夢でもお引き取り願いたい

ようじょりーん(記憶有)が何故か夢の中でプッチと遭遇する夢オチ話
プチ徐だって言い張る
承太郎さんこいつです(濡れ衣です

唐突な事に何故かあたしの体は十四歳ほど若返った状態で知っているような知らないような曖昧な街のど真ん中に立ち尽くしていた。

おぉ、世界がたけぇ

小さくなった手をにぎにぎ開いて閉じてから空を見上げれば懐かしい視界が広がる。何もかも高い、何でもかんでも大きい子供ならではの視界。
不思議な事に怖くもなけりゃ不安もない。ただ漠然とした意識の中、これは夢なのだと達観した考えが頭に浮かべばこの曖昧な街の風景も納得できる。昔の記憶をもとに作りだしているなら曖昧で当たり前。よくよく見れば小さい頃に一度だけ旅行に訪れた街並みの片鱗がチラホラ。

あ~、そういや迷子になったんだっけ

見知らぬ街。うっかり母さんの手を離して一人で勝手に行った挙句迷って大泣きした記憶に頭が痛くなる。そん時はどうやって母さんに会えたんだっけ。
見た目は子供、中身は成長したあたしのまま。昔より余裕のある心で夢の中だが観光がてら周囲を見渡し歩き出す。何が名産で盛んなのかてんで分からない街並みを歩いていれば声を掛けられた。
後ろを振り向く。大人の足が見えた。おっと、視線を上げなきゃ相手の顔が見えない自分の身長の低さを忘れていた。徐々に顔を上げ呼び止めた大人の正体をあたしは始めに視界に映り込んだ足元で気付くべきだったと後悔した。

うげっ

黒いスータンを身に纏う神父の胡散臭い笑顔に思わず舌がエって出た。
まさか夢の中でもこいつに遭遇するなんて予想の範囲外だ。いや、夢なのだから色々な記憶が混ざり合ってへんてこなものを見たりする時もあるから奴との遭遇は致し方ない、のか?

「お嬢ちゃん一人かい?お母さんやお父さんは一緒じゃないのかな?」
「えっと、」
「お母さん達と逸れて迷子になってしまったのかな?私が一緒に探してあげよう」
「ちょ、まって」

こっちの話を聞かず微笑んで手を握るクソ神父の手を振り解きたくても悲しいことに大人と子供じゃ力の差がありすぎる。どんだけ足を突っ張ろうが、握られた手を外そうとしようがビクともしない。
結果、抵抗するのも疲れたあたしは偽善者神父に連れられ相変わらず曖昧な街並みを歩いていた。思いっ切り不貞腐れても何処吹く風。しっかりと握られた手の感触が変にリアルで気持ち悪い。
しかも、この体。思っている言葉を言おうにも上手く言えず、舌ったらずというか年相応の会話しか出来ない歯痒さを味わった。胸の中で渦巻くフラストレーションを吐きだせればどれだけ楽になる事やら。
チラリ。横目で隣にいるクソ神父を見上げる。奴は奴なりにあたしの親を真剣に探しているようで道行く人々に声を掛けては情報を集めていた。全くもってご苦労なこって。

、なんか急に眠くなってきた

急に襲い掛かる睡魔。重たくなって下りてくる目蓋を繋がれていない方の手でぐりぐり擦っていれば体がふわっと空に浮き、気が付けばクソ神父に抱きかかえられていた。あー眠い。でも、この状況は不味い良くない如何にかして逃げなくては。

「あまり暴れないでおくれ。わたしは君を落としたりはしないから」

うぉぉぉ、頭を撫でるなぁぁぁ。イヤイヤと首を横に振ったところで宥めるように余計背中やら頭を撫でられては元も子もない。しかも、嫌な相手だってのにウトウトするのが止まらず止められず。導かれるように奴の肩口に頭を乗せられたあたしのなけなしの意地が今落ちようとしている。

「安心しなさい。君は必ず送り届ける、約束しよう」

お、おおお、条件反射で小指同士を捲き付ける約束をしてしまったあああ……。やめろぉぉぉ、眠気で意識が朦朧としている時にやるの卑怯だぞぉぉぉ……、あ。もう目蓋が限界。
母さんとは違う香りに包まれたあたしの意識は静かに暗い海の底に沈んでいった。
その後、無事にいつものベッドで目覚め矢張り夢だったのだと再確認した後も妙に現実味を帯びていた感触にあたしは小首を傾げるも、深く考えては負けだと思い寝惚け眼を擦り欠伸を噛み殺した。