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豆炭々炬燵
4329文字
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モアナと伝説の海シリーズ
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【安易な転生】単純で簡単な考え2【と擬人化があるよ】
モアナが生きていた時代から幾年月が過ぎ人々の生活は自然ありきなものから科学が溢れる生活に変わり同時に神話や魔物の類の話は廃れていった。
※タイトル通り安易な転生パロもの。モアナちゃんは魂だけ受け継いで前世の記憶皆無。対してデミゴッドさんと化け蟹さんはめっちゃ長生きご健在?な特殊傾向モリモリな予定。
よもや女神の島に上陸するとは夢にも思わなかった
開口一番。海原を快調に滑り渡る風と波を動力源にしない船の縁に寄りかかるタマトアが感慨深げに心中呟いた。
『テ・フィティの心?それはちょっと分からないけど、テ・フィティの島にならあるけど行く?』
昨晩モアナの話を聞いたタマトアは思わず寛いでいたソファからずり落ちるのは仕方のないことだった。
宛ら女神が眠っているような見た目も相まって島独自の生態系を作っているテ・フィティの島は今や国指定の自然保護地区、そして一年に僅かな人数だけしか入れない特別な観光スポットとしても有名らしい。
「(しっかし、島の見学ってのは数年先まで埋まってるってテレビでやってたぞ?如何して何の準備もしてない俺達が行けるんだ?)」
「あ、見えてきた!ほら見てタマトア!」
隣で海鳥と戯れていたモアナが前方を指差す。
緩やかな稜線を描く緑の山。女神が寝ていると称されているだけはある神々しい姿にタマトアの体が強張った。
島の生態系を崩さぬよう最低限で作られた桟橋に白亜のクルーザーが止まり、簡易的な梯子がクルーザーと桟橋の間に掛けられた。
そして、桟橋で待ち構えていた初老の男性が深々と一番初めに降りてきたモアナに頭を下げた。
「ようこそ、おいでになられましたお嬢様」
「!?」
「急に無理言ってごめんなさいね」
「いえいえ、お嬢様の頼み事はくれぐれもよろしく頼むと旦那様から言付かっておりますので。ささ、どうぞ此方に」
「ありがとう」
「!!?」
頭の中が大混乱しているタマトアを他所に二人の会話は続いていく。
暫くして人間社会をよく理解しようとしていないタマトアの頭でもモアナは中々の地位にいるのだと理解した。
生態系維持のため消毒液が浸されたマットを踏み、体に付着しているであろう種子を落とすため四方から風が吹き荒れる小部屋に続けざまに入った。お陰でぐったりげっそりなタマトアに此処まで慎重に慎重を重ねるのには訳があるのだとモアナは人工的に作られた橋の上を渡りながら語る。
「前は普通に観光客が島の中を歩いていたそうよ。でも、他の地域に生息する植物がテ・フィティの島で育ってしまって。その時はすぐ対処出来たから良かったけど、強い繁殖力のある植物だったらあっという間のこの島独自の生態系は崩されてしまう。この島の生態系はこの島にあるもので形成されているからこそ。そのための防衛措置、ちょっと大袈裟かもしれないけど仕方がない事なの」
踏み荒らさないよう設けられた橋の上。島の端をぐるりと囲む橋は決して島の中心には続いていない。されど、ヤシの木が生い茂るその先、隙間を抜け島の奥を凝視する青色の瞳がギラついた。
「大袈裟なんかじゃないぜ嬢ちゃん。っと」
「ちょっと!?タマトア!橋の上から降りたらいけなあぁぁ~」
モアナの制止も聞かず橋から降りただけではなく、モアナの引っ張り下ろしその手を掴んでタマトアは奥へ進んでいく。緑と花が満ちる世界をかき分けながら今度はタマトアが語りだす。
「大袈裟なんかじゃない。テ・フィティの島に上陸してから確信した。テ・フィティの力は弱まっている。この俺魔物が上陸しちまう程にな」
「どういう、わっ、こと?わたっ」
片足が義足だと感じさせない歩行スピードにモアナの足が縺れるのでタマトアは有無を言わさず彼女の体を脇に抱えた。
「テ・フィティは女神だ、その女神が眠る島は清浄なる空気が満たされた神域であり邪な心を持つ魔物を一切寄せ付けない。それは他の島の植物の種だって同じだ。その地に根付こうとする前に枯らされちまう所謂自己防衛ってやつだ。その自己防衛が働いている間は俺達魔物は近付きたくても近付けない、上陸したが最後空のお星さまの仲間入り。ゆえに不埒な考えを持ち且つこの島に上陸出来る奴限られている」
「半人半神のマウイだからテ・フィティの心を盗むことが出来た
…
?」
「その通り!俺達が躍起になるのも当たり前だってことだ」
茂みをかき分け続けているとモアナの様子が俄かに変わりだし、それを察したタマトアは徐に彼女を下ろして今度は彼女のあとを追い始めた。
無我夢中、何かに呼ばれるような感覚に導かれたモアナは何時しか渦巻き模様の岩の前で佇んでいた。その中心に嵌っている新緑に輝く石は苔むしているものの弱々しい鼓動を刻んでいる。
荒くなった息を整えず、無心で石を見詰めるモアナの後ろから下卑た笑い声が聞こえ出す。
振り返れば額と腹を抱えたタマトアが上機嫌に嗤っていた。
「こんなに、こんなにも簡単にテ・フィティの心が手に入るとはな!?こいつは実に目出度い!!
――
って言いたいとこだがコイツはもう要らねえな」
スッと興味を無くしたタマトアの顔が弱々しい律動を刻む心を見下ろした。
モアナが訝しげな視線を送ればタマトアの瞳に一瞬寂しげな色を纏うも一瞬で蔑みの色を濃くした。
「神々ってのは時に不自由なもんさ。良かれ悪かれ信教する奴らがいなくなったらあっという間にその力が弱くなり下手すりゃ無くしちまう。俺は魔物だからな信じる奴がいようがいまいが関係ない。だが、神々は違う。お前ら人間がコイツ等神々を信じてねぇと
……
。
つまりはコレはもう俺が欲しいお宝じゃないってわけ。お分かり?」
タマトアの声が聞こえている筈なのにモアナの頭の中にはその内容が入って来ない。苔むした心を撫でるモアナの指先は悲しみに満ち、自然とその額を岩壁に当て目を閉じた。
「テ・フィティ
……
」
腕を組み背を向けてもタマトアの耳はモアナの鼻を啜る音を拾う。恐らく涙を流しているであろう。しかし、魔物であるタマトアはモアナを慰める術を知らず、ただただ彼女が泣き止むまでその場に待つしかなかった。
クルーザーに戻り目が赤く腫れたモアナはテ・フィティの心が嵌められた場所から一言も話していない。力なく椅子に座り港に着いてもその足は覚束ず、あわや車に接触しそうになる度にタマトアは彼女の腕を引いた。普段であれば笑顔で礼を述べる状況にもモアナは何も言わず歩いていく。
自宅に帰っても心此処に在らず。夕ご飯も食べずにモアナは自宅裏の浜辺で膝を抱えるばかり。
「私ね、ずっと信じてたの
……
」
モアナの独り言は波音に攫われ消えていく。
「ずっと、おばあちゃんが言っていた話は本当なんだって
…
。だから色々な書物をかき集めて、調べて、新しい話を見付けるたびに心が躍ったわ
……
」
波音に紛れ砂を踏みしめる音が大きくなっていく。
「パパはそんなもの何の役にも立たないって言うけど歴史や神話、伝承を知るのを止める事は出来なかった。止めなかったらあなたに出会えた
……
伝説の大蟹、魔物の国ラロタイに住む、タマトアに
…
、そうでしょ
…
?」
タマトアは答えず真正面からモアナをただ見下ろしている。
「信じる人がいなくなったら力が弱まる
…
、なら私一人だけでも」
「多寡だか人間一人で如何にかなる問題じゃない」
被せた言葉は低く冷たい。
視線を合わせるようしゃがんだタマトアの目がスッと細くなる。
一度目を見開いたモアナであったが、ゆるゆると顔を緩め首元のペンダントを握りしめた。
「そっか、そうよね
…
。私なんかが信じたくらいじゃ
……
私なんの変哲のない普通の、」
尻すぼみするモアナの言葉は最後まで聞き取れなかったが、口の動きで何を言ったかは予測出来る。また目が潤み出し涙がモアナの頬を濡らしだした瞬間、生臭く青い舌がベロリと涙ごと頬を舐め上げた。
いきなりの事でキョトンとするモアナにタマトアが間近で不敵に笑う。
「嬢ちゃんは確かに人間だ。人間一人が神々をどうこうする力なんかない。ただし、半分人間の神なら如何だろうな?」
「半分人間
――
マウイ?マウイのことね!!」
先程の悲壮感は何処へやら。一縷の光を見付けたよろしく勢いよく立ち上がったモアナの頭は見事タマトアの鼻下に直撃した。
「あだっ!!」
砂浜に仰向けに倒れ当たった箇所を抑えるタマトアにモアナは軽く謝罪をしたものの、すぐさま彼の体を抱き起しその場で跳ね始めた。
「そうよマウイ!彼なら半分人間で半分神、もしかしたら
…
!もしかするんじゃない!?」
「あー
…
こうなるなら言うんじゃ無かった」
「そうと決まれば彼にゆかりのある地を探しに行かなきゃ」
「お前学校ってやつはいいのか。って、おーい聞いてるかー」
既に興奮しきりのモアナにタマトアの小言は届かない。浜辺を行ったり来たりブツブツ呟きながら歩く様は実に楽しげで。それを見てタマトアも致し方ないなといった嘆息をしたその時。
南国の島にも関わらず凍えるような気配にモアナは自身を掻き抱いた。
肌が粟立ち脳内が必死に警鐘を打ち鳴らしているのに顔が視線がモアナの意志とは関係なく波打ち際に向けられる。
果たして其処に居たのは書物で何度も見た事のある姿をした、男が佇んでいた。幽遠さを漂わせる異様な気配はまさにこの世ならざるモノ。
「~
…
、~~
……
」
声を発したくとも声が出ない。というより出すなとモアナの頭の中で誰かが叫んでいる。
そうこうしている内に波打ち際に佇んでいた男は癖のある黒髪から水を滴らせ、ずるずると右手に持った何かを引きずりながら此方に近付いてきている。また一歩、また一歩距離を縮めるにつれ、その男は木の葉を腰蓑を穿き、服の模様だと思っていたモノは夥しいほどのタトゥーだった。
ザリ、ザリ
…
。砂を踏み締める音がモアナの手前で止まる。
タマトア程では無いがモアナより背の高い男の顔は俯いているというのにその瞳は伽藍洞になっておりその奥は何処までも暗がりが続いている。
ひゅっとモアナの細い喉が鳴った。瞳孔が限界まで開き、嫌な汗が背中をつたう。
男の右手に持っていた物が細かな彫刻が施された大きな釣り針だと知るやモアナの心が頭が完全に目の前位にいる男は先ほど言っていた相手だと断定した。
成人男性にしては指が短く掌が大きい左手がモアナを捉えようとするのに合わせ、タマトアがモアナの腕を引き後方に引き寄せた。
煌々と輝いていた月が雲に隠され、辺りを重たい闇が支配する。
「久しいな友よ」
暗がりの中、無機質でいて不気味な輝きがタマトアの体を彩り。
「お前も見ない内に、随分と」
男の手にしていた巨大な釣り針が青白い光を帯び始めた。
「落ちぶれたな?」
飄々としている言葉とは裏腹に狂気染みた笑みで男を睨むタマトアは嘗ての宿敵の変わり果てた姿を嘲笑い。友と言われた男は伽藍洞になった目をつり上げ釣り針を握りしめる力を強めた。
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