豆炭々炬燵
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我、ケーキ所望す

公式呟きでケーキ狙ってるミニペニさんネタの(と、見せ掛けたデンブロウ兄弟もの

悴む寒さも何のその。子供たちの喜びで冬の寒さが飛んでいく行事が今年もやってきた。
クリスマスツリー、ジンジャークッキーに七面鳥、クリスマスケーキとプレゼントを入れる赤い靴下。年に一度の特別な日、子供たちにとっては掛け替えのない楽しくて嬉しい日。母が腕によりをかけて作った料理の数々はどれも心とお腹を満たしてくれる。
「今年こそサンタクロースを捕まえてやるんだ♪」
フォーク片手に意気込むジョージに両親が微笑み。サンタの仕事が一つ増えただの、見つかるといいわねだのと話ながら愛おしげに小さな頭を其々撫でていた。
母に口の周りのソースを拭かれてもジョージはサンタ捕獲作戦について自信満々に語っている。
「よ、よる遅くまで、おき、起きてるつもりか、ジョ、ジョージィ」
「頑張る!」
「去年も、そそそ、そう言って、ねっ、ねっ、寝てたのは、ど、どこのどいつだ?」
「じゃあ、ビリーも一緒に起きて捕まえるの手伝ってよ~」
「や、や、やだね」
「え~~~」
不満で不服な声を上げビルの上着を引っ張りながら体を揺らすジョージに構わずビルはマッシュポテトを口に運ぶ。その口元はやや緩んでおり笑うのを我慢しきれていない。
ジョージはまだサンタクロースがいるのを信じている。純粋にいるのだと信じて疑わない。
だが、ビルはサンタクロースの正体は父で毎夜寝静まったあと、こっそりツリーの下にプレゼントを置いているのを知っている。でも、そのことをジョージに言ったことも無ければ言うつもりもない。
ビルが乗ってくれないことに不貞腐れてそっぽを向いたジョージにビルがこしょり耳元で囁く。
「(ママはぼくた、たちがよふか、しししするとおこ、怒るからな、な、な、内緒でや、やるぞ)」
「(――うん!)」
屈託のない顔で頷くジョージを見て秘めた作戦に気付かない親はいない。
父は益々笑みを深くして頷き、母はやれやれと肩を竦めクリスマスケーキを切り分け始めた。
真っ白なホイップクリーム、赤くて甘酸っぱい苺、お菓子の家とサンタクロース、チョコのプレート行き先はそれぞれジョージとビルの皿に運ばれる。大体プレートをビルが食べ、残りの家やサンタをジョージが食べる。
隣で美味しそうに家やサンタを頬張るジョージに羨ましい感情が浮かぶものの、ビルは自分が兄として弟に譲る気持ちともう子供じゃないんだから欲しがったらおかしいという気持ちで浮かぶ感情を抑え込んだ。
それでも浮かぼうものならチョコプレートを食べて誤魔化した。
「の、残りのけ、けけけケーキ部屋にもっ、もっもって行っていい?」
「いいわよ。でも、食べ終わったらちゃんと歯を磨いて。お皿は洗って片付けなさいね」
「う、うん」
「ビル!ずるいっ、ぼくもぼくも!」
母の了承を得たビルは早速ケーキを一切れ更に乗せ――、ツリーの下に置いてあった赤い靴下を素知らぬ顔で一緒に持ち階段を駆け上がっていった。
後ろではジョージも真似してケーキを運ぼうとしているようだが如何せんビルのように上手く出来ないようで四苦八苦している様子が見なくても分かる。
一足先に部屋に付いたビルは背中で扉を開け、振り返らず足で扉を閉めた。左手にケーキが乗った皿。右脇には赤い靴下を抱え、その二つを机の上にことりと置いた。
赤い靴下から覗くオレンジ色のフサフサした何か。それにビルが気付いたのは家族が食卓に着いて和やかな談笑混じりの食事が半ばに差し掛かった頃だった。
視界端で何かの気配がチラチラ。間違い探しでもするようにビルが談笑の合間あいまに違和感を探せばそれは存外簡単に見つかった。
赤い靴下からひょっこり顔を覗かせていた何かは金色の目で直向きにケーキを見詰めていた。微動だにせず物音一つ立てず、ただひたすらにクリスマスケーキを見詰めていた。
「・・・」
のっけから色々突っ込みたい衝動がビルの中を駆け巡る。どうせ大人達には見えないとしても、だ。一先ず観察して分かったのは相手から発せられるケーキ食べたい欲求の駄々漏れが凄まじい。涎垂らして人差し指を唇に添えちゃうくらい食べたいのか。
可能な限り違和感なくビルはケーキ及びケーキを食べたくて靴下に潜んでいた何かを回収。
そして、揺れが収まったことで靴下からもこもこ出てくる何かを椅子に座り頬杖をつき眺めていた。
ぴょこん。効果音が付くならきっとこんな音。
白塗りの顔が靴下の縁から顔を覗かせた。通常よりかなり小さくなった相手にビルが鼻で溜息を吐き。
「ほ、ほら。たたた、食べたかったんだろ?」
ケーキ、ビル、またケーキと金色の目が動き、相手は靴下の縁に手を置いて体を抜こうとした。抜こうとしたが残念な事にすっぽり嵌って抜けなかった。動くたびにぐわんぐわん靴下が揺れ、あわや倒れる寸前、ビルの手が靴下を受け止め、そのまま小さな体を引き抜いた。
「サンキュービル」
体が小さくなると声も高くなるのか。
ふと手のひらに収まる相手にビルは頭の隅で思った。ケーキの傍まで運んでやり、フォークを持たせれば相手にとっては大きなフォークで器用に食べ始めた。
既にジョージに負けず劣らず口の周りがクリームだらけなのは致し方ないのだろうか。そんな風に思いつつ、ビルは手近にあったティッシュ箱を引き寄せ数枚引っこ抜いた。
「ビル!チキン!」
「よ、よーし。ジョ、ジョージィ。そそそ、そこに座れ」
開口一番。勢いよくビルの部屋の扉を開けながら放ったジョージの一言。
分かっている。ジョージが言いたいことはよーく分かっている。大方ケーキだけじゃなく七面鳥も持ってきた、と言いたかったんだろう。それはビルも重々承知している。悪気があって言っているんじゃないのは承知しているが真顔になってしまうのは如何にもならない。
首を傾げながらも近寄るジョージの口許をビルは思いっきりティッシュで拭いて少しばかり鬱憤を晴らしたのだった。