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豆炭々炬燵
1847文字
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【ペニビル】千年後の誰かへ
続編映画その後設定。何故か普通に白塗り道化師生存ルートかつ売れっ子小説家のとこに御厄介になっております。とある曲に滅茶苦茶影響受けております。ノリと勢いでどうぞ。
「君の書く小説は本当につまらないねぇ」
驚くほどテンポよく執筆が進むビルの背中越しにペニーワイズがノートパソコンを覗き込む。
白色の人差し指が”ここがよくない、ここも、そこも、全部”と指さす無礼にもビルは慣れっこになってしまっていた。そもそも置かれた現状自体おかしいのだから、とかく突っ込んだところで何も改善されない。
しつこくディスプレイ前に居座る白色の人差し指をビルが鬱陶しげに払いのけ。
「言ってろ」
視線を書き途中の小説から視線だけ後方にいるペニーワイズに向ける、はずだった。ビルの後方には壁に埋め込まれた本棚があるばかり。ビルが背もたれに腕を乗せ振り返る。何度も体勢を変え振り返るたび、椅子がギッと軋む音をさせる。
煙のように姿を消した相手にビルは「嗚呼、もしかしたらまだ自分は悪い夢を見ていて現実の僕は机に突っ伏して寝てい
「どうせ誰も読みやしない小説を書くより私と遊ぼうビルゥ~」
音も無く急に今度はノートパソコンの後ろから身を乗り出して現れるペニーワイズにビルの体が少しだけ浮き、驚いたのを誤魔化す勢いで口調を荒げる。
「失敬な! これでも売れっ子作家なんだぞ!?」
負けじと額がくっ付きそうなほど距離を詰めペニーワイズと向き合うビルだったが、白塗り道化師は楽し気に笑うばかり。急遽始まったにらめっこはビルが舌打ちをしながら椅子に腰かけ直す形で終了した。あからさまに不機嫌オーラを滲みだすビルに対しペニーワイズの真っ赤に染められた唇がつり上がり耳障りな笑い声を室内にバラまいている。
沸き立つ憤りを深い溜息と共にビルが吐き出す。僅かばかりの怒りを腹の底にしまい込んだ途端、険しかった青い瞳がふっと和らいだ。
「──何年後何十年後、誰かの心を震わせ何かの切っ掛けを生む引き金になればって」
いつの間にか耳障りな笑い声が消え、金色に輝く双眸がビルをねめつける。まるで値踏みでもするかのようにじっと見続け逸らしやしない。
構わずビルは淡々と語りだす。
「自分の中にある世界を文字に書き起こす。もしかしたらそれを見た誰かの人生が変わる、かもしれないし変わらないかもしれない」
ノートパソコンのディスプレイに表示されている執筆中の小説から視線を随分とご機嫌な顔をしているペニーワイズに向ける。
「
……
それは楽しいことなのかい」
抑揚のない熱の籠っていない言葉。それがとても面白くてビルが吹き出すと、金色の光が強まったので先に進めた。
「そうだな
…
、思うように書けない時期はとても苦しい。だけど、それ以上に楽しくて仕方ないんだ。思い描いた世界を書き、その世界を読んだ誰かが歩んでいたこれまでの人生を根底から覆したら、と考えるだけでとても面白く素晴らしいことだろう?」
「ビル、君は思っていた以上に傲慢な奴だ」
「何をいまさら」
話はこれで終わり。ビルが再び小説の世界に旅立とうとするのをペニーワイズが引き留める。
「たとえば君がその誰かの心が震える瞬間や切っ掛けを見ようにも君自身とっくに土の中じゃ意味ないんじゃないかい?」
がっしり手首を掴む白い手は答えを聞くまで離してはくれなさそうだ。
不承不承。ビルは真っ白なドーランが塗りたくられた顔を見上げ口を開く。
「別に僕はその瞬間に立ち会いたいわけじゃない。今だって僕の作品に触れ少しでも変わった人がいるならば、それだけで証になる僕が其処にいたって、ね?」
わざとらしくウィンクしたところで、ビルの手首を掴んでいるペニーワイズの表情が緩む事は無かった。
それどころか何か思案していたかと思えば白い枷を手首から外し、ビルの腕を伝い首を撫ぜ両頬を包み込む。恐怖を抱かない青い瞳に映り込む自身の姿。真っ赤な口紅を塗りたくられた口がゆっくり開いていく。
随分無意味な事をするんだねビリー
君が望むのなら悠久の時を生きる私と同じ存在にしてあげよう
そうすれば君のその目で君が望むものを見られる
……
ペニーワイズの内から産声をを上げた言葉はおぞましい牙がぞろりと並ぶ口から終ぞ生れ落ちず。変わりの言葉が生れ落ちた。
「少なくとも私は以前の小説の方が好みだ」
「残念だったな。これから書く小説はずっとお前好みにはならない」
ビルが軽く払いのけたペニーワイズの両手はつまらなそうに空を漂う。暫し浮いていた手は嫌がらせ全開で謎空間から赤い風船をこれでもかと取り出し始めるもんだから、今度こそビルは椅子から立ち上がる羽目になった。
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