【カミ東】この距離がもどかしくて

いいですか、🔪🍮スキーは燃料が投下されたら踊り狂っちまうんだぜ?タノシイネー。

一時の衝動に流された体はとても正直で、それに置いてけぼりをくらう心は地に足が着いていない。というか実際問題地に足が着いておらず、代わりと云わんばかりに東雲の腰元に強く絡みついている。
前回飛びつく高さを見誤った経験を踏まえ、今度は非常に遺憾の意であるものの冷却材代わり抱っこされていたのと同じくらいの高さになるよう抱き着いた。
「なんだァ~?」
勢いよく真正面から抱き着けば、半ば反射的に東雲は抱き着いてきたカミキリの体を落とさぬよう腕を回し、カミキリもまた自身の体が落ちぬよう相手の腰元に足をガシッと巻き付け肩を掴んだ。
あとは伸ばしている腕を曲げたら二人の間にある隙間が埋まる。前回と同じように密着すべくカミキリが腕を曲げるべく頭から腕へ指示を飛ばすも、腕は指示に従わず真っすぐ伸ばされたままだった。
……?」
ふとした疑問の答えは自身の耳がやけに熱を帯びている原因と似通ったものだということにに辿り着く。以前の時には感じることが無かった今にも走り出したくなる恥ずかしさと同等かそれ以上に離れたくない気持ちが絡みついている足に益々力が込められる。
落ちぬよう体を支えてくれている東雲の手。困惑しながらも突き放す素振りを見せない東雲にカミキリの中に一層離れたくない気持ちが膨らむ。
早鐘の如き打ち鳴らす鼓動の音が聞こえてしまうのではないだろうかと不安が募る。だが、それ以上に二人の間にある隙間を埋めたいという強い感情が心を震わせる。
そして、東雲からやおら下ろそうとする気配を察したが為、カミキリはゆるゆると腕を曲げ東雲の首元に抱き着いた。
「待ってカミキリさん待って。首、首絞まってる!苦しい!苦しいから!?」
多少力加減を誤ってしまったが、当初の目的通り二人の間にあった隙間を失くすことに成功した。
此処までくれば五月蠅いくらいドキドキする鼓動も何も無い。どうせバレている気付かれている。そんな些末な事より、距離が無くなったことで歓喜に打ち震えているもう一人の自分を何処か他人事のように思えた。
相変わらず、すぐさま東雲から距離を取り駆けだしたくなる恥ずかしさは健在で、されど彼女の肩口に顔を埋め離れたくない気持ちもまた勢力を拡大しつつある。
胸の奥がざわついて落ち着かない。嫌な気持ちでざわつくとは似て非なる感覚にまたカミキリは東雲の首に回した腕の力を強める。
「(顔熱い、でも離れたくナイ)」
下手になってしまった呼吸ですら熱を孕み、それが衣服越しに東雲の鎖骨を撫でている事にまた耳が熱くなる。
夜が明けぬ世界から再び夜が明けた世界へと連れ戻してくれた感謝の念とは違う、心の奥底から湧き上がるくすぐったくもあたたかい想いはまだ含羞の色を含むが、とても心地よくずっと微睡んでいたくなる。
あれだけ騒がしかった鼓動が徐々に落ち着き、今となっては東雲の鼓動が分かるほどだった。耳を掠める呼吸の音。その近さにカミキリの心の奥底から甘くあたたかな気持ちが湧き上がる。
密着した体は容易に相手に伝わり、二人の体温が混ざりあってしまうのではなかろうかと錯覚してしまう。
以前と違い涼しい空気を纏っている自信が全くない。それどころか東雲より熱があるんではなかろうかとカミキリは独り言ちる。
「っと」
ズレ落ちてきた体を抱え直す東雲に合わせカミキリもまた腕と足を絡みなおした。
何時かは下ろされるとしても、許される限りこのままでいたい。そう希わずにはいられない。
「──大家サん」
「なーにー?」
小さく囁いた、ただ相手を呼んだ声はしっかりと東雲の耳に届き、特に怒りも嫌気もささず、ただただ柔らかく当たり前のように返してくれる声色にカミキリは顔を彼女の肩口にすり寄せた。