抜けに抜けきった東雲さんの言葉をやれやれと聞いてから私は彼女の寝室のドアを閉めた。
明日の朝ご飯の献立は、起きてから考えよっかなんて言う私の顔は多分笑っていたと思う。
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